64.絶対に壊れないものだって壊しちゃう
キムズカジーの作業場にて。
魔銀中毒が、上位リッチーのしわざだと見抜いた、俺。
「しかし……ううん」
「どうしたんや、大魔導士はん?」
イッコジーが俺に尋ねてくる。
「理屈は、わかったよ。魔銀にリッチーが憑依するせいで、体調を崩す。聖水をかければリッチーがいなくなるから、体調が回復するってさ。でも……そもそも論として、どうしてリッチーは魔銀に憑く?」
魔銀にリッチーを引き寄せる力があるとか?
「否:魔銀には特にそういう性質はありません。人為的に、リッチーは魔銀に引き寄せられるようにされてます」
ん……?
人為的……?
「故意に誰かやってるってことか?」
「是」
一体誰が……。
ん?
「どうしたのじゃ?」
「今、全速力で逃げようとしてるやつがいる……」
「なんじゃと!? いったいどこに?」
「奈落の森だな。魔力感知にひっかかったんだ。ちょっといって確かめてくる」
俺は転移魔法を使って、逃げようとするやつの魔力の元へとやってきた。
「ひぃいい!」
森の入口に、白装束の男がいた。
十字架を首からぶら下げている。
ん……この格好、どっかで見たことがあるような。
「っと、あんた。なんで逃げようとした?」
「に、逃げてない! 逃げようとなんてしてない!」
嘘くさいなぁ……。
調べようにも、ミネルヴァはここには……。
「マスター」
「ミネルヴァ……おまえどうして……?」
俺の隣に、人間姿のミネルヴァがいた。
あれ? 転移魔法なんて使えたんだろうか……?
「全知全能は、マスターのスキルです。マスターの一部といってもいい。ゆえに、求められればマスターのお側に一瞬で転移できるのです」
「そ、そんな便利な機能がついてるか……」
全知全能すごいな……。
「まあいい。ミネルヴァ。こいつは逃げてないといってるんだが、ほんとか?」
「否:嘘」
ほらぁ……。
やっぱりな。
「嘘じゃ無いか」
「な、何を証拠にそんなことを!」
まあそうか。
こいつからすれば、ミネルヴァが全知全能……全ての疑問に答える存在とは、知らないもんな。
「じゃあ質問を変えよう。おまえここで何してるんだ? デッドエンドの人間じゃ無いな?」
「解:天導教会の聖職者。呪具を用いて、リッチーを操っていた」
そうかどっかで見たとおもったら、天導の聖職者か。
ん……? 天導教会……?
聖水を使って、高いお布施をふんだくってるやつらじゃないか。
そいつらが、リッチーを操っている……?
「ででで、でたらめだ!!!!! 呪具など持っていない!!!!!」
俺は魔力感知を発動させる。
こいつの魔力とは別の魔力が無いか調べる。
あった。
俺はこいつの胸から下げてる十字架を手に取る。
「な、何をする貴様! それは、天導教会の聖職者にあたえられし、聖なる十字架! 部外者が触れて良い物では……」
「これが呪具だろ?」
「ち、違う!」
「是」
ミネルヴァが肯定する。
ほら、やっぱり呪具だ。
「どこをどう見たら呪具なのだ! 聖なる十字架だぞこれは!」
「見た目を偽装してるんだろ。解呪」
魔法や呪いを解除するワザを使う。
パキィイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!
聖なる十字架は姿を変える。
蛇の巻き付いてる、人間の頭蓋骨だ。
まがまがしいオーラが、呪具から発生してる。
「し、信じられない……! 高度な隠蔽のまじないがかけられてたのに!」
「語るに落ちるとはこのことだな」
「ふ、ふん! 馬鹿め! 死ね! リッチー! この男を呪い殺せぇ!」
呪具から黒いオーラが発生。
それが塊一つの形を成す。
フードを被った、怪しい死霊モンスター。
これが上位リッチーか。
リッチーが俺に抱きついてくる。
そのまま、俺の身体の中に入ってくる。
「ははは! 死んだなぁ! リッチーには生命を吸う力がある! 身体に直接とりこまれたら、命を全て奪われて即死するんだよぉ!」
「しないが?」
「なにぃいいいいいいいいいい!?」
別にリッチーが入ってきたところで、俺の身体から、力が抜けるようなことはなかった。
「どどど、どうなっていやがるんだ!?」
「解:賢神たるマスターの生命エネルギーは、通常の人間を遥か凌駕しています。リッチーごときでは、全てを奪うことができません」
「そんなばかな……! 人間か貴様ぁ!」
人間なんだがな。
最近ちょっと神になりかけてるけど。
……ふむ。
俺の中にいるリッチーから、【それ】が伝わってきた。
やれやれ。
「悪いが、呪具を破壊させてもらうよ。こいつのせいで、リッチーは迷惑してるんだ」
この呪具には、リッチーをコントロールする能力がある。
裏を返すと、こいつがあるせいで、リッチーはしたくもないことを、やらされてるといえる。
「ば、馬鹿め! その呪具は特級呪具! 絶対に壊れない素材でできてる……!」
絶対壊れないねえ。
たしかに妙な呪いが掛かってる。
壊そうとすると、その命令を打ち消す呪いだ。
が。まあ……関係ない。
「ふん!」
俺は右手に魔力を貯め、身体強化し、思い切り骸骨を握りつぶした。
「そんな馬鹿なぁああああああああああああああああああ!」
愕然とする天導の聖職者。
「絶対に壊れない呪いがかかってたんだぞぉ!?」
「さぁ。なんかいけるって気がした。なんで呪いが効かなかったんだろう?」
するとミネルヴァが答えてくれる。
「解:マスターは過去、強力な呪いにかかっていたことがあります。そのとき、呪いに対する耐性ができたのです」
あ、そういや……そうだったな。
元弟子に呪いをかけられてたんだけっか。
あの経験があったおかげで、俺には呪いへの耐性ができた、ってことか。
……あんま喜びたくないな。
「信じられない……ほんとにきさま、人間か……!?」
「いや……なんか神らしいぞ」
この領地の人たちからすればな。
【★☆大切なお願いがあります☆★】
少しでも、
「面白そう!」
「続きが気になる!」
「アベルツエエエ!!」
と思っていただけましたら、
広告の下↓にある【☆☆☆☆☆】から、
ポイントを入れてくださると嬉しいです!
★の数は皆さんの判断ですが、
★5をつけてもらえるとモチベがめちゃくちゃあがって、
最高の応援になります!
なにとぞ、ご協力お願いします!