第35話
リンくんの熱にうなされるように、モカさんは疲れ切った様子で退室した。
「モカちゃんには今後も何かとお世話になると思うから、名前、覚えておくといいよ」
再び部屋に3人になったところで、トモさんがソッと耳打ちしてくれる。
「リンくん」
「はい、春瀬さん」
「本題の方を」
「あぁ!そうですよね!」
リンくんがまってましたと言わんばかりに、鍵と電子キー付きのロッカーを開きはじめる。
……なんか、リンくんのファーストインプレッションにギャップを感じ始めてきた。軽いと思ったけど、話し始めると長い感じの人なんかな。
「ではお披露目しましょう!おれの最高傑作になる予感を秘めたヒラクくん専有武器の試作品を!」
リンくんがロッカーに入ってたジュラルミンケースから出したのは、両刃ギザギザのショートナイフだった。
「キリバス諸島固有の武器テルビューチェを参考に作りました!銘をクリスマス!」
「……その心は?」
「キリバス共和国にはクリスマス島があるからです!ついでにクリスマスツリーってギザギザのイメージだからです!」
「テルビューチェとクリスマス島の関係は?」
「よく知りません!」
浅い……ッ。
「これが俺の武器ですか……」
「今は試作段階だから、使用する人の意見も取り上げて最終的な武器の形を決めていくんだよ。あくまでもこの武器の形はリンくんの……理想形?」
「です!」
「とりあえず、改修できますか?」
「えっ!?」
「だって外側ギザってるから携帯性悪そうだし」
「うっ!」
「つーかオレって近接戦するん?」
「そればっかりは、試してみないことには……せっかくの特異者だし……」
「リンくん、まずはウラルとリアントの違いを」
「ですよね春瀬さん。異才者は同色マル肉プルーラル素材装備ウラルの性能を50〜80%くらい引き出せると言われているけれど、特怪異者は最大でも10%くらいまでしかウラルの性能を引き出せずメリットがほぼなくなると言われています。リアントはその逆です。異才者はウラルの性能を1%も引き出せない。特怪異者は専用怪装備リアントを身につけるのがスタンダードで占有者が装備すると性能を常時80%発揮させ最大100%まで引き出せるとの研究報告があります。しかし特怪にもまた差があって、怪異者は同系色シャイ肉ヴァ・リアントを本来性能の50%くらい引き出し使いまわせることがしばあるんですが、特異者は同系の性能をほんっっっとうに、よくて30%くらいまでしか引き出せないケースがほとんど。そのことから特異者には専有リアント装備クラリティを絶対に割り当てることが推奨されています。クラリティは……」
なげぇ。日本語に訳してもろて。
「これらの優れた研究結果を最初に上げた国がウラルはロシア、リアントはフランス、クラリティはイギリスだったという感じで、特にクラリティーはシンギュラリティを語源としておりUをCにするというオシャレっぷりで」
「そういうわけだから、このクラリティにはヒラクくんが食べた核肉を持っていたシフターの素材が使われているんだよ」
「あっ、春瀬さんそこはおれが言いたかったのに!」
トモさんのリンくんの扱いが慣れていらっしゃる。なるほど、リンくんは識で詰めてくるタイプっぽいからバンリは苦手そうだ。




