テロの惨状
現場に着くと、鎧の兵が王宮の外で起きた爆発の巻き添えとなった住民達を救い出していた。爆発源は既に灰となり、その痕跡から、乗り物のようなものが爆発したように思えた。
「一体これは何ぞ?」
「爆発テロですよ」
朱鷺の隣からセライが顔を出した。険阻な表情で、爆発の惨劇を見る。
「てろ、とな?」
「ええ。とある人物を狙った殺人行為。恐らくはエルヴァ達、反乱者の仕業でしょう」
「ふむ、反乱者……」
「それで、一体何方を狙った、てろなのです?」
水影の問いに、「もう分かっておいでなのでは?」とセライが言う。
「宰相殿……せらい殿の、父君にございまするな?」
「ええ。父が西方視察より戻ってきたところを、反乱者達が狙ったテロなのです」
ぎゅっと拳を握るセライに、「して、父君は? ご無事にございまするか?」と顔色を変えて安孫が問う。
「アレは囮ですよ。父の影武者が乗った車に仕掛けられた爆弾が爆発したのです。本物の父は、悠々と王宮内に入ったはずですよ」
ぐっとセライが顔を顰めた。
「わたくしは父の下に向かいます。貴方方は、父の前では大人しくしているように。無事に地球に帰りたければ、あの男の逆鱗に触れてはなりませんよ」
そう忠告し、セライは部下と共に王宮へと戻っていった。テロの惨劇に、朱鷺がじっと目を据える。爆発の巻沿いとなって倒れている人々や、怪我をして泣き腫らしている子供ら。燻った黒煙に、血の匂いが漂う。
「月が世もまた、乱世なのでございましょうか?」
安孫に訊ねられ、「乱世であらば、傷つく者の多くが、斯様に何の謂れもあらぬ者らにございますな」と、腹で憤怒を抑える水影が言った。
「水影、安孫、怪我人の処置を手伝うぞ」
「は」
二人が同時に答え、重症人や怪我人の治療にあたった。