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第八話

 

 ルシたんを抱っこしながら俺は自分の部屋に戻ってきた。

 大きなキングサイズのベッドにルシフェルの身体を寝かせてやる。

 可哀想に、いつも硬い床で寝ていたからふかふかのベッドに驚いているのだろう。

 口にはしないが「何これすごい」ってルシたんの可愛いお目目が輝いている。


「おやすみルシフェル……明日はお前の部屋の家具を一緒に買いに行こうね」


 ふかふかの布団を体にかけて、額にキスをする。

 ルシフェルは戸惑っているみたいだけど体は正直だ。高級寝具に包まれた身体はすでにうとうととしはじめる。


 眠気に微睡むルシたんも食べちゃいたいくらいに可愛いなあ。


「……パパ」 

「どうした」

「あしたもやさしくしてくれる?」


 その言葉に心臓が冷えた。

 この子が生きてきた5年間、この男はどれだけ冷たくしてきたのだろう。

 この子はどれだけ優しさに飢えていたのだろう。

 この子を冷酷に扱ったのは自分ではないのに悔しくて涙が出てきそうだった。


「優しくする。絶対」

「やさしいパパ……だいすき」


 あれ……雨かな? 室内にいるのにおかしいな。目にゲリラ豪雨が直撃したみたいだよ!!!


 俺は鼻水を啜りながら、すやすやと寝息を立て始めたルシたんの頭を撫でた。

 もうね、俺は決めました。俺はルシフェルを幸せにします。絶対に絶対に絶対にルシフェルを世界一幸せな男の子にします! 

 闇堕ちなんて絶対させない! 魔王の器にもさせないし、公開処刑も暗殺もさせない! 主人公にも殺させない! いっそ先回りして主人公を聖なる勇者に覚醒する前に殺しておこうか? 公爵家の力ならただの能力覚醒前のアンジェリカを闇に葬ることなど容易い……。


 コンコン、と俺がルシたんより15年早く闇堕ちする前に部屋に控えめなノックがした。


 おっと、危ない危ない。あやうくルシたんのだいすきな優しいパパじゃなくなるところだった。


「はい」


 ノックに返事をすると扉が開き、ナイトウェアと思われる軽装に着替えたセレナさんが部屋に入ってきた。

 その魅力的な姿に思わず生唾を飲む。薄い生地のドレスは体のラインがくっきりのわかるデザインだ。もちろんセレナさんのたわわな果実もくっきり……


「!!」


 俺は見入りそうになる視線を避けるように目線をルシたんの寝顔に映す。


 それにしても! ダメだってセレナさん!!

 若い女性がそんな無防備な姿を男に見せるなんて!!


「あの……メイドから、ルシフェルが貴方と寝ると聞きまして」


「……え、あぁ! あんなおかしな部屋に大切な息子を過ごさせるわけにはいかないからな! もっと日当たりのいい部屋に移して、家具もこの子の居心地の良いレイアウトにするつもりだ!」


「素敵です旦那様……ぜひそうしてあげてください。この子も喜ぶとおもいますわ」


 セレナさんは嬉しそうに微笑んだ。

 今日まで五年間、お腹を痛めて産んだ息子とほとんど触れ合うことが許されなかったのにセレナさんはヴィクトルより何倍もまともな親だった。



「そういうわけだから安心してくれ……じゃあセレナ。おやすみ」


「あの旦那様……」


 いつまでも男の部屋にいてはいけないと思ってセレナさんを退室させようとしたのに、セレナさんは少し恥ずかしそうに目線を泳がせながらドレスの裾を掴んでおずおずと口を開いた。


「わたしも………いっしょに寝たいです。ダメでしょうか?」



 ………その瞬間、俺の中の彼女いない歴年齢の前世の俺の未練が輝きながら浄化した。


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