65.死者を蘇生する
奈落の森の入口にて。
天導教会の聖職者が、呪具を使って、上位リッチーを操っていた。
呪具を破壊し、聖職者のやろうを魔法で捕縛。
「天導がなんでこんなことしたのか……それを問い詰めるのは後だな」
「問:なぜですか?」
ミネルヴァ、ついに自分から俺に問いかけるようになってきた。
おまえ、すべての問いに対する答えを知ってるんじゃないのか……?
「解:愛するマスターとコミュニケーションをとりたいがための、あえての問いです」
ああそう……。
つまり構ってほしいわけか。回答はわかってるけども。
「まあいいや。それより、このリッチーをどうにかしてやりたいよ」
俺の体からリッチーが出てきた。
リッチーはすごい魔法使いや呪術師が、死後呪いに転じた魔物らしい。
「呪具を壊しても、こいつの魂が救われたってわけじゃないんだろ?」
「是:あくまで呪具は、リッチーに言うことを聞かせていただけです」
リッチー。死んだ魔法使い等の幽霊、か。
「何かつらいことがあったんだな?」
ミネルヴァを使って、リッチーの過去を探る。
どうやら、婚約者に裏切られて、殺されてしまった過去を持ってるようだ。
「そっか……それはつらいな」
ここでリッチーを魔力撃で消し去ることはたやすい(ばんばん殺してたけど今まで……)。
でも、事情を知ってしまった相手を、もう魔物とは思えなかった。
この人をなんとかしてやりたいって思った。……まあ、わかってるよ。偽善だ。
俺は今までほかのリッチーたちを、魔物と断じて殺してきたじゃないか。
この子だけ助けるのは、偽善だってわかってる。でも、やらない善よりやる善だ。
「素晴らしい人間性に、感激いたしました」
「ほ、ほんとに泣いてるし……」
普段あまり表情の変化がないミネルヴァが泣いていた。
よっぽど感動したんだろうか……。
「では、マスターはリッチーを救済するのですね」
「ああ。つっても、魔物化した魂を、元にどう戻すかだが……」
「そこでお任せ全知全能さんのコーナー。わー」
無表情にもどり、ぱちぱちと拍手するミネルヴァ。
ど、どうした急に……?
「ワタシはあらゆる疑問に答える全知全能。つまり、」
「そうか! 魂の救済方法も、検索すればいいんだな!」
ということで、ミネルヴァを使って、魂を戻す方法を検索した。
その結果、修復魔法(ピュアの使ってたアレ)に、聖なる白炎(俺が覚えた上位解呪の魔法)。そして、治癒魔法。
3つの魔法を複合すれば、魂を元に戻すことができるとわかった。
「ですが、マスター。理論上可能というだけで、実行できるかは話が別です。複合魔法はそもそも……いえ、すみませんでした。野暮でしたね」
ふふ、とミネルヴァが微笑む。
「マスターの辞書に、不可能の文字はないのですから」
そんな御大層なもんじゃないが……。
だが、助ける方法があって、難しいからやらないのは、ありえない。
俺は決めたんだ。
この強い力は、誰かのために使うんだって。
「複合治癒魔法……『魂回復』!」
呪いで傷ついた魂を、元に戻す治癒魔法。
肉体ではなく魂を治癒するという、人知を超える技術。
だが、ミネルヴァと、そして賢神の力があわされば、そんな人ならざる神の奇跡を再現することが出来た。
おどろおどろしいリッチーの姿に、変化が生じる。
骸骨姿から……肉感的な美女の姿へと、変貌していた。
『信じられない……自我を保つことが、できてる……』
「戻ったみたいだな。よかったよ」
黒いローブをすっぽりとかぶった、とんでもない美女の幽霊が、そこにはいた。
「君の名前は?」
『ドゥーエ……』
「ドゥーエか。俺はアベル・D・キャスター。辺境伯をやってる」
俺はドゥーエにこれまでの簡単な経緯を説明。
じわ……とドゥーエが涙を流す。
『ありがとう、アベル様……。わたしを救ってくれて……』
これでおわり、みたいな雰囲気を出していた。
いや、まだだ。
「本当の意味で、おまえを救えてないよ、ドゥーエ。大丈夫、俺に任せろ」
『いったい何を……?』
俺はまず、人体錬成を行う。
ドゥーエそっくりの人間を錬成した。
神の力をもってすれば、魂の器を錬成することくらい容易い(ミネルヴァでやったしな)。
『これは、わたしの肉体……?』
「ああ。ドゥーエ。ここに入ってみてくれ」
魂と、肉体がここにあるんだ。
ならば、この世界にもう一度生れ落ちることができるはず。
「マスター。それは、死者の蘇生。この世で不可能とされてることの一つです」
なるほど……全知全能の書にも、死者の蘇生は不可能と書いてあるのか。
なら。
「その理を、俺は今否定するよ」
もう一度、魂回復を行う。
今度は魂、そして肉体の二つに治癒を施す。
ドゥーエの魂がゆっくりと、肉体に戻っていく。
そして……肉体と魂、ふたつが完全に結合される。
そのうえで、俺はさらなる治癒の力を吹き込んだ。
彼女がまた、この世界で元気に暮らせるように……!
強い光が収まると、ドゥーエの幽霊はいなくなっていた。
ゆっくりと彼女が目を開ける。
「どうだ?」
「信じられない……生きてる。わたし! 生き返った!」
ふぅ、どうやらうまく行ったようだ。
多分魂が死後の世界へ旅立っていなかったこと、それと全知全能がそばにいたことで、死者蘇生が成功したのだろう。
「あぁあ、神様! ありがとうござます!」
裸身の美女が泣きながら、頭を下げる。
「いいって。あんた辛い人生を送ってたんだろ? 今度は、幸せになれるといいな」
俺も昔呪いで苦しめられてたから、わかるんだ。
苦しいだけの人生を送ってきたやつの気持ちがさ。だから、幸せになってほしいんだよ。
「そ、そ、そんな……ば、ばば、ばかなぁ~」
ん?
誰……? ああ、天導のあほか。
「し、ししし、死者の蘇生ぃ? ありえん! そんなの、我らが信じる主さまでもぉ、不可能だったのにぃ~」
「単に、その主とやらが、マスターより無能ということです」
「あ、あははあぁ~。これは夢だぁ~。ゆめなのだぁ~」
……やれやれ。
まあ何はともあれ、ドゥーエを救うことができてよかったよ。
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