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「馬に縁がない深窓の御令嬢には想像もできないでしょう、普通の貴族ならばおおよそ政治的な縁や派閥の調整などを目的に結ばれるものですが、当家においてはただ一点『馬に接して問題ない血統であること』だけです、まぁ一応貴族の一席にあるものですから貴族同士であることも考慮いたしますが、そこまで重要視してはおりませぬ」


「え?どういうこと?」


「簡潔に言えば、馬に影響するような疾患及びアレルギー等を発症したことがない血筋であること。又、当人も今現在そういう疾患を持っていないと確認が取れていることですね」


「人から馬へ感染なんてするものなの?」


そう不思議そうに問うヘロド侯爵令嬢に


「全くないとはいえませぬ。しかも当家では通常の馬だけではなく、古に魔界より譲り受けた魔導馬や神域より賜った神馬、妖精種や精霊種、果ては幽霊馬など多岐にわたる種の育成もしておりますゆえ、細心の注意を払うのは当然かと……まぁ幽霊馬は飼っておるわけではないのですが……うちの牧草地に愛着があってずっと居てくれている元……いや今も可愛い愛馬たちなのです」


ニコニコととんでもないことを暴露するエクリプス女伯。


「は?なんでそんなお伽噺の中に出てくるような馬飼ってるのよ……ていうか実在するの⁉」


「はははっ、確かに普段馬に縁がない方からすると冗談にしか聞こえないでしょうねぇ」


その言葉に周りでこっそり聞いていた者たちも同意である、というか縁が合っても冗談にしか聞こえない。


「あまり他国を刺激しないように、話を広げてはおりませぬがこの国の家門の長となるような方々は当然ご存じですよ?むしろ知らない方が可笑しいとされるレベルですな」


と自慢げに話すエクリプス女伯。


「それと先ほどのご質問の疾患についてですが、10年ほど前に大流行した『魔熱症』はご存じか?」


「まぁ!わたくしにその程度の知識もないと馬鹿にしているのかしら? そのくらい知ってるわよ! 主に子供がかかることが多くて死亡率はそれほど高くはなく、症状も熱が5日ほど続くだけで収まったら二度と罹患しないはずよね?」


「えぇ、人間はそうですね……ですが馬にとっては罹患した後の人間の魔力に触れるととても痛いのです」


「え?」


理解できずポカンとした表情になるヘロド侯爵令嬢……ともう隠す気もなく二人をガン見していた聴衆の皆さん。


「この話はあまり知られてはおりませぬが、魔熱症に罹患したものは魔力が変質してしまうのです。人間や多くの動植物には問題ないのですが、その変質した魔力にふれると一部の鳥類や馬は猛烈な痛みを感じるのです、ですが10年ほど前に大流行した当初はこのことが知られていなかった為に、当時先代のエクリプス伯爵であった父は魔熱症が快癒した後すぐに魔導馬の調教へ行き、痛みに暴れた馬に蹴られて……」


エクリプス女伯は沈痛な面持ちで下を向く。


「な……亡くなったの……?」


「いえ、今もピンピンしておりますが、もう馬に直接関われなくなったので領地のすみっこで牧羊犬の代わりになりそうな魔狼を育成しております。ついでに牧場でネズミ捕りさせる用の猫も飼ってますぞ、子供が生まれるシーズンはとても可愛らしいコロコロした毛玉の天国になります!引退して楽園にいけるなんてホントうらやましいことです……」


聴衆の中にいる子息や令嬢がザワつきだす。


「俺、エクリプス前伯爵のとこで働こうかな……」


「わたくしも志願したいですわ……」


その声を聴いたエクリプス女伯は


「おや、ご興味がおありの方もいらっしゃるようだ。本気で働きたいと思われる方は後で当家の方へご連絡下さるようお願い申し上げる。なにせ当家は万年人手不足故に父の方まで手が回らぬのでなぁ……特に文官志望の方は即採用させていただく!」


その言葉に就職先をさがしていた文官志望の下位貴族の子息令嬢達が


「「先生に相談してまいります!」」


と急いで出ていくのであった。

エクリプス領は元々、人間嫌いの精霊が住んでいたのですが、その土地が馬産にぴったりの環境なのを見て初代エクリプス伯が精霊相手に延々と馬の良さを語りつくし、ウンザリ……もとい大変感銘を受けた精霊が特別に許可を出して馬産を始めたのがきっかけ。

その後、色んな場所からトンデモ馬を連れてくる伯爵にビックリしていたが、その馬たちの霊力や神力などが土地に染みていった為亜神まで進化した。

その為、悪意のあるものは領に入れないしエクリプスの家系は加護も得ているので危害を加えようとするものは……。

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