63.誰にもわからなかった謎を解明してしまう
ある日のこと。
キムズカジーの作業小屋にて。
「できたぞ、アベル殿! 魔銀の剣じゃ!」
キムズカジーが、青みがかった銀の剣を手に叫ぶ。
ほー……これが魔銀の剣か。
綺麗な剣だな。
「魔銀の剣って何が凄いんだ?」
「解:魔銀は全鉱物のなかで、最も高い魔力伝導率を持ちます」
ミネルヴァ曰く、物体に魔法(魔力)を100%付与するのは不可能らしい。
どうしても、効果の何割かは落ちるとのこと。
しかしこの魔銀の場合は、効果をほとんど落とすことなく、魔法の力を付与できるそうだ。
「へえ……そりゃ凄い。少しの力で最大の力を発揮できるわけだからな」
大量に積み重ねられてる、魔銀の剣。
それを見て……、イッコジーがうっとりつぶやく。
「ああ、硬貨を作ってるみたいやぁ~。これでぼろ儲けやでぇ~!」
商魂たくましいな、こいつ。
キムズカジーのおかげで、魔銀の剣が大量にできた。
「ほなこれ、さっそく【聖水】にひたしてくるさかい!」
「ン? 聖水……? なんだそれ?」
イッコジーが知らん単語出してきたぞ。
「解:天導教会に、高額のお布施をすることで得られる、特別な水。汚れを祓う効果があると言われている」
天導……。
聞いたことあるような、ないような……。
「天導教会っちゅーんは、世界最大の宗教団体や」
ああ、あちこちに教会があったな。
あれか。
「なんで魔銀の剣を聖水に浸す必要があるんだ?」
「魔銀中毒にならへんようにや」
「魔銀中毒……?」
「せや。魔銀は素晴らしい鉱物や。けど、それを持っているとな、身体が急に痛み出すんや。それを、魔銀中毒っていうんや」
ふーん……。
そんなものがあるのか。
魔銀武器なんて使ったこと無かったから、知らなかったな。
「魔銀を聖水に浸すことで、魔銀中毒を防ぐことができるんや。そのために、魔銀武器を売る際は、天導の聖水を使わせてもらってんねん。ま、ちょー高額のお布施とられるんだけどな」
苦い顔をするイッコジー。
そうとう、金をむしり取られるんだろうな。
「それってほんとに必要なのか? 魔銀ってそんな中毒起こすもんなの?」
と、ミネルヴァに聞いてみる。
「是:魔銀中毒は実際に存在する病気。魔銀を使い続けることで発症します」
ああ、嘘では無いんだな。
「お布施代がなきゃ、魔銀武器でもっともうけられるんやが……ま、しゃーないわ。天導のとこいってくるわ!」
うーん……。
俺は気になって、魔銀の剣を手に取る。
「どないしたん?」
「いや、なんかひっかかってさ。聖水ってそもそもなんだよって話し」
魔銀を使い続けたら、中毒になる。
まあそこまではいいよ。
でも、聖水に浸すことで、中毒を防げるっていう、原理がわからない。
「聖水は天導の秘密やいうて、外に出回らないんや」
「ますます怪しいじゃねえか……」
どうにも、きな臭さを覚えた。
と、そのときである。
「ん?」
魔力感知に、突如として、敵の気配を感じたのだ。
ほんとうに、前触れもなく、敵が現れたのである……。
「どうしたんじゃ、アベル殿?」
「あ、いや……」
魔力感知によると、敵は直ぐ近くにいる。
俺の目にも、そしてガンコジーたちの目にも、敵の姿が見えていないようだ。
目で見えずとも、俺はたしかに、敵の存在を感じ取っている。
「魔力撃」
とりあえず魔力撃ぶっぱなしてみた。
ちゅどおおおおおおおおおおおおおおおおん!!
「ど、どうしたんじゃアベル殿、急に天井にむかって魔力撃を放つなんて!」
「いや、なんか変な気配を感じてさ。ミネルヴァ、なんか居たか?」
「解:上位リッチによる呪術を、マスターが討伐しました」
ん?
上位リッチ……。
「なにそれ?」
「解:高位の魔法使いや呪術師が死後呪いに転じた存在。強力な呪術を使う、死霊系のモンスターであり、常人の目には見えない」
へえ……そうなのか……。
「マスターは戦ったことないのですか?」
「いや……ないな。まあたしかに、ダンジョンで同じように、変な感じを覚えたことあるけど」
「それ、上位リッチーです」
「そ、そうなのか……」
「是:無自覚に倒していたようです。さすがです」
そうだったのか……。
たしかに、イヤなかんじがしたとき、こうしたら嫌な感じが消えていたから、魔力撃使ってたけどさ。
「目に見えない敵を、どうやって感じ取ってるん!?」
「解:マスターは魔力感知で、リッチーを感知してました。敵の姿が見えなくても、魔物は魔力を帯びてます」
なるほど……敵が見えなくても、魔力を感知することができるのか。
俺は無意識にリッチーの魔力を感知していたのか。
「無自覚に超高度な技術を使うなんて! さすがじゃアベル殿!」
「そう……? 魔力感知なんて、呼吸するように使えるけど」
ん?
「まだいるな。てか、うようよしてるよ、リッチー」
「「なにぃ!?」」
魔銀の剣の周りに、リッチーがいるようだ。
ふむ……。
「まさかだけど、これが魔銀中毒の原因じゃないか? 魔銀がこいつら、リッチーを呼び寄せてる、とか? 聖水でリッチーを払うから、魔銀中毒に聖水が有効……とか?」
「!?」
「是:マスターの推論は正しい」
「!?!?!?!?」
ふるふる……とイッコジーが身体を震わせる。
「どうした?」
「大魔導士はん……それ、歴史的発見やで……! 今まで魔銀を使うだけで、中毒になる。でもそのメカニズムはまったく解明されてなかったんや!」
そ、そうだったのか……。
「大魔導士はんはほんま、すごいおかたやで……!」
とりあえず、寄ってきたリッチーたちは俺が魔力撃で追い払っておいた。
しかし……このリッチー、どっから沸いて出てきたんだろう……?
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