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グレードアップ  作者: エスプレッソ


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11/12

12 ノボル

 父 花木(ハナキ) (ノボル)

 父さんのいる沖合プラットフォームへと到着する。


 ここに来たのにはちゃんと理由がある。


 アプリの経営タブ-水産に表示されていた選択エリア欄に、この場所が表示されていたためだ。


「父さん!!!」

「ヒラク!そちらの方は?」

「この前話した、青桐 楓さん」

「どうもヒラクの父の花木 登です。水産関連の研究者とここの管理者もやってます」

「青桐 楓です。呼び分けのためノボルさんと呼ばせていただきますからカエデとお呼びください。よろしくお願いします」

「ご不便おかけします」

「いいえ、こちらこそ」


 カエデさんと名前呼びになったのって、後々、家族とコミュニケーションをとるときに障害にならないようにって理由だったっけ。

 ちょっと悲しい思い出はおいといて、二人に事情を説明しよ。

 切り替えの早いところは俺の長所だ、うん。


「なるほどなー」

「で、支配していい?」

「日頃から言ってるが、所有会社っても従業員もいる」

「あの、特異の開発ということで支援金がでるかもしれません。それでご懸念を払拭できるかもしれないです」

「本当に?でも具体的なことがわからないとなんとも」

「少しお時間ください。上に確認をとります……あれ、ネットが」  

「ここWi-fiあるんで使ってください。パスワードです」

「ありがとうございます」


 カエデさんはスマホを取り出すと、船のWi-fiに接続し通話を始める。


「書類をお父様の連絡先にお送りしました。ご確認ください」

「はい……場所の提供で特異開発補助金が出る。それから特異が原因となって施設が使用不能になった場合は、同規模環境施設の開発を支援する。至れり尽くせりだな……怪しい」

「シンギュラーの特異開発は国の防衛政策の中でも重要な計画ですから」

「素人程度には認識していたつもりですが、ここまで手厚いとは。(えき)に従じていないヒラクが給料もらえるというのも信じ難かったのに」

「シフトを強制されたヒラクくんを前に言い方は悪いですが、シンギュラーを含むヴァリアントへの補償は特権の塊です……はい」


 ものの数分で、巨額の投資を得た。


「後から支援を理由に施設を接収されたりしませんよね?」

「接収云々に関しては、一般的なルールに準拠していればよほどのことがない限りは大丈夫です」

「よほどのことって?」

「軍事施設化とかですかね?」

「はははっ、それは流石に」

「ないよなー」

「ですよね」

「じゃ、父さん、問題ないってことで」

「わかった」

「支配しまーす。統合(グレードアップ)


 2つの空き生簀を一つに統合した。

 80cmのハマチとかなら2000匹くらい入る生簀は元のサイズより一回り大きくなり2500匹くらい入る規模感、そして若干耐久性が増した感じ。


「同じグレードの物を掛け合せて統合できるっぽい特異です。あっ、逆のこともできます。その場合、統合する前より素材が損耗してしまうみたいです」

「これは……同じ質の物同士でしか機能しないのでしょうか?」

「どうでしょうね?」


 カエデさんが言ってるのは、強化や異種統合のことだが、やってみたことないからわかんにゃい風を装ってここはしらばっくれてみる。


「同じ数字のブロックを掛け合わせて一つのマスに、大きな数字のブロックを作っていくアプリゲームがありますが、それと似たような感じの特異ですかね?」

「あぁー似てるかも」

「ね。特異の片鱗が掴めて本当によかった。軟禁中はうんともすんともいわなかったんですもん。面目躍如です」

「俺の面目も一緒に躍如しましたよ。で、ここに来るときに相談した核肉の話ですけど、現状、エリアを支配するために必要っぽくて」

「……それならどうやって今、支配したんですか?」

「なんか自分の中にストックがあるっぽくて、それを消費したんですけど、消費分補充のために新しい核肉が欲しい感じです。特異開発の一環でどうにかならないですかね」

「検討してみますね。頑張ります。それでですね、ノボルさん」

「はい、なんでしょう」

「この生簀に特異性がないかどうか調べるために、近いうちに運用をしていただきたいんです」

「普通に使ってみていいってことでしょうか?それとも委託という形でしょうか?」

「普通に使っていただいて、こちらからも監視に人員を派遣するという方向でいかがでしょう」


 相談を始めたノボルとカエデを他所に、ヒラクは隠れてスマホを開いて詳細を確認する。


 画面には施設の強化一覧が出ているが、現在稼働している生簀をタップするとそこに入ってる魚種を確認できるわけだ……生物さかなも強化できそうな件について。


 コソコソとスマホをいじるヒラクに影が忍び寄る。


「ヒラク!おかえり!」

「びっシたぁー!ボブ!!!ただいま!」

「ははは、驚きね!」

「いや、こっちがビックリしたって!」


 アメリカ出身のボブは父さんの研究仲間。

 若い頃にこちらに移住してきて、日本人の奥さんと俺の3歳上の息子の鷹尋(タカヒロ)さんがいる。 

 餅力型の異才者でタフネスがすごく、持久型の異才者の父とはいいコンビだ。

 赤ん坊の頃から俺のことを知ってるし、兄みたいなタカヒロさんが在学してる大学を志望していたんだがなぁ、なぜか俺はイマ、ここにいる。


『検証は今じゃなくて今度でいいか』


 カエデさんの監視がある中であれこれ動くのも目立つ。


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