第九話
いぇ〜い、ヴィクトル見てる〜!
いまお前のかわいい妻と息子は、いま俺の隣で寝てま〜す!!
「……」
俺とセレナさんはルシフェルを間に挟んで、俺のベッドで川の字になっていた。
セレナさんは優しくルシフェルの胸を撫でながら愛おしそうに見つめている。
おそらくだが母親なのにクソヴィクトルが引き離したせいでセレナさんとルシフェルが共に寝るのは初めてなのだろう。
「あ、あの……」
おいおいおい頼むぞルシフェルじゃない方の俺の息子。セレナさんは人妻! ヴィクトルからは奪ったが俺の妻じゃない! いくら魅力的な女性とはいえ反応するなんて失礼なことするんじゃない!
俺は紳士でいたいんだ!! こんな女神みたいな女性を己の欲の捌け口にしていたクソクソヴィクトルと同レベルになりたくないんだ!!
「俺はやはり床で寝よう。 俺のような人間と同衾するのは心配だろう」
声が少し上擦ってしまった。
だがセレナさんだって、こんなクソクソクソ男が隣にいたら安心して眠れないかもしれない。
ヴィクトルの記憶はプライベートな部分はなるべく見ないように気を使ってはいるが、この男のセレナさんへの扱いはとことん自分勝手で乱暴なのだ。
「はい……旦那様が怖かったのは確かです」
「……」
セレナさんは「おやすみ」と愛おしそうに撫でていたルシフェルの頬にキスを落としてから、不安気に俺の顔を見つめている。
「でも今日の貴方は何故か怖くないんです。まるで生まれ変わった別人のよう」
ドキリとした。
生まれ変わる。それはある意味では正しい。
今の俺はもう、冷酷無慈悲な悪役公爵ヴィクトルではないのだ。
「……セレナ」
「わたし何故貴方が変わったのかわかりませんけれど、貴方のことをもう一度信じたいのです」
セレナさんはそう呟くと震える唇で、俺の頬にキスをした。
「!!!!!!」
ふ、ファーストキスだ!!!!!(頬だけど)
まさかDTオタクの俺のファーストキスがこんな美女なんていいんですか? いいんですか??? 転生ボーナスきたーーー!!!!
「おやすみなさい貴方……床で寝るなんて寂しいことおっしゃらないでくださいね」
セレナさんはルシフェルの頭を抱えるように横になると、そのまま警戒心皆無な顔でくぅくぅと寝息を立てて寝始めてしまった。
俺はそんな彼女たちに背中を向けることしかできずにいる。
セレナさんのマシュマロみたいな柔らかい唇、ふんわりと甘い優しい香り。
「(どうしよう……)」
セレナさん……マジ女神……人妻だとわかっているんですが、神様、俺もセレナさんに惚れてもいいですか?
その番、俺の鼻血は夜中まで止まることはなかったです。




