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第七話

 

 お風呂に入った後は昼間にケーキを食べた食堂で家族揃ってディナーにする。

 そのように指示をするとメイドが「ご一緒に食べるんですか?」と不思議そうに尋ねてきた。ヴィクトルの記憶によるとそれまでの晩餐はヴィクトルもセレナさんもルシたんも全員バラバラの時間に一人で食べていたから戸惑うのも当然だろう。


「一緒に食べる」と即答して俺は昼間と同じくルシフェルを誕生日席に座らせていそいそと食事の準備をした。


「五歳の子供が喜ぶメニューを作ってくれ」


 ヴィクトルはそこそこ良いもの食ってるみたいだが、大きな肉のステーキやかみごたえのあるゴロゴロ野菜のスープは小さなルシフェルには似合わないメニューだ。

 柔らかいオムレツやハンバーグ、子供の口でも食べやすく小さく切った野菜のスープとかそういうものを想定してオーダーする。


 しばらくしてテーブルに運ばれてきたのは、湯気の立つクリームシチューであった。


「あたたかい……」


 そう言って嬉しそうにスプーンで食べるルシたん。肉も野菜も好き嫌いしないで食べていてとても偉い。

 それに心なしかセレナさんも嬉しそう。


 家長制度のせいで食事はヴィクトルから始まって酒を飲むから時間も長い。

 後から食べるセレナさんやルシフェルが席に着く頃には料理が冷めきっていたのかもしれないな。


「きゃっ!!」

「だ、旦那様! おやめください!」


 セレナさんの悲鳴とセバスチャンの必死な声がした。おっといけね、気づいたら殺意でまたナイフを自分に向けていたぜ⭐︎

 マジでぶっ殺したいなこのクソヴィクトル



 食事を終えて良い時間だ。

 時計がないからわからないが、たくさん遊んでお腹いっぱいになっているルシたんは眠たそう。

 当然だ。ルシフェルはまだ五歳なのだ。眠くなったら寝てしまって構わない。


「ルシフェル、疲れただろう。今日はもうおやすみ」


 夜の勉強? そんなもの受験勉強とかそういう時期になればやれば良いんだよ。

 いまのルシたんに必要なのはたくさん遊んでたくさん食べてたくさん寝ること! あとパパとママの愛ですくすく健康に育ってくれたらそれ以上望むことなんてないんだ!


「はいパパ……」

「どれ、俺が部屋まで送ってやろう」


 うとうとと眠そうなルシたんの手を引いて記憶にあるルシフェルの部屋に向かう。

 ルシたんはまだ五歳なのに一人で寝起きしてるなんて偉いなあ〜。


 そんなことを考えながらルシフェルの部屋の扉を開いた。


「……」


 俺はルシたんの部屋を見て絶句した。

 明かりのない真っ暗な部屋はベッドも子供向けのおもちゃもなく。

 冷たくて硬い床に敷かれたせんべい布団に薄くてボロい毛布。

 唯一と言って良い家具の机の上には大量の勉学本があり、床の上にも所狭しと大量の勉強にまつわる本が雑に置かれて並んでいる。


 な、なにこれ? 一昔前の苦学生の部屋!?

 こんなの俺の想像する五歳児の部屋じゃない!! 勉強を強要された収容部屋じゃないか!!


 俺は何も言わずにそのまま扉を閉めた。不思議そうに俺の手を繋いだルシたんが見上げてくる。


「今日はパパと一緒に寝ようか?」

「えっ?」

「大丈夫、パパは変なことしないよ」


 あぁぁぁぁ!!! さっき目を覚ましたヴィクトルの部屋は豪華だったのに自分の息子にはふざけた部屋で寝起きさせてたのかよあの虐待ジジイ! 今すぐ地獄に追いかけていって地獄の獄卒と一緒になって拷問してやりてえぞ元ヴィクトル! 永遠に釜茹でされてやがれゴミ野郎!!


 俺は自分への戒めは一旦後回しにして、ルシたんを抱え上げて自分の部屋に向かうことにした。

 あの大きなベッドでルシたんに使ってもらって俺は床で寝よう。高そうなカーペットも敷いてあったし春だからまぁ、大丈夫だろう。



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