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アイラ プロローグ

※本エピソードのプロローグとエピローグは、一人称で表現してあります※


 リアネム神教国とレトニアス王国の戦争は、時間が経つ事に激しさを増していった。

 お互いの国境沿いにある、村が襲われて壊滅した事が開戦の始まりになる。

 そして、主な主戦場は両国の人気の無い国境沿いになっていた。


 時は流れ、戦争末期になるとレトニアス王国はトニスが自らの知恵と力を使ってある機兵を開発。

 「MENA搭載型最終決戦兵器」を実戦投入する。

 最終的に魔核自爆を行う機械と人の融合体の機兵であり、それらは全て志願兵だった。

 その一人、レーヴァテイン機構をその身に宿したメナことアイラは、その日も戦いに明け暮れていた。

 自らの運命が大きく動く事を知らずに……。


******


 広々とした平原で、目の前には多くの敵が居た。

 私の両親や友人たちを殺した敵が……。

 何の為に戦うのか?

 私にとっては復讐だった。

 もちろん国を守りたい、人を守りたい気持ちもある。

 でも、私はただ許せなかった。

 私の日常を、幸せを、家族を、友人を、私の心を……全てを壊していく者が。


「あ、あいつが居るぞ! 青い炎の悪魔だっ! 広がれ、まとめて殺されるぞ! ヤられる前にヤるんだ!!」

「……」


 私を発見した敵が叫ぶ。

 私を殺す?

 いいえ、死ぬのはあなたたち。


「全て……跡形も無く燃え尽きなさい!」


 レーヴァテインを構え、六枚の青い翼を広げて上空へ飛び立つ。

 撃ち落とそうする攻撃を翼とスカイビットで無効化し、上空から敵の本隊を見据えていた。

 小さいアリ共が右往左往している様を見て、気分が良い。

 突進して青い炎をまとったレーヴァテインを地面中央へと突き立てる。


「……消え失せろ」

「ひっ ぎゃああぁ!」


 私を中心に巨大な青い火柱が上がり、同時に周辺にいた敵は何も残さず燃え尽きた。

 これはゴミ掃除……。

 全て燃やし尽くさないといけない。 


「……さて、次はどこでしょうか」


 周辺に生き残りが居ない事を確認して、他の敵が居る場所を索敵する。

 その時、離れた場所で大きな爆発音と衝撃波が私を襲った。


「!? あれは魔核爆発! そんな……仲間が死んだ!!」


 もう何度も見た仲間の死を爆発で知る。

 そしてそれは私の未来でもあった。


「トニス様は、恐ろしい物を作られたな。しかし、それが戦争か」

「!!」


 不意に背後から声が聞こえ、剣を構えて振り返る。

 そこには大剣を持った白髪交じりの男性が居た。

 着ている白いローブには金色で剣と盾の模様が入っている。

 私はその人物を知っていた……。


「クラウス教皇!!」

「流石に私の事を知っているか。戦闘兵器よ」


 リアネム神教国の教皇にして、リネ様を宿す神宿り……。

 迂闊だった。

 まさかこんな前線にまで出て来るとは思っていなかった。

 しかしこれはチャンスでもある。

 ここで彼を殺せば、戦況は一気に変わる。

 私は剣を構え直すと、殺意を込めて睨んだ。


「そうだ、それでいい。この戦争は悲惨でなければならない。それこそ歴史に残すほどにな」

「それはリアネム神教国が消滅したという歴史になるでしょう」

「どうでも良いのだよ。重要なのは悲惨さなのだから」

「? 貴方は一体何を言っているんですか?」

「言葉は不要。私に出会った事を恨め。ここで貴様には自爆する間もなく消えてもらう!!」

「なっ! ぐっ……」


 教皇のあまりの速さと大剣から繰り出される重い一撃に、私は防戦一方になった。

 データでは教皇は人間族の40代後半のはず……元軍人だからか鍛え抜かれた身体が伺える。


「舐めるなぁぁあ!!」


 それでも私は教皇の隙をつき、レーヴァテインで左腕を切り落とした。


「っ……やるな。だが無意味だ」


 切った瞬間、教皇の腕が再生するのが見えた。

 流石、再生を司るリネ様の力だと言わざるを得ない。

 だからこそ、私たちは力が必要だった。

 死ねば再生は起きない。


「あまり時間を取らせるわけにもいかんのでな……」


 教皇が私に向けて、剣を真っ直ぐ構える。

 全身に神の魔力をまとっているのが分かり、力の差に戦慄するしかなかった。

 これは勝てない……でも、自爆ならもしかしたら。


「させんよ!」

「!!」


 教皇は私の考えを読んだように突進し、咄嗟に剣で受け止めるが、今にも吹き飛ばされそうだった。


「うっ……くうぅ!!」


 なんとか踏ん張るが、消費している教皇の魔力はさらに上がっていく。

 

 どうして? こんな事はあり得ない!

 消費している教皇の魔力が、それ以上の速度で回復していくなんて。

 身体が痺れるような感覚になり、あまりの魔力の量と質に恐怖すら感じられた。

 これが神宿りの力……全てが常軌を逸している。


「リネ様の再生は多義にわたる。身体の再生のみならず、魔力も再生できる。分かるな?」

「そんな……それはまさか」

「そう、ほぼ魔力は無限という事だ。女よ……すまぬな。消し飛べ!!」

「あ……」


 爆発的に上がった魔力の渦に飲み込まれ、私は遥か後方へ吹き飛ばされる。

 一瞬、意識を失ったが身体を激しく打ち付けた時、意識が戻った。


「ここは……どこ?」


 吹き飛ばされる直前に、全魔力を防御に回したおかげで生きてはいるようだった。

 だけど身体全体が悲鳴を上げ、まともに立ち上がる事も出来ない。

 私は現状を理解しようと、必死に辺りを索敵する。


「そんな、こんな所まで吹き飛ばされたの!?」


 結果はレトニアスと帝国側の国境付近だった。

 こんな場所では自爆も意味がない。

 戻ろうにも怪我が酷く、暫く動けそうも無かった。

 そして、絶望が私の脳内に響く……。


『アイラの魔力切れと致命的損傷を確認。生命維持の為、強制休眠モードへ移行します』


 待って……まだみんなが戦っているの。

 私もそこへ行って戦って自爆して、一人でも多く敵を殺さないといけない。


「お願い待って……私はまだ戦わないと行けないの!!」


 なんとか声を振り絞って叫ぶ。

 その時、トニス様の声が聞こえた。


『アイラ。僕の大切で親愛なる民よ。休眠に入るという事は生きているという事になるね』


 これは、トニス様のメッセージ?


『もう良いんだ。ゆっくりとお休み。そして再び君が目覚めた時は、どうか平和で幸せな時を生きて欲しい』

「……」

『それが僕の願いであり、望みなんだ。こんな戦争に巻き込んですまない。忘れないで、君には生きる権利も幸せになる権利もある事を』


 トニス様? これは一体なんですか?

 私に戦い以外にどう生きろというんですか?


『さぁ、時間だ。お休みアイラ。君の未来が幸せに満ちている事を、心より願うよ』

「そんな……どうして……」


 遠くではまだ戦場の音が聞こえる。

 私はもう戻る事は出来ない……何も出来ない。


『十秒後、アイラの強制休眠に入ります。9・8・7・6・5・4……」


 ごめんなさい、みんな。

 どうか……。


『3・2・1……お休みなさいアイラ。良い夢と幸せな目覚めを願います』


 生きて。


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