94.何もしなくても龍を改心させてしまう神
海中にて、龍とやらに襲われている。
龍神豪雷砲とかいう、何の芸も無い水魔法を、反魔法で破壊した。
「なぁ、話し合いしないか?」
言葉が通じる相手なのだ。
話し合いで解決するならそれ以上いいことはないだろう。
別に殺すのは容易いが、命は大切にってね。
『な、な、舐めるなよこぞぉお! 龍神豪雷砲がなくともぉ! 我が膂力は古竜をも凌駕するんだぞぉ!』
「いや、古竜を比較対象に持ち出されてもな」
昔は古竜、強くて恐かったけど、今じゃ別に。
対して恐くない相手だもんな、古竜。
『草:感覚がバグってて』
草!?
解:とか、是:とかじゃなくなったぞついに!?
『くそがぁああああ! 死ねぇええええええええええええ!』
龍が水の中を高速移動してくる。
龍はそのぶっとい体で、俺を締め上げる。
ぎりぎり……と締め付けてきた。
『どうだ! 我が膂力は古竜の体をおり、神威鉄すら破壊するのだぞぉ!』
「へー」
『何故生きてるぅううううううううううううううううううう!?』
みしみし……。
「いや、おまえの攻撃、食らってねえから」
『!? それは……防御結界! いつの間に!』
「いつの間にって、いや、最初から張ってたけど」
『馬鹿な!? 我と最初にあったときには、なかったぞ!?』
「いや海潜ったときからずっと風の結界張ってるんだが……?」
昔は苦手だったが、今では結界、普通に使えるようになっている。
しかしふーむ……。
結界が見えないとな?
『解:マスターの結界は高度すぎて、常人の視界には映らないのです』
「高度すぎて映らないって意味わからないんだけど……」
『大きすぎるモノを、小さきモノは理解できない、という理屈です』
まあ、わかるような、わからないような、理屈だ。
とにかく。
この龍は俺の結界すら知覚できない、そんな低い次元にいるってことだ。
正直負ける気はまったくしなかった。
「こーさんしておけ」
『ぐぬぅうう! くそおぉおおおおおおおおおおお!』
「あーあー、そんな締め付けるなって。おまえの体の方が傷付いてるじゃないかよ」
びき、ばき……! と龍の鱗が壊れていく。
どうやら相当に力を込めてるようだ。
でも、俺の結界が硬すぎて、逆にダメージを、反動で受けている。
「くそぉ! こうなったら、自爆覚悟だぁ!」
龍が巻き付いた状態で、上から俺をのぞき込む。
口をぐわっと開く。
『告:龍神豪雷砲が来ます』
「あー、やめとけってまじで」
反魔法で消そうとする前に……。
『死ね! ぐわぁあああああああああああああああああああああ!』
俺が止める間もなく、龍がブレスを放つ。
だがブレスは俺の風の結界にはじかれて、自爆していた。
……やれやれ。
俺は止めたって言うのに……もう。
「死者蘇生」
ぽんっ。
『はぁ!? はぁ……はぁ……わ、我は死んだ……はずでは……?』
「うん。だから、生き返らせた」
なんか、不憫だったしな。
龍は俺を見て、深く頭を垂れた。
『申し訳ありませんでした……!』
「は……?」
『死者を蘇生、その力、まさしく神! 神を前に不遜な態度を取ってしまったこと、深くお詫び申し上げます!』
な、何だ急に改心したぞ……?
ま、まあなにはともあれ。
「もう暴れないでね」
『わかりました! 神のご命令とあらば!』
ふぅ……。神じゃないんだが、まあいいか。
『さすがです、マスター。1歩も動かず龍を倒すとは。お見事です』
あ、そう言われれば俺今回なにもしてなかったかも。
……何もして無くとも、俺やっちゃうんだなぁ。
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