表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

65/196

65.死者を蘇生する



 奈落の森の入口にて。

 天導教会の聖職者が、呪具を使って、上位エルダーリッチーを操っていた。


 呪具を破壊し、聖職者のやろうを魔法で捕縛。

 

「天導がなんでこんなことしたのか……それを問い詰めるのは後だな」

「問:なぜですか?」


 ミネルヴァ、ついに自分から俺に問いかけるようになってきた。

 おまえ、すべての問いに対する答えを知ってるんじゃないのか……?


「解:愛するマスターとコミュニケーションをとりたいがための、あえての問いです」


 ああそう……。

 つまり構ってほしいわけか。回答はわかってるけども。


「まあいいや。それより、このリッチーをどうにかしてやりたいよ」


 俺の体からリッチーが出てきた。

 リッチーはすごい魔法使いや呪術師が、死後呪いに転じた魔物らしい。


「呪具を壊しても、こいつの魂が救われたってわけじゃないんだろ?」

「是:あくまで呪具は、リッチーに言うことを聞かせていただけです」


 リッチー。死んだ魔法使い等の幽霊、か。


「何かつらいことがあったんだな?」


 ミネルヴァを使って、リッチーの過去を探る。

 どうやら、婚約者に裏切られて、殺されてしまった過去を持ってるようだ。


「そっか……それはつらいな」


 ここでリッチーを魔力撃で消し去ることはたやすい(ばんばん殺してたけど今まで……)。


 でも、事情を知ってしまった相手を、もう魔物とは思えなかった。

 この人をなんとかしてやりたいって思った。……まあ、わかってるよ。偽善だ。


 俺は今までほかのリッチーたちを、魔物と断じて殺してきたじゃないか。

 この子だけ助けるのは、偽善だってわかってる。でも、やらない善よりやる善だ。


「素晴らしい人間性に、感激いたしました」

「ほ、ほんとに泣いてるし……」


 普段あまり表情の変化がないミネルヴァが泣いていた。

 よっぽど感動したんだろうか……。


「では、マスターはリッチーを救済するのですね」

「ああ。つっても、魔物化した魂を、元にどう戻すかだが……」


「そこでお任せ全知全能さんのコーナー。わー」


 無表情にもどり、ぱちぱちと拍手するミネルヴァ。

 ど、どうした急に……?


「ワタシはあらゆる疑問に答える全知全能。つまり、」

「そうか! 魂の救済方法も、検索すればいいんだな!」


 ということで、ミネルヴァを使って、魂を戻す方法を検索した。

 その結果、修復魔法(ピュアの使ってたアレ)に、聖なる白炎(俺が覚えた上位解呪の魔法)。そして、治癒魔法。


 3つの魔法を複合すれば、魂を元に戻すことができるとわかった。


「ですが、マスター。理論上可能というだけで、実行できるかは話が別です。複合魔法はそもそも……いえ、すみませんでした。野暮でしたね」


 ふふ、とミネルヴァが微笑む。


「マスターの辞書に、不可能の文字はないのですから」


 そんな御大層なもんじゃないが……。

 だが、助ける方法があって、難しいからやらないのは、ありえない。


 俺は決めたんだ。

 この強い力は、誰かのために使うんだって。


「複合治癒魔法……『魂回復グルーヴァ・ヒール』!」


 呪いで傷ついた魂を、元に戻す治癒魔法。

 肉体ではなく魂を治癒するという、人知を超える技術。


 だが、ミネルヴァと、そして賢神の力があわされば、そんな人ならざる神の奇跡を再現することが出来た。

 おどろおどろしいリッチーの姿に、変化が生じる。


 骸骨姿から……肉感的な美女の姿へと、変貌していた。


『信じられない……自我を保つことが、できてる……』

「戻ったみたいだな。よかったよ」


 黒いローブをすっぽりとかぶった、とんでもない美女の幽霊が、そこにはいた。


「君の名前は?」

『ドゥーエ……』


「ドゥーエか。俺はアベル・D・キャスター。辺境伯をやってる」


 俺はドゥーエにこれまでの簡単な経緯を説明。

 じわ……とドゥーエが涙を流す。


『ありがとう、アベル様……。わたしを救ってくれて……』


 これでおわり、みたいな雰囲気を出していた。

 いや、まだだ。


「本当の意味で、おまえを救えてないよ、ドゥーエ。大丈夫、俺に任せろ」

『いったい何を……?』


 俺はまず、人体錬成を行う。

 ドゥーエそっくりの人間を錬成した。


 神の力をもってすれば、魂の器を錬成することくらい容易い(ミネルヴァでやったしな)。


『これは、わたしの肉体……?』

「ああ。ドゥーエ。ここに入ってみてくれ」


 魂と、肉体がここにあるんだ。

 ならば、この世界にもう一度生れ落ちることができるはず。


「マスター。それは、死者の蘇生。この世で不可能とされてることの一つです」


 なるほど……全知全能の書にも、死者の蘇生は不可能と書いてあるのか。

 なら。


「そのルールを、俺は今否定するよ」


 もう一度、魂回復を行う。

 今度は魂、そして肉体の二つに治癒を施す。


 ドゥーエの魂がゆっくりと、肉体に戻っていく。

 そして……肉体と魂、ふたつが完全に結合される。


 そのうえで、俺はさらなる治癒の力を吹き込んだ。

 彼女がまた、この世界で元気に暮らせるように……!


 強い光が収まると、ドゥーエの幽霊はいなくなっていた。

 ゆっくりと彼女が目を開ける。


「どうだ?」

「信じられない……生きてる。わたし! 生き返った!」


 ふぅ、どうやらうまく行ったようだ。

 多分魂が死後の世界へ旅立っていなかったこと、それと全知全能がそばにいたことで、死者蘇生が成功したのだろう。


「あぁあ、神様! ありがとうござます!」


 裸身の美女ドゥーエが泣きながら、頭を下げる。


「いいって。あんた辛い人生を送ってたんだろ? 今度は、幸せになれるといいな」


 俺も昔呪いで苦しめられてたから、わかるんだ。

 苦しいだけの人生を送ってきたやつの気持ちがさ。だから、幸せになってほしいんだよ。


「そ、そ、そんな……ば、ばば、ばかなぁ~」


 ん?

 誰……? ああ、天導のあほか。


「し、ししし、死者の蘇生ぃ? ありえん! そんなの、我らが信じる主さまでもぉ、不可能だったのにぃ~」

「単に、その主とやらが、マスターより無能ということです」


「あ、あははあぁ~。これは夢だぁ~。ゆめなのだぁ~」


 ……やれやれ。

 まあ何はともあれ、ドゥーエを救うことができてよかったよ。


【★☆大切なお願いがあります☆★】


少しでも、

「面白そう!」

「続きが気になる!」

「アベルすげエエエ!!」


と思っていただけましたら、

広告の下↓にある【☆☆☆☆☆】から、

ポイントを入れてくださると嬉しいです!


★の数は皆さんの判断ですが、

★5をつけてもらえるとモチベがめちゃくちゃあがって、

最高の応援になります!


なにとぞ、ご協力お願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ