55.お手軽に伝説の剣つくる神
神威鉄の加工所を作ってしまった俺。
それから数日後。
俺は、キムズカジーに呼ばれて、彼の作業場へとやってきた。
「大魔導士殿! できましたぞ! 神威鉄の剣ですじゃ!」
「おお、できたか」
俺、マテオ、ミネルヴァ……。
そして今日は、Sランク冒険者のヒトミも来てる。
武器を作ってもらってる、とヒトミに話したところ、興味があるらしく、ついてきたのだ。
剣士だからだろうか。
「神威鉄の加工なんて初めてじゃった。苦労した、が、ついにわしは核心をつかんだのじゃ!」
作業台の上には1振りの片手剣が乗っている。
神威鉄の剣は、そりゃもう、見事なもんだった。
黒い刀身の、とても強そうな剣である。
「せ、拙者触ってもよいでしょうか、アベル殿!」
ヒトミがワクワクを隠せない感じで言う。
剣士だからな。
「いいぞ」
「うむ! わぁ……! これが神威鉄の剣……ん、んんう!?」
ヒトミが剣を持ち上げようとする。
しかしなかなか持ち上がらない。
両手で持ち上げるも、ふらふら……してる。
「何やってんだ?」
「おも……いぃいいいい……」
ぱっ……。
ズシーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!!
「石畳の床に、剣が頭からぶっささってるさね」
「めちゃくちゃ重かったでござるぅ!」
重いのか?
単なる片手剣なのに……?
俺は右手に魔力を集中。
身体強化の魔法を使って、ひょいっと持ち上げる。
うぉ!
「な、なんだ軽いじゃん……」
とても重いもんだと思っていたのだが、片手でひょいっと持ち上がった。
これなら身体強化魔法なんて使わなくても、魔力で強化した腕力で持ち上がったな。
「いやいやいやいや! 軽くないでござるよ! Sランクの拙者の腕力で持ち上がらないんでござるよ!?」
「そうか? そうか……」
そうだな。
確かにヒトミは凄腕剣士だもんな。
そんな彼女が持ち上げられないっていうんだから……。
「剣として問題あるな」
「そっちかい……!!!!!!」
びしっ!
とマテオが俺にツッコミを入れる。
「今のどう見てもベルさんがオカシイでしょ!?」
「俺のどこが?」
「Sランク剣士でも持ち上がらない神威鉄の剣、持ち上げる魔法使いなんて聞いたことないよ!」
「? ああ、そっちか……」
まあそっちなんてたいした問題じゃない。
「問題はこんな見事な剣を、みんなが使えない方だろう?」
「え、ええ……。まあそっちもだけどさぁ~……」
しかしふーむ……。
これは重いのか。
身体強化を解いて、魔力で体を強化する。
これでも全然軽く持ち上げられた。
「というか、神威鉄の原石って、そんな重くなかった気がするんだが?」
「神威鉄は加工時に、火にくべることで、密度と重量が増すのじゃ」
ふーん……そういうもんなのか。
「神威鉄の剣は、別名、【竜殺しの剣】っていうんだよ」
「竜を殺すための剣ってこと?」
「違う。重すぎて、持ち上げた竜が死ぬほどの、剣ってことさ」
なるほど……。
これがめちゃくちゃ重い(らしい)のならぽろっと落としただけで、大けがしてしまうだろう。
竜ですら、ケガを通り越して殺してしまうほど、重い剣……か。
「申し訳ないですじゃ、大魔導士殿。欠陥品を作ってしまって……」
「いや欠陥って……普通にすごいさね……」
「いいや! 依頼主である大魔導士殿に、ご満足いただけないのじゃ! 欠陥品ですじゃあ!」
「意識が高いっていうか……基準がおかしいっていうか……」
あきれるマテオ。
しかしどうにかならんもんか……。
「この剣に、重力魔法を付与するのはどうだ?」
重力で軽くするというアイディアである。
「いや、ベルさん。それは無理さね」
「無理? なんでだよ?」
「神威鉄には、魔法付与ができないんだよ」
魔法付与。
火等の魔法を付与して、炎の剣にする……みたいな。
武器に魔法をかける付与魔法だ。
「あれ、できないのか? 魔力付与はできたぞ」
「魔力はね。でも、神威鉄には、魔法を付与できない。これは、絶対の理。そういう特性なのさ、神威鉄は」
ふーん……。
世界一硬い代わりに、魔法が付与できないみたいな、そんな感じなのかね。
……うーん。
「どうしたんだい?」
「でも、いけると思うんだよな。魔法の付与」
「いやいや……さしものベルさんでも……………………」
マテオが、固まる。
まさか……という疑念のこもった目を俺に向けてきた。
「数々の、ルールを変えてきたベルさんなら……いける……のかい? いやいや……でも……」
「多分な。ま、物は試しだ。やってみるよ」
うまくいけば、みんなが剣を使えるようになる。
そうなればみんな嬉しいだろうからな。
俺は神威鉄の剣を手にとって、魔法を付与する。
「万象引斥……《グラビティ・フォー……》……」
「あほぉーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
ぺしーん!
「え、ちょっと……なんだよ?」
「ベルさん!? 今、万象引斥力、使おうとした!?」
「え? ああ」
「やりすぎ!!!!!!!!!」
やり過ぎ……?
「ま、マテオ殿……。なんでござるか、万象引斥力って?」
剣士のヒトミは魔法についてよく知らないのか、マテオに尋ねる。
「重力系の古代魔法さね。古竜すらぺしゃんこにするほどの超重力と、山すら宇宙へと追放するほどの斥力、どらもを自在に操れる魔法」
「ナンデござるかその超魔法ぅううううううううううううううううう!?」
しまった……。
「これじゃやり過ぎか。軽くしようと思ったんだが」
「過ぎたるは及ばざるがごとし! だよ、ベルさん。身体強化くらいでちょうどいいよ」
あ、そうだな。
俺は神威鉄の剣に、身体強化の魔法を付与する……。
魔力が付与できるんだ、魔法だって付与できるさ……。
カッ……!
「おお! 刀身が淡く光り輝いてる! これなら……」
俺はヒトミに、神威鉄の剣を手渡す。
彼女は少し躊躇う(さっき落としたからな)。
だが、直ぐに俺から剣を手に取る。
「うぉお! す、すごいでござる!」
どうやら成功のようだ。
これで神威鉄の剣を使える……。
「体に力が満ち満ちているのでござる! まるで羽のように、体が軽い!」
え、そっち……?
ヒトミは剣を持ったまま、たんっと飛ぶ。
結構高い作業場の天井を……。
どがぁあああん!
「天井をぶち破った!?」
「まだまだのびるでござるよー!」
遥か上空でヒトミの嬉しそうな声がする。
やがて、着地。
「頭ぶつけてたけど、痛くないか?」
「全然!」
どうやら身体強化はちゃんと掛かってるようだ。
「しかし……すごいよベルさん! まさか、魔法付与不可能とされていた、神威鉄に、魔法を付与しちゃうなんて……」
「おまけに剣を握っただけで、体が超強化され! 武人として数段上の強さを手にできるでござるー!」
ううん、また俺の魔法が、やっちゃったみたいだな……。
「しかし大魔導士殿はさすがですじゃ! タダの剣を、神器に変えてしまうなんて!」
出たな。
神器。
「こないだも言ってたけど、そんなたいそうなもんじゃないだろこれ」
単に、剣に魔法を付与しただけじゃん。
ただの魔法剣だと思うんだが。
「いや、手にしたものをここまで強化する剣は、やはり神器ですじゃ! すごいですじゃぁ……! 大魔導士殿は鍛冶の神でもあるんじゃぁあああああ!」
神違うんだけどな……。
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