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女神の力を宿したおっさん。何度も死にながら人生を謳歌する。  作者: 灰色
2話 竜族の女性フロン・ヴェルナの愛憎
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3 竜族の領地カドミテイラ

 竜の領地カドミテイラにある首都メリオンへは、帝都から馬車で休憩などを挟み一日ほどの距離だった。

 昔は道が荒れており2~3日はかかっていたが、リアス戦争後に帝国の領地となってからは道の整備は各国で最優先事項となる。

 それは200年前の帝国を治めていた女帝カミラの案であり、各国の連携が取りやすくなった事で、関係はより強固な物となった。

 

「おー、着いた着いた。ここも久しぶりだなぁ」

「街並みはあまり変わっていませんが、お店は結構変わっていますね」


 昼、メリオンの大通りで馬車を降りたオルテとメナが周囲を眺めながら口を開いた。

 大通りだけあって様々な種族が買い物や観光を楽しんでいる。

 竜族はエルフ同様に誇りが高く、あまり他種族との交流は盛んでは無かったが、女帝の介入より少しずつ他種族の文化なども受け入れていった。


「アレンにはちゃんとアポを取っていますか?」

「出る前にレトフォンで伝えてある。あいつの居る城に向かぞ。城内で待ってるってよ」

「買い物やお土産は用事が終わってからにしましょうか」


 メナが後でよる店を物色しながら歩いていく。

 その後ろを着いて行くようにオルテが歩いていると、二人の姿を見た何人かが声は掛けず深く頭を下げた。

 オルテやメナもそれに返すように軽く会釈をする。

 メリオンに置いて、オルテとメナの存在は過去にあった出来事により、特別な存在になっていた。


「あれから6年ほどですか。覚えている人も居るんですね」

「たった6年とも言える。竜族の平均寿命は長いからな」

「あの時とは違い、本当に安全になりましたね」

「……ま、犠牲が多かったんだ。そうでなければ困る」


 それはオルテがメナと出会い、メナの住まいを探して帝国側の各国を旅をしていた頃の話だった。

 当時、メリオンでは流行り病が蔓延し、多くの竜人が犠牲になった過去がある。

 それを最終的に止めたのがオルテとメナだった。

 もっとも、数多くの犠牲者を出したのがオルテたちだったのだが……。


 やがて目の前に竜王アレンが居る城が見え、城門に差し掛かると二人の男性門番に止められる。


「旅の者と見えるが、何ようか?」

「ここは観光場所じゃなくてな。見たいなら遠くからで我慢してくれ」


 年配に見える男性と20代に見える若い男性がそれぞれ口を開く。

 門番だが鎧や武器は持っておらずシャツに黒のズボンと軽装だった。

 竜族は強力な筋力に魔力、再生力があるため武器などいらず、身軽な服装の方が理に適っている。


「アレンと約束している。通してくれ。必要なら本人に確認していい」

「な! 貴様竜王様を呼び捨てとはどういう了見だ!!」


 若い門番がオルテの言い方に口調を荒げた。


「あいつとは知り合いだからな。昔からこんな感じだ」

「ふざけるな! 竜王様にそんな口の利き方をする奴など……」


 と、今にもオルテに食って掛かろうとした若い門番だったが、それを年配の門番が手で制した。

 そして、オルテとメナを交互に何度か見る。


「もしかして、オルテ様とメナ様ですか?」

「そうだ。つっても様呼ばわりはいらんが」

「そうですね。オルテは様なんて柄じゃないですね」


 隣で聞いてたメナがクスクスと笑った。

 すると年配の門番が二人に深く頭を下げる。


「大変失礼しました。二人なら問題ありません。お前も頭を下げろ。あの時の病を解決してくれたんだぞ」

「え? もしかしてあの時の? す、すみませんでした!」


 若い門番は慌ててオルテたちに勢いよく頭を下げた。


「本当にすみませんでした。自分、あの時はメリオンから避難していて、お二人の事を知らずに」

「気にするな。じゃあ、通ってもいいか?」

「はい、勿論です! アレン様は謁見の間にいらっしゃると思います」


 門番二人は門を開ける様に指示を飛ばすと、魔法で出来た大きな門は消え、オルテたちは門番二人に礼を言うと中へ入って行った。

 その後ろ姿を二人の門番が見つめ、若い方が口を開いた。


「あの方たちが、前の竜王様を殺したんですよね?」

「そうだ。竜王様だけではなく、他の者も含めてな」

「……どうして、そこまでしてくれたのでしょう?」

「そういう方々だからだ。本来なら私たち竜族が背負う罪と責任を全て背負ってくれた。返しきれない恩があるんだよ」

「そうですね……自分のじいちゃんも、最後は戦士として死を全うしたと聞いてます。本当に頭が上がりませんね」


 やがて魔法の門が再び閉まると、二人の門番は過去の出来事を思い出しながら静かに仕事を再開した。


 門を過ぎると、そこは綺麗な花畑がある中庭になっていた。

 噴水やベンチもあり、何人かの竜人が楽しそうに語らっている。

 そんな和やかな中庭を歩いて城内へ向かおうとしていると、


「おや? こんな所に竜族以外が居るなんて珍しい。迷子か何かかな? 貧弱な人間さん」

 

 どこか人を小馬鹿にするような声が聞こえて来た。

 声がした方を向くと、20代に見える黒髪短髪で青色の瞳をした男性が、オルテとメナを愉快そうに見ている。


「いや、アレンに会いに来たんだ。そういう訳なんでな、邪魔するな」


 適当にオルテがあしらってその場を離れようとするが、その前に立って進路を防がれる。


「ちょっと待ってよ。オルテさんにメナさん」

「なんだ、俺たちの事を知ってるのか?」

「お二人は竜族の間では有名だらかね。でも……いささか私は疑問を感じている。本当に強いのかと」

「いやいや、弱いからあんたには敵わねぇよ。そういう事だから先に行かせてくれ」

「そうです。羽の生えたトカゲになんて勝てませんよ」


 メナが挑発めいた事を言うと、男性の視線が鋭くなる。


「出来れば、有名なお二人と手合わせ願いたいと思ってね。と言っても、流石に神宿りのオルテさんには敵わないので、そちらの女性と」


 男性はメナを指差した。


「なんでそうなる?」

「パートナーであるメナさんの実力を知れば、真実が分かるという事さ。どうだろう、ぜひ私と手合わせをお願いしたい」

「断る。そんな事しに来たわけでも、暇でもないんでね」


 メナが答える前にオルテが断る。


「おやおや? 逃げるんですか? それだと神宿りのオルテさんも、たかが知れている事になっちゃうなぁ。挑まれた戦いから逃げた卑怯者。そう言われ続けるよね」


 安っぽい挑発ではあったが、それに反応したのはメナだった。


「なるほど、それは確かに問題ですね。一緒に居る私の評価まで下がってしまいます」

「そうそう、だからぜひ受けて欲しいんだ。私、クライスはメナさんに白決闘を挑む。正式な書類はすぐには手配しよう。どうかな?」

「おい、メナ。こんな馬鹿に付き合うなよ」

「良いじゃないですか。羽付きのトカゲが、地べたを這いずり回る所を見たくありませんか?」


 メナが笑顔でオルテに告げる。

 やがて騒動を嗅ぎつけてか、人が段々と集まって来た。


「場所はどこでしましょうか?」

「近くに訓練場兼闘技場があるので、そこで行おう」

「分かりました。案内して下さい……うっかり死んでも恨まないで下さいね」

「それはこちらのセリフだね」


 クライスがオルテとメナを先導するように歩き出し、二人もそれに着いて行く。

 そしてクライスには聞こえないような小声で話し始めた。


「おい、なぜ受けた」

「貴方は馬鹿にされて怒らないんですか?」

「別に自分の事はどうでもいい」

「ええ、私も自分の事はどうでもいいです」

「じゃあ受けなくて良かっただろうが」

「ですが、あの方は貴方を侮辱しました。私はそれを許すほど優しくはないんです。逆だったらどうしていましたか?」

「……」


 無言のオルテに、メナは目を細めると小さく笑う。


「冗談ですよ。ただむかついただけです」

「そうか、好きしろ」


 そんなメナを見たオルテは諦めた様に呟いた。


 やがて竜族が本来の姿でも戦えるほどの、強度と大きさがある訓練場に着いた。

 訓練場に着くと、メナとクライスは決闘の書類にサインをする。


「ありがとうメナさん。これで心置きなく戦えるよ」


 クライスが書類を見ながら満足気に言った。

 城本体とは少し離れた場所にあり、訓練場ではあるが闘技場としての側面からか観客席が周囲にある。

 

「立派なもんだな」


 周囲を見回してオルテが呟くと、クライスが誇らしげに答える。


「古くからある訓練場であり、闘技場になる。ここまでの強度を誇る建物は帝都といえどそうないでしょう」

「それはどうかな? だが珍しいし素晴らしい技術であるのは変わらない。流石メリオンの施設だな」

「それで、ここで私たちの決闘は見世物になるんですか?」


 メナが観客席に座り始める竜人たちを見た。


「私があらかじめ宣伝していたんだ。観客がいないとつまらないだろう? それとも見られて困る事でもあるのかな?」

「いえ、ただ……貴方の無様な姿が見られると思うと、心苦しくて」

「そんな事にはならないさ。むしろ君の泣き叫ぶ可愛い悲鳴の方が可哀想だよ」

「はいはい、その辺でいいだろ。俺は下がってるから、後は好きにしてくれ」


 メナとクライスの言い合いに呆れながらオルテは言うと、その場から少し離れた。

 気付けば観客席はほぼ満席となり、ある者は拍手や大声を上げ二人の決闘に歓声を上げている。


「さて、観客も集まり良い感じじゃないか? そろそろ初めてもいいかい?」

「どうぞ。さっさと羽根付きトカゲになって下さい。まさか人型で戦うとか言いませんよね?」

「そこまで傲慢ではないさ。では……始めようか!!」


 言葉と共にクライスの身体が光ると、全長10メートルほどの青い色をした氷竜の姿になった。

 大きな二枚の翼を広げると同時に咆哮を上げる。

 一気に観客席から、盛大な歓声が上がった。


「さぁ、レトニアスの決戦兵器よ! 簡単に死んでくれるなよ!」

「……やはり、ただの羽根つきトカゲですね」


 威勢よく言葉を吐くクライスとは対照的に、メナはいつもと変わらず冷静にクライスを見つめていた。


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