第43話
リンくんに声をかけられてから、国の省庁・および研究所関係者がゾロゾロと砂浜に集まってきた。
「今朝、ギリギリまで東京で調整したんだ」
重そうなケースを置いて、ついにオレの専有武器の全貌がお披露目される。
「ねぇリンくん?」
「どうかな!?」
「オレの要望どこ?」
カーブで鉤爪みたいな刀身は?
これじゃあ刺突できないよ。
つーかこれってさ。
「これ、胴つきノコギリじゃ……」
「だよなアゲハ!?」
ノコギリ特有の細かい刃の代わりに先の尖った3cmくらいの歯が隙間なくまっすぐに、ここ大事、まっすぐに並べられている。
「どういうこったよこれ、リンくん!?」
「ちゃんと柄頭に2本を合体できる機構を作りましたよ?」
「そういう要望は出したけれども!」
「おまけでキッチンバサミも作っておきました。試作のために作ったものなので解体に必要な時などにお使いください。外側にも刃のある両刃なのでナイフ代わりにもなります」
「これをなぜそのままデカくしなかった!」
「それはね、ヒラクくん……」
な、なんだよ。急に真剣な顔になんじゃん。
「おれなりの、解・釈!」
「そんなのってねぇじゃん!オレのロマンはどうした!?」
「このサメの歯のような尖った歯を生かすデザインにするためです」
「歯の斜面も切れ味良さそうなんだからそこが上になるように寝かせればよかっただけじゃん!」
「あっ……なんと言われても歯を生かすデザインにするためだったんです!このほうが歯を支えるホルダーの固定が安定します!」
「そりゃあそうなんだろうけどさ……なんで、あっ、とか言っちゃうわけ」
「な、ヒラク。オレがこいつ苦手な理由わかったろ」
「ご、ごめんね」
膝からがっくしいったオレをそんな憐れな目でみないでくれ。立ち直れなくなる。
「……えっと、クリスマスも渡しとくね」
「解体してなかったんかい……リンくん、おれ調べたんだけどな、キリバスのクリスマス島は現地ではキリスィマスィーって発音らしいよ」
「……ちょっと調べてもいいですか?」
「もちろん。片手間に補足しておくとオーストラリアにクリスマス島ってあるんだよ。オレ、高2の時にオーストラリアに半年だけど語学留学したことがあんだ。そのときクリスマス島って聞いたなって思い出してさ」
「Kiritimati または Christmas……で、でも両方とも意味は似たようなものですよね!」
「まぁな。で、まだ名前つけてないよな。おれのリラントに」
「いや!それがですねピッタリの──」
「つけて、ないよね?」
「そ、そうだ!ここまで送ってくれたカエデさんに聞きましたが今日は他に助っ人が来るとか!皆さんは誰が来るかご存知ですか!?」
「は?なに、カエデさんに送ってもらったん?朝からドライブデートしてきましたってか?」
「オレが乗ってきた飛行機は青灯基地に着陸したから。リアント持ってたし。帰りは普通に旅客機だしたまたま相乗りさせてもらったというか……」
「そうなん?どうせなら帰り一緒に乗っていけばいいのに」
「いいんですか?」
「だいじょうぶだよな、バンリ?」
「おう!申請出しとく!」
「それは助かります」
「いやガチ専用機最高!元気が有り余ってしかたない!」
「だよな!帰りはUNOしようぜ!」
リンくんがおれのためにがんばってくれたのは確かなわけで、いつまで拗ねててもせっかくの海開きが台無しになるからな。
帰りのバンリの相手はまかせたぜ!
「で、助っ人ってだれ?」
「モカちゃんと」
「モカさん来てくれんの?うれしっ」
「ハガネさん」
和やかに笑っていたオレの甘いマスクが、マジモンの仮面みたいに固く引き攣る。
「どこのハガネさん?」
「井栗 鋼 さん。知らない? 」
じ、じ、じ、事件じゃぁあああ!!!




