59.やることなすこと全部驚かれる
櫛形山のなかで、キムズカジーの親戚イッコジーを助けた。
その後、俺は地方移住スキルで作った転移門をくぐり、首都ミョーコゥへと戻ってきた……のだが。
「なんやてえええええええええええええええええ!?」
転移門を見ながら、驚愕の表情を浮かべるイッコジー。
ああ、そうか。
転移門はダンジョン内にしかないはずだから、こんなとこにあって、驚いてるのだろう。
「転移門なんであるん!? どうやってんや!?」
「俺の職業、辺境領主の力を使ってるんだ」
「へ……!? は……!? な、なんやそんな職業! 聞いたことあらへんよ!?」
俺も聞いたこと無かったな……。
「ちょぉ、まってや! ええと……確か……」
イッコジーが自分の魔法袋(モノを異空間に収納する便利魔道具)から、分厚い辞書を取り出す。
「辺境領主辺境領主……、ないわ! つまり、【ユニーク職業】ってこっちゃな!」
「ユニーク……職業……?」
なんだか、聞いたことない単語が出てきたぞ?
「ユニークっていうのは、その人固有のって意味や。この職業辞典にはな、天地創造から今日まで、女神はんから授けられた職業が書いてある。そこに記載がないっちゅーことは、大魔導士はんだけに与えられた、超レアな職業ってことや!」
なるほど……。
剣士や魔法使いといった職業は、歴史上(というか現実でも)複数人居る。
歴史上、その人ひとりしか発現したことがない職業を、辺境領主って……。
「それ……もしかしてすごい?」
「もしかしなくてもすごいわ! そもそもユニークなんて滅多でぇへんのや! 直近だと【開】なんちゅーのがあったけど、それも何世紀も前やからな」
なるほど……。
ユニークはほとんどでないのか。
数世紀ぶりに、ユニーク職業が、俺のもとに発現したと……。
やっぱり、凄いことだったらしい。
「あれ? でも大魔導士はんって、確か職業が大賢者やなかったっけ?」
「ああ、第二の職業として得たんだ」
「せ!? う、うそやん!?」
「イヤ、ほんとだよ」
ぽかんとするイッコジー。
「大魔導士はんが嘘つくお人やないとおもうけど……。ま、まじなん?」
「ああ……。なんだったら第二、第三と複数職業を……ってイッコジー?」
ぶるぶるぶる、とイッコジーが身体を震わせてる。
「あ、あかん……もう驚きすぎて身体がもたんわ……これ以上すごいこと、せえへんでくれます?」
どこからが、これ以上のすごいことなんだろうか……。
逆にどれくらいが、凄くないんだろうか……。
「って!? なんやこれぇ!?」
「今度は何に驚いてるんだ……?」
「これ! この外壁! なんやこれ! 見事すぎるやろ!!!!!!!」
ミョーコゥを包む外壁を見て、イッコジーが驚いている。
え? 普通の外壁のようなきがするんだが……。
「見てみぃこの外壁! つなぎ目が一切あらへん! おかしいやん!」
「どこが……?」
「普通、外壁っちゅーんはな、レンガなどのブロックを積み上げてできるもんや。となると、外壁につなぎ目がどうしても生じてしまう。けど! これにはそれが一切あらへんのや!」
確かにつなぎ目は全くないな……。
「まあスキルでぽんって出したから……」
「なぁあああああああああ!?」
げ、元気な人だなこの人……。
「えと、辺境領主のスキルに、地方創生ってスキルがあるんだ。領民が増えると、スキルでぽんっと、作りたいものが作れるようになる」
デッドエンド領をもらったことで、領民が増え、作れる種類も増えたのである。
「それ……創生スキルやないかい!」
「ああ。やっぱり知ってたか」
「あったりまえですやん! 地方創生スキルちゅーたら、全商人の夢の一つ! 鑑定、アイテムボックス、そして創生! どれか一つでも持っていたら、巨万の富を得ることができる! 特に創生スキルがあれば、商業の神を名乗れますよ!」
……………………まじか。
また、神になってしまうのか俺……。
というか、鑑定もアイテムボックスも持ってるのだが……。
さすがに驚き疲れてしまうだろうから、黙っておこう。
「こない立派な外壁までつくれるなんて、辺境領主おそるべしやな……」
「ま、まあほら、あんま周り見ないでおくれよ。俺が領主となったばかりで、いろんなもんが足りてないからさ」
本音は、また何かを見てイッコジーが仰天したら、大変だからな。
さっさと用事を済まさせて、帰ってもらおう。そのほうが負担は少ないだろうからな。
「あ、兄貴~! おつかれっすぅ~」
門の入り口前に、若い男が立っていた。
モンバ・シューエイ。
俺の弟子でもある男だ。
……で、彼の足下には、でかくて赤いドラゴンが倒れていた。
「火竜やぁん!? なんでここに!?」
「兄貴が居ない間に襲ってきたんで、おれが倒しておいたっす!」
「なんやてぇええええええええええええええええええええ!?」
ああ、またイッコジーを驚かせてしまった……。
「火竜ってAランクのドラゴンやで!? あ、あんた……もしかして名うての冒険者だったりするん?」
「いえ! 自分はこの地方都市ミョーコゥの、門番をしてるしがない若者っすよぉ?」
「!? ただの門番が……Aランク倒しちまうん!?」
するとモンバが胸を張って言う。
「アベル兄貴に鍛えてもらったっす! そしたら、ドラゴンくらいみんな、簡単に倒せるようになったっすよー」
……イッコジーが「な、なにゃ……」
どしーん! と倒れる。
「イッコジー!? どうした!?」
「きゅう……」
……ティアが直ぐに患者の様子を見る。
「叫びすぎて、酸欠ぎみになってしまわれたようです。すぐ」
……たいしたことなくてよかった。
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