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父と息子

 額の傷を隠す為、前髪を下ろしたセライが、宰相の執務室で父、ハクレイの前に立った。スーツの上着を脱ぎ、白色のガウンを羽織るハクレイは、銀色の髪がふわりと伸び、息子と同じ碧色の大きな瞳に、若々しい肌艶をしている。じっと険阻けんそな表情で立つセライの方が年上に思われる程、ハクレイは童顔だった。

「やあ、ごめんね、待たせて。思いの外仕事が溜まっていてね。君も相変わらず残業ばかりで大変そうだね、セライ君」

「息子を君付けするのはお止め下さい」

「あやや、息子に諫められてしまうとはねぇ。そんなに怖い顔で睨んじゃって……それで、僕に何の用かな?」

 そう笑って書類に信認印を押していくハクレイに、「今日のテロで、貴方の影武者と運転手が犠牲になりました」とセライが報告する。

「あやや。死んじゃったんだー、彼。結構僕に似ていたから愛着があったのに、まあ、仕方がないか。新しい影武者を探さなきゃね」

「何故平然としていられるのです? 貴方のせいで二人も犠牲になったのですよ?」

「たった二人でしょ? ああでも、反乱者に寝返った衛兵五十人は、スザリノ王女とガスタフ王太子との見合いの席に、救援に訪れなかったみたいだね。彼らは今この瞬間、国民の前で処刑されているよ」

「はい?」

「だから、宰相である僕が命じて、大事な息子の窮地に駆け付けなかった衛兵全員、死刑にしたの。その代わり、新しい鎧兵が王宮内外を守っているだろう? 分かるかい、セライ君。この戦いは先に兵を失った方が負けなんだ。こちらは二人、あちらは五十人。手持ち兵の損失は、あちらの方が断然大きい。今日この日、たった二人の兵で、五十人の兵を倒したと思えば、称賛に値する命の散らせ方だと思うけどね」

「貴方はそのように兵の命を考えているのですか?」

 ぐっと睨み付けるセライに、ハクレイが顔を上げた。

「どうしてそんな風に怒るのかなぁ? これも君の大事な王女様をお護りする為の戦略なんだけどなぁ? ……ああ、そうか。一度でもその懐に隠し持つ銃で人殺しをすれば、僕と同じ境地に立てるのかなぁ? ねえ、セライ君」

 息子の表情に、ふふっとハクレイが笑った。席を立ち、息子の前髪を上げる。金属棒で殴打されたその傷跡を擦った。

「君は僕に怒っているんじゃないよね。その表情、君は僕を、恐れているんだろう?」

 セライは気丈に立つも、すぐ隣に置かれている姿見には、目の前の父に臆する息子の姿が映っていた。



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