56.片手間に国宝つくっちゃう
キムズカジーのとこで、神威鉄の剣をパワーアップさせた。
俺はミョーコゥにある、マテオの茶屋のテラス席にて、のんびり茶をすすっていた。
「平和だ……」
「ベルさんのおかげでね」
街は加速度的に便利になっていっている。
デッドエンド領をまるっともらったことで、統治する人数(領民の数)がふえ、地方創生スキルで作れる建物のバリエーションが増えたからである。
「外壁、建物……作るのに手間が掛かるもん、一瞬でつくっちまうんだもん。やっぱベルさんは、凄いよ」
「そりゃ……どうも」
最近思うところがある。
「どうしたんだい? 浮かない顔して」
マテオは直ぐに俺の異変に気づいたようだ。
こまかいところに、よく気づく女だ。
「ちょっと悩んでて」
「どうしたんだい? 悩みを聞くよ」
マテオが隣の席に座る。
心配そうな表情で俺を見ていた。俺のこと、大事に思ってくれてるんだな。……いい女と結ばれて、俺は幸せだ。
「最近……」
「うんうん」
「なんか、人間離れしてない……俺?」
賢神の力を手に入れてから特に、だ。
なんか俺のやることが、全部常識を越えるような、凄いことばかり。
まるで、ホントに神になった気分……。
「え、何言ってんだい? 最近もなにも、最初からでしょ? 人間離れしたのって」
「あ、あれぇ? そ、そうかな……?」
マテオが真顔でそう言ってきた。
嘘じゃ無くて、本当なのか……。あ、あれ……?
「そもそもベルさん、賢神に成る前から規格外でしょ? 魔神倒すくらいに強いんだし」
「いやまあ……でもあれは、七剣星がいたからで……」
俺単体で倒したわけじゃないっていうか。
「ワイズマンから聞いたよ。復活魔神に、ワイズマンほか6人の攻撃はまるで歯が立たなかった。ベルさんがほぼひとりでやったって」
「いやあれは……」
確かに皆倒れて、俺だけが立っていたけれども。
「それでも、皆の助けがなかったら成し遂げられなかったよ。魔神殺し」
「でも、人の助けを借りて、魔神倒せるやつなんて、ベルさんくらいさ。なんにせよ、あんたは最初からヤバかったよ」
うんうん、とマテオがうなずく。
すごかったのかわからないが、まあ、マテオが凄かったというのならそうなんだろうな。
「ところでベルさん、何やってんだいそれ?」
マテオがテーブルの上においてある、剣を指さす。
「神威鉄の剣。身体強化以外の魔法が付与できないかなって」
知的好奇心からだ。
身体強化でヒトミがレベルアップしたんだ。
他の魔法も使えるようにできたら、役に立つかなって。
「ベルさん付与魔法って、大魔導士時代使わなかったの?」
「ああ。道具に魔法を付与する必要なかったかな」
「それに魔法でだいたいワンパンできたからな」
道具に付与しての運用は、魔力量の少ない、戦闘職系の職業のやつが使う手だったしな。
「しかし付与魔法ってこないだ、初めてやってみたけど、案外簡単だったな」
自分の身体にかけるように、道具にかけるような感じ。
「今度は属性魔法を付与してみようかなって」
「できるんかい? 補助魔法の付与より、属性魔法の付与の方が難しい……」
「できた」
「はや!?」
ずずずず……と刃に魔力が宿っている。
「って!? なんだい、この魔力量!? いったいどんな魔法を付与したんだ!?」
「天裂迅雷剣だけど」
「でぃ!?」
ん?
どうしたんだろうか……。
「極大魔法じゃないかい!」
「ああ。なんかいけたな」
「信じられない……」
信じられない?
「攻撃魔法の付与を行う場合、魔法のランクが上になるほど難しくなるんだよ? 常識……ないね」
「ああ」
そうだったのか。
「魔法の威力が高くなると、制御が難しくなるさね。ただ相手にぶち当てるより、付与するほうが難しい。極大魔法の属性付与なんて、理論上まあできなくないけど、やったやつなんて見たことないよ」
「そうだったのか」
「……ベルさん、ほんと魔法学校に通っとくべきだったね。奨学金制度とかあったんだよ?」
「そ、そうだったのか……」
「そうだったのか言い過ぎだよ! もう!」
「す、すまん……」
しかしそうか。
学校、学校かぁ……。
俺みたいなのが、今後増えないように……。
「学校とか作ってみたいかな」
「ベルさんがそうしたいなら、してみたらいいんじゃないかい? せっかく自由にしていい土地をもらったんだしさ」
なるほど……。
自由、か。
自分で何でもやっていいなら、今までやってこなかったことを試してもいいかもしれんな。
「で、ベルさんの極大魔法を付与した剣だけど……性能は……って、えええ!?」
ん?
どうしたんだろうか。
「べ、ベルさんこれ……装備ボーナスがついてるよ! それも……二つも!」
装備、ボーナス……?
「装備してる間だけ、使えるようになる特別なスキルさ」
「ほー……便利だな」
あんま武器使ったことないから、知らなかったが。
「いやね、装備ボーナスつきの武器って、作るのとても技術力がいるんだよ! キムズカジーでも、無理なことなんだよ!」
「えー!? マジかよ!」
「ああ……装備ボーナスを二つもつけるなんて……。どうやって……?」
「ただ適当に魔法を付与しただけなんだが……」
身体強化を付与したときのように、ただ付与しただけである。
「そっか……。そもそも一般人は極大魔法を付与する、っていうその時点で高度に超が100くらいつく高等技術だったね。ベルさんは簡単にやってるけど、前提として高等テクを使っていたわけか」
それが装備ボーナスをつける条件だったのかもしれん。
「【鑑定】」
■雷速剣(S+)
→装備ボーナス:雷速、雷掌
「装備すると素早く動けるようになる、雷速。攻撃に麻痺属性を付与する雷掌。二つのスキルを付与されるみたいだな」
「……………………」
マテオがまた、大きくため息をついていた。
これは……。
「またやっちゃったか」
「ああ、やっちゃってるよ……ものすごいやつ。二つとも。これ……国宝レベルさね」
え?
えええ!?
「こ、国宝!? こんな……適当に魔法を付与した剣が……!?」
「ああ。雷速、雷掌、どっちもSランクスキル。装備するだけでこんな凄いスキルを得られるんだ。国宝の条件を十分満たしてるさね」
そ、そうだったんだ……。
しかし、国宝ねえ……。
「マテオを疑うわけじゃないが、こんなテキトーに作ったものが、そんな価値があるとは思えんのだが」
「ほーん……ワイズマン!」
ちょうど、ワイズマンが警邏活動から帰ってきた。
「これベルさんからプレゼントだって」
「! ありがとうございますわ! どれどれ……」
雷速剣を見て……どさっ! とワイズマンが腰を抜かす。
「こ、国宝レベルの魔道具ですわーーーーーーーーーーーーーー!」
あ、やっぱりそうだったのか……。
「アベル様! ありがとうございます! 家宝にいたしますわ!」
「お、大げさな……」
テキトーに作っただけだから、とは言えんな……。
こんなに喜んでるし……。
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