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クラスの美少女ギャルがストーカーだった件  作者: 嵐山
クラスの美少女ギャルがストーカーだった件
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19話 静寂

ラストです!

ここまで読んでくださった方々、本当にありがとうございます。

 目を覚ますとそこは布団の中だった。


 見なれぬ天井だが何とも言えない薬品の匂いがする。そのため、ここが保健室だと気づくのに時間は掛からなかった。


 現状とか時間とか色々気になる事が多すぎるので、情報を整理しようと体を起こす。

 すると、「あっ!」っと不意に声が漏れた。それも2人同時にだ。


 起き上がった俺と秋月の目があったのだ。


 彼女は色々と言いたい事がありそうな表情をしていたが、それらを置いてまずは一言。


「やったよ」


 指でVサインを作りながら、笑ってそう告げた。


「そりゃ、よかったな」


 気取って言葉を返したものの、心の中には懐かしい感情が湧いていた。喜びとか、達成感だとか、久しく感じていなかった感情だ。


 やっぱりあの光景は夢じゃなかったらしい。

 気をやる寸前に見たあの光景。パラドックスが本当に解決したのか不安が残っていたが、秋月は力強い走りで1位の生徒を抜かして見せた。


「説也君のおかげ。ほんとにありがとう」

「いや、結局乗り越えたのはお前の力だろ」


 確かにアシストはしたと思う。自分でもそれなりにサポートをしたと感じている。

 それでも最後にやってのけたのは彼女自身。自分の過去に向き合い克服したのは、紛れもない彼女自身の力だ。

 

「それでもありがとうって伝えるよ。私決めたの!ギャルの私はもうおしまい!これからはちょっと我儘に……そして素直に生きてみる」


 そうか、それが彼女の出した答えか。

 

 きっと、人は誰だって皆等しく悩みを抱えてる。自分に納得がいってなかったり、本当の自分を発揮できていなかったり……。誰もが矛盾を抱えてる。秋月はそれが人一倍強かったからパラドックスなんて現象が生じたのだろう。


「素直に……か。その方がずっといいな」

「だからね、正直に言うよ。私、説也君こと別に嫌いじゃないからね!」

「……」


 そう言うと、自分で言っといて恥ずかしくなったのか、秋月は顔を赤らめてどこかに走り去っていった。


「言い逃げって……、それはずるいだろ」


 なんだこのラブコメの予兆は…。


 もう少し詳しく当時の状況を聞きたかったのだが、あの様子じゃ無理だな……。ていうか俺の方もなんだか顔を合わせるのが恥ずかしい。


 達成感と疲れを感じながら、俺はベッドから降りて立ち上がる。

 すると枕元に1枚の紙が置いてあることに気がついた。


『自分の体調も管理できないなんて馬鹿なんですか?』


 見慣れた筆跡と聞き慣れた言葉遣いの一文に、誰の書き置きかはすぐに分かった。

 その丁寧な口調で勝手に脳内再生されるほどに書き手は明白だった。


「倒れた後の詳しい話はまた今度、砥部に聞くとするか」


 それに、彼女にはお礼も言っとかないとな。

 俺が倒れたあの瞬間、砥部だけが駆けつけてくれたのだから。


「にしても、今は何時なんだ?」


 俺は壁にかけられた時計に目をやった。

 時刻は17:01分。一般生徒はすでに帰っている時間だ。


 少し歩き、校舎1階にある保健室の窓から外を見渡してみる。空はまだ明るいが、太陽は沈みかけて橙色を帯びている。


 俺も帰ろうと思い、荷物をまとめるため3階の教室へと向かうことにした。


 にしても、

「パラドックスって結局何だったんだろうな」


 呟きながら考える。一応、一件落着って事で良いんだよな……なんて、思考を巡らせながら階段を登っていく。

 

「ていうか、なんか静かすぎないか?」


 2階まで登った所でふと、そんな疑問が頭に浮かんだ。


 17時過ぎだ。体育祭の日は部活動も行われない。だからほとんどの生徒は既に下校しているはず。加えて後片付けだって翌日に行われる予定になっている。


 でも……。だとしてもだ。

 それを差し引いたとしても、羽目を外した生徒や見回りの教師が数人はいるものだろう。


 それなのに校内は静かすぎる……というか、全くの無音だ。それは気味の悪いほどに完全な静寂。まるでこの世界に俺しかいないみたいに。


 そして、悪い予感はいつだって当たる。


 3階にある自分の教室へと到着した俺は黒板上にかけられた丸時計を2度見……いや、5回は見直した。


 アナログ式の時計。その時計の長針はもちろん、短針も、秒針さえも停止している。


 止まった時計が指し示す時刻は17:01分。


「なんだ?壊れてんのか」


 俺は隣の2組の教室へ歩いて向かう。すると、時計は同じく17:01分を指して止まっている。


 いよいよ慌てた俺は3組、4組……。それから2階にある1年生の教室と、4階にある3年生の教室の順で全ての時計を見て回った。


「やっぱり…止まってる」


 その結果、どの時計も17:01分を指して止まっていることが判明した。


 ――同時に全ての時計が壊れるなんてあるものか?


 俺は本当の時間を確かめようとスマホを開く。


 しかし、スマホに指し示された時間も17:01分。

 そんな訳があるかと、遂に俺はその場で60秒を数えてみることにした。


 保健室にいた時でさえ17:01分だったんだ。あれから3階まで上って、その上で1年と3年の教室まで見回った訳で……確実に3分以上は過ぎている。


 不安を募らせながらも俺は頭の中で確実に60秒を数え終えた。誤差も考慮して多めに70秒は数えてやった。


 しかし、何度確認しても事態は変わらない。スマホに表示された時刻はやっぱり17:01分。


 一体何が起きているのか理解が追いつかない。


 俺は助けを求めるように、外の様子を確かめるため窓際に駆け寄った。


 すると、窓を開け外を覗き込んだその先……。そこには俺の視線を釘付けにするものがあった。


 ――俺の目に飛び込んできたのは1羽のカラス。


 何も無い空中で、進むことも落ちることも、羽ばたくこともせずに停滞しているカラスの姿がそこにはあった。


 ――俺はこの現象を知っている。


 そう、誰だって知ってるアレ。誰だって一度は憧れるアレだ。

 

「時間停止……ってことなのか?」

 

 新たなパラドックスの発現に、俺は大きくため息をつくのだった。

一章は終わりますがまだまだ続きます。

二章が始まりますので、気に入ってくださった方は是非続きも読んでください!

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