第37話海休み
宮崎県宮崎市。
「オレは帰ってきた!」
ヒラク、空港より故郷の大地を踏みしめ太陽に吠える。
「オレも帰ってきた!」
ついでにバンリ。
「ヒラク、バンリ。スーツケース放置してると盗まれる」
「はっは、フユミ。空港の玄関口で盗まれるってそんなに治安悪くねぇよ」
「こっちきて一緒に深呼吸しようぜ!」
「……いい陽ざし」
5月の日照りはまだ強くはない。爽やかな風が吹き抜ける。
今日は母さんが迎えにきてる。いたいた。今晩ウチに泊まる二人の紹介を終わらせて実家に荷物を置いたら、いざ、コインランドリーへ!……の前に、アマレーナへ。
「こんちわー!」
元気な挨拶と共にドアベルを鳴らすと、出会い頭に耳元にアゲハの顔が詰め寄る。
「おうテメェ。わたしになにかいうことがあるんじゃないか?」
「……このたびは、挨拶もなく突然留守にいたしましてまっっこと、申し訳ない」
「おう……いらっしゃいませー!」
「こ、こんにちわ。ヒラクの同僚の至道 万離でっす」
「お、同じく同僚のフユミでっす」
「ご丁寧にどうも。わたしヒーちゃんの幼馴染の花木 朱翼ですー。アゲハって呼んでくださいね」
「わかりました、アゲハさん!」
「アゲハさん!」
「ヒーちゃんのお知り合いならご馳走します!ランチメニューからぜひお好きなものを注文してください!」
「よっしゃ!それじゃあ安いのから順番に……」
「そんな頼み方したらシロップや砂糖ばかりになるって」
「じゃあおすすめで!」
「わたしはマキアートに蜂蜜と……」
「フユミは柚子好きなんだろ?」
「まぁ」
「じゃあ柚子胡椒なんてどうってェー!メニュー!あたまパコーンいったぞ!」
「ヒーちゃんがごめんなさい。柚子がお好きならゆずとはちみつのジュレを添えたアマレーナなんてどうですか?それから日向夏の風味のミモザケーキもおすすめです」
「お願いします」
「それと柚子のマーマレードがあるからお土産に持って帰ってください」
「オレの母さんの果樹農園で採れたやつなんだぜ」
「ヒーちゃんは手伝い。ほらこっち」
「はい……準備中に悪いな。いきなりだったけど、ありがとなアゲハ」
「初めから怒ってないよ。言ってほしいこと言わせただけ。ヒーちゃんはアフォガードでいいよね」
「もち」
アゲハに服を引っ張られて厨房へと入る。
「アゲハさんの連絡先入れたらヒラク相手に最強になれる」
「あとで訊いてみるか」
そんなヒラクを見届けたフユミとバンリは、アフタヌーンティーと洒落込んで振る舞われたドルチェを楽しんだ。




