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女神の力を宿したおっさん。何度も死にながら人生を謳歌する。  作者: 灰色
2話 竜族の女性フロン・ヴェルナの愛憎
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4 青い炎

 戦闘が始まると、クライスは小手調べと言わんばかりに、鋭い氷で出来た小さい刃をメナに向けていくつも放つ。

 メナはそれを二丁拳銃で素早く全て撃ち砕いていった。


「流石だな。この程度の攻撃は無意味か」

「今日から曲芸師の竜人にでもなったらどうでしょう?」

「ほざくな! これならどうだ!」


 クライスの周囲から白い霧が現れると、メナに向けてゆっくりと進みだした。

 その後から氷柱が次々と現れる。


「氷漬けにしてやる!」

「……」


 メナは武器を仕舞うと、逃げるどころか移動すらしない。

 そしてそのまま白い霧に包まれる。

 次にその姿が現れると、巨大な氷柱の中に埋もれていた。


「そのまま粉々になるがいい!」


 クライスの身体が、巨大な体躯に似合わない素早い動きでメナに近づき、鋭い鉤爪で粉砕しよとする。


「甘いな」


 それを見たオルテが呟いた。

 その時、メナの両側から青い色をした翼が現れる。

 翼の先端が鋭い刃のようになるとメナに向かっていき、氷を綺麗に剝ぎ落した。


「なっ!!」

「いらっしゃいませ」


 自由になったメナの目の前までクライスがおり、メナは右手で拳を作ると巨大な鉄拳が装着される。


「はい、ドーン」


 勢い良くメナに向かっていたクライスは止まる事が出来ず、そのまま顔面を巨大な拳でぶん殴られた。


「ぐぅっ……」


 苦悶の声を上げながらクライスは後方に吹き飛ばされ、なんとか体勢を立て直してメナを見る。

 そこには狙撃銃を構えているメナがニッコリとほほ笑んでいた。


「ズドーン」


 クライスが気付くと同時にメナが一発の銃弾を放つが、クライスは咄嗟に氷の盾を張りそれを防いだ。


「舐めるな!」


 攻撃が防がれると、メナは銃を仕舞う。

 すると今度は両肩辺りに二つ、二股になった金属で出来た浮遊物体、スカイビットを作成した。 


「これはどうでしょうか?」


 スカイビットは不規則な動きをしながらクライスの周囲に近づくと、回転しながら青い光線を発射する。

 それを器用にクライスは氷の盾で防いでいった。


「そんな物、後ろにあっても魔力で位置がバレバレだ!」

「なるほど、魔力感知は敏感ですね。では、無意味にしましょう」


 メナの周囲にスカイビットが再び現れる。

 ただしその数は数十という膨大な数になっていた。

 それら全てがクライスを囲む。


「さぁ、好きなだけ感知していいですよ」

「!」


 一斉にスイカイビットが不規則に動きながら回転を始め、光線を放つ。

 クライスの周辺には激しい音と土煙が上がった。

 やがて土煙が治まると、クライスの周囲には分厚い氷のドームが作られ、メナの攻撃を防いでいた。


「まだだ! その程度ではこの氷壁は砕けない!」

「そうですか? これはこういう使い方も出来るんですよ」


 メナが言うと、スカイビットは高速で回転し始め、先端が一つになるとドリル状の形になった。


「ゴリゴリやってみましょうか」


 ドリルとなったスカイビットが次々と氷壁に突き刺さり、氷を削りながらクライスに向かって突き進んでいく。

 やがてスカイビットが内側の半分ほど入った時、クライスが氷壁の力を強め、スカイビットの動きを止めた。


「これでもう動かせないだろう」

「? 別にもう動かさなくてもいいんですよ。だってそれは……」


 と、メナが言葉を区切る。

 するとドリル状だったスカイビットが再び二股の形状になった。

 回転こそしないが、青い光が溜まっていく。


「元々そういう物だったでしょう?」

「! ご都合主義すぎるだろうがぁ!」


 数十もの青い光の光線が、次々とクライスの身体を攻撃していった。

 動く事が出来なくなったクライスの顔に身体、背に翼とあらゆる場所を止めどなく攻撃され、呻き声を上げるが、


「う……ぐぅ。こ、このていどなどぉおぉっっ!!


 叫び声の様な気合と共にクライスの中心から強力な魔力が放たれ、氷壁ごとスカイビットは破壊されながら吹き飛ばれた。

 クライスが息を切らしながらも、小さく笑いながらメナを見る。


「私は知っているぞ。戦闘に置いてお前の魔力が長時間持たないという事を。そろそろ切れるんじゃないのか?」

「……」


 どこか勝利を確信したようにクライスが言う。

 無言だったメナは、首を横に振った。


「半分正解です。確かに私の燃費はすこぶる悪い。ですが、そんな弱点を私とオルテが放置すると思っているのですか?」


 メナが服の内ポケットから、紫色をした小石サイズの淡く光っている魔石を取り出す。

 魔石は魔力を貯蔵でき、光っているがどうかで空なのか判断が可能になっていた。


「私には魔力を吸収する機能がありますが、こちらの意志で強制的には出来ない制限があります。あくまで誰かが放った魔力を吸収するだけ。ですが……」


 と、魔石から光の帯がメナへ向かい、身体に吸い込まれる。


「これはオルテが私の為だけに貯めた魔力。ようするに、私に放った魔力ですので、吸収する事が出来るんですよ。ご馳走様でした」


 空になった魔石を内ポケットにしまうと、完全にメナの魔力は回復していた。

 常人の魔力ではそうはいかないが、神の魔力も含んでいるとなると話は変わる。


「そんな物まで用意しているとは……。もういい! 私の最大のブレスで終わらせてやる!!」


 クライスは予想外の出来事に狼狽しつつも、上空へ飛び立つ。


「我ら竜族は太古から存在する偉大な者! 戦いと力に誇りと信念を持ち、突き進む存在! お前のような造られた存在が、竜以上の力を持っている事が許されるものか!!」


 そして口を大きく上げると、そこに魔法陣が現れ、その前方に巨大な氷塊が一つ現れた。

 その大きさと魔力の密度に観客席が騒めき出す。


「なるほど、これで最後か。魔力構成は分かった。あれと違って普通の竜はまだ単純だな」


 その様子を静かに見ていたオルテは呟く。


「メナ、もういい。さっさと終わらせろ。見る物は見た」

「分かりました。では……そろそろ絶対的な力の差を見せましょうか」

「何を話している! 押しつぶされてスクラップになってしまえぇぇ!!」


 メナがオルテの方を見ていると、激昂したクライスが叫びながらメナに向けて巨大な氷塊を放った。

 直径10メートル近い氷塊が、メナに向かう。


「……さぁ、レーヴァテイン。全てを燃やし尽くせ」


 メナの瞳が青く光ると、虚空から目の前に一本の両刃の剣がメナの前に現れる。

 その刀身は青い炎に包まれていた。

 それを掴むとクライスを眼を細めて見つめ、両側から青い翼を出すが、その数も左右三対の六枚になっていた。

 さらに周囲には無数のスカイビットが飛び交っている。


「な、なんだそれは!」


 明らかに異質で強大な魔力を感知したクライスは狼狽えるが、それは観客席にいた竜人たちも同様だった。

 そして氷塊がメナの目の前に来た時、青い炎をまとった剣を上から一振りする。

 次の瞬間、巨大な氷塊に青い一閃が縦に走り、氷塊は燃え尽きえた。


「……は?」


 クライスは目の前で起こった事が理解できず、間抜けな声を上げる。

 氷塊は溶けた訳でも破壊された訳でもなく、文字通り燃え尽きて何も残らず消え去った。

 メナが剣を真っ直ぐクライスに向ける。


「レーヴァテインは物体や魔力そのものを燃やし尽くします。灰も塵も残さずに」


 言い終えると、メナは翼を羽ばたかせ上空にいるクライス目掛けて飛び出した。


「っ! この……まだだ!」


 クライスは向かって来るメナに、サイズは少し小さいがいくつのもの氷塊を出してはメナに向けて放つ。

 しかしそれらは剣によって燃やされ、あるいはスカイビットと刃となった鋭い翼に粉々に砕かれていった。


「弱い……弱い弱い弱い弱い弱い!! 意志も覚悟も信念も力も! 全てが弱い!!」


 言いながら睨むメナが、クライスに突進する。


「ひっ……く、来るな!」

「……」


 高速でクライスに近づいたメナは剣を構えるが、なぜかそのままクライスよりも上空へ進んでいく。


「? ……っ!」


 少し遅れてクライスの背中に何かが降り立った感触が走った。


「貴方なんかをこれで斬るわけないでしょう? そんな価値も無い」


 クライスの背にメナが立ち、その手にはすでにレーヴァテインは無い。


「では羽付きトカゲには、ただのトカゲになって、地べたを這いずり回っていただきましょう」


 無造作にメナは左手でクライスの片翼を思い切り掴んだ。


「な、何をする! 私の高貴な身体に触れるな、このガラクタが!」

「ジョリジョリするだけですよ」


 ニッコリと笑うメナの右手には巨大なチェーンソーがあった。

 やがてそれは、けたたましい機械音を立てながら高速で回転を始める。

 そしてわざとゆっくり翼を根本から切り裂いていった。


「ぎっ……ぎゃあぁあぁああ!!」


 クライスの断末魔と共に一つの翼がチェーンソーによって無残に切り裂かれ、飛ぶ事が出来ず、地面へと落下し始めた。


「まだ一つありますね」


 無慈悲にメナが言うと、もう一方の翼も同じように切り裂く。

 再びクライスの叫び声が響き、やがて地面へと落下する。

 巨大な竜の身体が地面へ打ち付けられる前に、メナが地面に着地するとクライスの姿は人型に戻っていた。

 魔力の使い過ぎとダメージの大きさで、本来の竜の姿を保てなくなっていた。


「そろそろ終わらせましょうか」


 メナがふらつきながらも立ちあがったクライスに近づく。


「た、頼む。負けを認める。だから……命だけは」


 息も絶え絶えにクライスが命乞いをした。


「白決闘において、終了を宣言出来るのは勝者のみ。貴方にその権利はありません。そして私は終了を宣言しません」

「……」


 クライスの表情が青ざめ、至る所から冷や汗が溢れ出ている。

 そしていつの間にかメナの右手には、槍が一本握られていた。


「どう殺そうか迷っていましたが、決めました。串刺しにして燃やして、ここに放置します。今後同じような者が現れては面倒ですからね」

「ひっ、お、お願いします。許して下さい。命だけは……死にたくない」

「竜族としての戦士の誇りはどこにへ行ったのでしょう? 戦って死ぬのなら本望では? ほら、みんなが貴方を見てますよ?」

「あ……あぁああ!」


 クライスに向けられる観客席からの視線は、哀れみと同情が入り混じっていた。


「さようなら……トカゲ以下のゴミが」


 満面の笑みでクライスにメナが告げる。

 そして、槍は迷う事無くクライスの心臓へ向かった……。


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