61.ブランド品を作ってしまう神
ドワーフ商人のイッコジーが来てる。
マテオの茶屋にて。
イッコジーの職業がランクアップし、黄金の錬金術師となった。
「さ、さっそく試してみてもええか!?」
ふがふが、とイッコジーが鼻息荒くして言う。
俺とマテオはちょっと引いてる。だって急に抱いてくれとか言ってきたんだぜ、あいつ……。
「あ、ああ……どうぞ。というか、試すってなにするんだ?」
「新しい職業の力をや! せっかく黄金の錬金術師になったんや! 黄金を錬成したいやん!」
たしかに新しい服とか、直ぐ着たくなるもんな。
新しいものを試したい気持ちはわかる。
イッコジーは一度店を出て、外で石ころを拾ってきて、テーブルの上に載せる。
わくわくしながら、イッコジーが手を伸ばして、力を発動。
「錬成!」
カッ……!
「やったかいな!?」
「いや……駄目じゃ無いか?」
「なんやて!?」
石は金色に輝きかけたが、しかしその光は直ぐ収まった。
テーブルの上にあるのは、タダの石ころだ。
「錬成失敗だな」
「よくわかったね、ベルさん」
「まあ、なんとなくな。魔法を極めると、その魔法がうまくいったかどうかってだいたいわかるし」
付与かけるときとか、呪いを解くときとか。
「なるほど……魔法の達人にわかる感覚なんだろうね。さすがベルさん」
「くぅ! なんでや!? なんでうちの錬成が失敗したんや!?」
さっきの現象を振り返る。
たしかに石は途中まで黄金になりかけていた、と思う。
が、その途中で変化が止まり、戻ってしまった……。
つまり。
「魔力が足りなかったんじゃ無いか?」
「是:魔力不足による、錬成失敗です」
いつの間にか、ミネルヴァが俺の隣にいた。
スキル全知全能が言うんだから、あっているんだろう。
ミネルヴァが続ける。
「錬成物が稀少であるほど、必要とされる魔力量は増えます。イッコジーの体内魔力量、出力では、黄金の錬成は不可能です」
なるほど、黄金の錬金術師となったことで、黄金を錬成はできる。
が、錬成自体にかかる魔力量が、まかなえてないから、錬成失敗した……と。
「どないせえっちゅうんや……魔力なんて伸ばせないし……」
まあ方法が無いわけじゃない。
「え、イッコジーに俺が魔力を送れば良いんじゃ無いか? 仮契約中なんだし、たしかできるだろ?」
「そうさね。魔力経路で繋がってるなら、魔力を送ることは可能さね」
セックスすると無限に魔力使い放題となる。
仮契約中でも、主たる俺が魔力を送れば、擬似的に魔力量を増やす(無限)ことができる。
「おねがいします! 大魔導士はん! 魔力をおくってくだせえ!」
「あ、ああ……いいけど」
じろり、とマテオが俺をにらみつける。
「ベルさん、魔力量、おさえてね。流しすぎると爆発するから」
「こわ! え、そ、そうなの……?」
「ああ。ドワーフっていう種族は、生来、体内魔力量が他種族より少ないんだ」
ちなみに、一般的な体内魔力量は、
魔族>エルフ>人間>>ドワーフ>獣人(魔力ゼロ)
という感じらしい。
獣人って魔力無いんだ……。
「身体の中に入る魔力量がそもそも少ないんだ。ベルさんがバカみたいに魔力を一気に流したら、ぽーん! さね」
「き、気をつけます……」
先に聞いておいて良かったな……。
事件にならなくてよかった。
「ドワーフって不便だな、魔法の道具を使う機会多いのに、魔力量が少ないなんて」
キムズカジーがため息をつく。
「仕方あるまい。まあ、上位ドワーフなら別じゃが」
「上位ドワーフ?」
「ドワーフの上位種じゃ。ドワーフなのに魔力量が魔族やエルフ並におおい。大昔に滅んだ種じゃがな」
ふーん……。
上位ドワーフなぁ。
「上位ドワーフになりたかったのじゃ」
「うちもや。ま、無い物ねだりしてもしょうがないやんな」
ドワーフにとって、上位ドワーフは憧れみたいなもんらしい。
まぁ、俺にはどうにもできんが。魔力を送ることはできる。
「よし、魔力を送るぞ」
「おねがいしますやで! 錬成!」
俺がイッコジーに魔力を送り、彼女が錬成をしよう。
ゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!
「おお! 石が変化しとるで……ってこれはぁあああああああ!?」
黄金の光が収まると……。
そこには、青みがかった、銀があった。
「あれ? 黄金じゃ無いな。錬成失敗?」
ふるふる……とイッコジーが首を振る。
そして、手に取る。
「き、キムやん……こ、これ……?」
「あ、ああ! 間違いない……魔銀じゃ!」
魔銀……なんか聞いたことあるな。
「ベルさん、魔銀ってわかる?」
「いや……」
「魔銀っていうのは、神威鉄に並ぶ稀少な鉱物さね。魔法武器を作る際に用いられ、魔銀武器は超高値で売り買いされるんさね」
魔銀ってやつは、凄い稀少らしい……。
「知らなかった……」
「ベルさん魔銀武器なんて使わないもんね。魔法で十分強いし」
一方、イッコジーは震えてる。
「し、信じられへん! き、奇跡や! 黄金を作ろうとして、魔銀作ってしまうなんて! すごいで、大魔導士はん!」
え?
なんで……俺?
「大魔導士はんのばかすごい魔力があったおかげで、凄い出力を発揮し、魔銀を錬成できたんや!」
つまり俺のおかげらしい。
裏を返すと、俺の補助がないと、魔銀を錬成できないのか。
ふーむ、どうにかならんもんか。
せっかくならもっと凄い力を身に付けさせたいじゃないか?
ミネルヴァが言うとおり、彼女と友好関係を築くためにさ。
「ふむ……アベル殿。この魔銀、わしにゆずってもらえんかの?」
「え、いいけど。何するんだ、キムズカジー?」
「アクセを作るのじゃ」
「アクセサリーを?」
キムズカジーは一回出ていき、直ぐに帰ってきた。
そこには、指輪があった。
「アベル殿。この指輪を、イッコジーに贈ってくれないか?」
「え、いいけど……」
別に断る理由もなかったので、俺は指輪を、イッコジーに渡す。
すると……。
「う、く、身体に力が流れ込んで……うう! うあぁあああああああ!」
カッ……!
「イッコジーの身体が光り輝きだした!? どうなってんだ?」
「解:存在進化が始まります」
「存在進化だって!?」
「是:魔物などに見られる、進化プロセスのことです」
イヤそれは知ってるけど……!
なんでだ、相手はドワーフだぞ?
魔物じゃないのに……。
光が収まると、イッコジーは進化していた。
背の低い、ロリ少女だった彼女。
今は、背の高い、ナイスバディの美女になっていた。
「こ、この湧き上がる力は……まさか……!」
驚くイッコジー。
マテオが鑑定スキルを使って、こちらもまた驚く。
「上位ドワーフに、進化してるさね!」
「なんやてぇえええええええええええええええええ!?」
でた、なんやて。
イヤ俺もなんやてって思ってる。
「ドワーフがなんで存在進化するんだよ?」
「解:ドワーフなどの亜人種は、魔物と近しい存在なのです。ゆえに、ドワーフにも存在進化は起きる」
「な、なるほど……でもなんで存在進化したんだ?」
「解:マスターの名前が刻まれたアイテムを、相手に渡したからです」
俺の名前が刻まれた……アイテム?
キムズカジーがうなずく。
「あの魔銀の指輪には、【D】、つまりDの文字がきざまれておるのじゃ」
「Dの名前が……?」
だからなに?
「魔物が存在進化する方法にはいくつか方法がある。そのうちのひとつに、特定のアイテムを手にすること、というのがある」
「特定のアイテムって?」
「たとえば、木の実とか、石とかじゃな。満月の力が付与されてる石を手にした妖精が、上位種になったことがあるらしい」
なるほど、アイテムゲットで進化もすると……。
「デッドエンド、つまり、大魔導士殿のイニシャルが刻まれたアイテムを手にしたことで、進化をうながしたのじゃ」
「なんだそりゃ!」
ただ俺のイニシャルを刻んだだけで、魔物を進化させるアイテムになっただと?
「なんだそのあり得ない話し……」
「あり得ん話ではないのじゃ。ブランドというものがあるだろう?」
「服とかのな」
「そうじゃ。アレだって、見た目、性能がおなじでも、名前がついてるだけで、ブランド品のほうが高性能にみえるし、高値でうれるじゃろ? アレと一緒じゃ」
う、ううーん……つまりどういうことだ?
「解:神からイニシャルつきのアイテムをもらったことで、神の眷属となり、結果、ドワーフから上位ドワーフへと存在進化したのです」
そ、おうか……。
正直、未だに理解できんが。
しかし全知全能が言うなら、もうそういうもんということで、それで終わりにしよう。
「Dと大魔導士どののイニシャルを刻むだけで、超レアグッズとなるなんて。さすがじゃな!」
「これは……売れるでぇ! 超高値で売れるでぇえ! 馬鹿売れ必死や!」
Dと刻むだけ(俺の名前を貸すだけで)馬鹿売れ……?
嘘だろそんなの……?
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