いち
お読みいただきありがとうございます! 一時の暇つぶしにでもなれば幸いです。
・午年記念にお正月からボチボチ書き始めていましたが、なかなか形にならず遅くなりました。
貴族の集まる学園の大食堂は、さすがに庶民ものとは違いガヤガヤと騒がしくなることはない。
そんな落ち着いた雰囲気の中を突如としてけたたましく叫ぶ令嬢の声が響き渡った。
「なによすましちゃって……『当て馬令嬢』のくせに生意気なのよ! 私とデニス様は愛し合ってるの!邪魔しないでちょうだいな」
……その言葉に何事かと周囲の注目が集まる、その中心にいるのは二人の令嬢、一人は静かにテーブル席で食事をしているエクリプス伯爵家の当主である御令嬢、もう一人はその前に仁王立ちで叫び声をあげていたヘロド侯爵家の御令嬢である。
「……学園の食堂内でこのような騒ぎを起こすなどとても侯爵令嬢のなさる所業とは思えませぬが、まぁ一応お話はお聞きいたしましょう、どうぞお座りくださいな」
「なっ……侯爵令嬢である私に向かって指図するとは無礼ではなくてっ!」
「確かに貴女様は侯爵令嬢でいらっしゃるが、私はすでに父より伯爵位を継いだ伯爵ですのでただの侯爵家の御令嬢より身分は上になります、まさかその程度もご存じないとおっしゃる?」
ふふ、と笑顔で答えるエクリプス女伯に、額に青筋が立ちそうなほど怒り心頭のヘロド侯爵令嬢。
「ならば徹底的に話し合いましょう!」
そう言いながら目線で横にいる食堂スタッフへと指示し、引かせた椅子へと気品良く座る、さすが言動はおかしくともそこは侯爵令嬢である。
「で、侯爵令嬢は一体何を話し合いたいのです? 私は特に貴女様とお話しすることはございませぬが……」
「何を言ってるの! 貴女と婚約しているデニス様をいい加減解放しろといってるのよ!」
「婚約者……あぁ、あの方のお話でしたか……ならば私ではなくオケリー侯爵家のほうへ直接話されるのが良いかと思いますが」
「デニス様は、貴女が婚約の続行を望んでるから解消できないと言っていたわ、もちろんデニス様ご自身はわたくしと結婚したいと望んでくださってるのだもの、まさに貴女は『当て馬』そのものではなくて?」
そう言いながら、フン、と鼻で笑う侯爵令嬢を見ながら呆れたように女伯は言う。
「『当て馬』ねぇ……。 まぁその話はいったん置いておいて、婚約についての解消の話は確かに受けております。ですがオケリー侯爵家の方でこちらの解消する為の条件を満たすことはできないとお返事をいただいているため現状維持しているだけなので、やはりオケリー侯爵へ直訴なさるがよろしいでしょう」
そういいながらエクリプス女伯は、食後のお茶を口にした。
その様子を見てやはりイラっとしたようで
「そんなこと言っても、本当はデニス様に執着しているだけではないのかしら? 相手にされてない自覚もないなんて本当に可哀そうな人ね!」
フン!と鼻を鳴らしながら言い捨てる。
「執着……。たしかにオケリー侯爵子息はこちらの提示した『条件』を満たしている為執着といわれればしていないとは言い切れませぬ、ただ他に条件を満たしている方を代わりにして婚約を整えていただけるのならば今すぐにでも解消してかまいません」
「……その条件とはなんなのかしら? さっさと解消してくれるならヘロド侯爵家の方でも協力は惜しまないわ」
「……その前にヘロド侯爵令嬢、当エクリプス家の家業はなんであるかご存じか?」
「バカにしないで!そのくらい知ってるわよ、馬産業でしょ?」
その答えにエクリプス女伯は嬉しそうに
「えぇ、その通り。この国の馬の8割は当家の領地で生まれているといっていい、そのような領地の伴侶にふさわしい『条件』とは何だと思われる?」
と問いかけた。
「それは……」
ヘロド侯爵令嬢は言い淀むのであった。
・エクリプス女伯爵 父から爵位を継いで間もない、威厳を出そうとして父の話し方を真似しようと頑張っている。
周りは少々奇妙な話し方になっているなと思っているが頑張っているのを知っているので、誰もあえて突っ込まない。
・ヘロド侯爵令嬢 転生者、前世の物語の通りにデニスと恋仲になったがいつまで経っても婚約破棄しないので焦れて直談判しにきた、物語に当て馬令嬢と書かれていたのでそのまま言葉をぶつけた。
・オケリー侯爵子息 空気




