54.オリハルコン加工場を作って驚かれる
神威鉄をゲットした。
アイテムボックスに入れて、ミョーコゥへと転移。
とある場所へと向かう。
「おお! 大魔導士殿!」
「キムズカジー」
凄腕職人のドワーフ、キムズカジー・クラフト。
このドワーフ、なんとミョーコゥに居着いてるのだ。
俺を気に入ったとかで、ここで鍛冶屋を営んでいる。
「どうしたのじゃ?」
「ちょっと見て欲しいものがあってな」
そういって、俺は神威鉄をアイテムボックスから取り出して、キムズカジーに見せる。
鑑定スキルが間違っていることはないだろうが、まあ、念のためな。
「す、すごいのじゃ! なんだこれは!? こんな大量の神威鉄……見たことないのじゃ!」
どうやら本物のようだ。
まあ鑑定スキルも、ミネルヴァも間違ってるとは思えないしな。
「こんなたくさんの神威鉄を、一体どこで? というか、どうやって採取したのじゃ!?」
「マスターのパンチで」
「あはは! 面白い冗談じゃ……………………え? 冗談じゃない?」
ミネルヴァのジョークだと思っていたキムズカジー。
だがこの場にいる全員が笑ってないことから、本当のことなのだと気づいたようだ。
「さすがに拳では取ってこれないよ」
全部はな。
「そ、そうじゃな! ふぅ……。ということは、神威鉄のツルハシを使ったのか? そんなものあったのかの?」
「いや、これ使った」
俺はアイテムボックスから、魔力付与された、鉄のツルハシを取り出す。
キムズカジーはそれを受け取ったあと……。
がたたっ!
「あば、あばばばばばば……」
腰を抜かしてしまった……。
え、なに? そんなに……。
「なんじゃこれ……信じれん……。ただの鉄が、神威鉄同等の強度を持っておる!!!!!!!!!」
そういうのわかるんだ……。
ドワーフだからか?
「鉄を神威鉄並みの強度に!? そんな技術この世には存在せんぞ!? い、一体誰が……あいや! 言わずとも……」
びしっ、とキムズカジーが俺を指さす。
「大魔導士さまが、魔力付与を行ったのじゃな!?」
「ああ」
「なんとぉおおお! す、すごすぎるぅうう!」
マテオの言うとおり、やっぱりこの魔力付与、すごいことだったんだな。
「信じられん……。とても人間の所業とは思えぬのじゃ……。持続時間はどれくらいじゃ?」
「それが、永久なんだってさ」
どさ……!
マテオの言葉に、キムズカジーが再度腰を抜かす。
そこまで……?
「え、永久的な魔力付与された道具なんて……そんなの、神器じゃないか!」
「じんぎ……?」
聞いたことない単語だ。
マテオが答えようとすると……。
「神器とはね……」
「解:神々が作られた、凄まじい、まさに奇跡としか思えない現象を起こす武具のこと」
「アタシの役目……!」
「解説はワタシの」
美女二人が額を付き合わせて言い争っている。
やめてくれ……。
「神器は神の武具ってことか」
「うむ……。そうとしか思えぬ……。永久的に魔力が持続し、神威鉄並みの強度を保つものなど、神器しかない」
「ふーん……そんな特別なことしてないんだけどな」
「どうやって作ったのじゃ?」
「既製品に、魔力をこう……これ借りて良いか?」
俺はキムズカジーの工房にあった、鉄の剣を手に取る。
彼からの許可をもらい、剣に魔力を付与。
ずずずずずず……
神威鉄の塊を、すとん……と剣で切った。
どさぁ……!
「また腰抜かしてるし……」
「わしは……夢でも見てるのじゃろうか……兄貴やわしが、あれほど頑張っても作れぬ神器を、こんな直ぐに作るなんて……」
兄貴?
「キムズカジー、おまえ兄がいるのか?」
「ああ……わしなんぞより腕の良い職人の兄貴がおる。が……その兄貴ですら、神器を作るのに苦戦しておるのじゃ……」
ということは。
「ベルさんは、凄腕職人でもできない、神器の作成ができてるってことかい? やば……」
「さすがですマスター」
うーん、これ作成っていうのかな……。
単に魔力を吹き込んでるだけなんだが……。
「いやはや、大魔導士殿は凄い凄いとは思っておったが、まさか神レベルに凄い職人でもあったとは……」
「いやいやいや……。これ魔力吹き込んだだけ。職人違うから俺」
ややあって。
「神威鉄の扱いどうしたほうがいい?」
「まあ売るしかないじゃろうな。高値で売れるぞ?」
ん?
キムズカジーが妙なことを言う。
「売るしかない……? どういうことだ? ここで……たとえば武器に加工とかできないのか?」
「無理じゃ」「無理ですね」
キムズカジー、そして、全知全能が無理と断定する。
「なんでだよ。キムズカジーは凄腕職人じゃん。神威鉄の武器くらい作れないのか?」
「うむ……。武器の形にすることは可能じゃ。が、神威鉄の加工は、ここではできぬのじゃ」
加工がここでできない……?
「神威鉄の加工には、超高温の炉が必要となるのです」
「超高温の……炉?」
うむ、とキムズカジーがうなずく。
「神威鉄の形を変えるためには、南の国にある、特別なミダ火山、ミダガハラ火山でしか行えんのじゃ」
どうやら加工には、めちゃくちゃ高温の炎が必要らしい。
「ミダガハラ火山……ってたしか、結構遠くだったな」
「うむ、しかも四方を海に囲まれており、周囲には海の魔物が泳いでおって危険な土地じゃ。そう易々といけないのじゃ」
なるほど……。
神威鉄加工は、ミダガハラ火山でしか行えない(超高温の炎が必要となる)。
が、そこへ行くための輸送費がめっちゃかかる。
「神威鉄の武器が高いのは、そもそも鉱石が稀少だって言うこともあるけど、加工にも輸送にも金がかかるからなんだな」
「そのとおりじゃ。さすが大魔導士殿、一度話を聞いただけで、神威鉄武器が高い理由を理解するとは。見事な理解力じゃ! 若い奴らはそれを理解せぬからまったく……」
うん?
「その理屈で言うとさ、神威鉄単体で売るより、神威鉄武器にしたほうが、より高く売れるんじゃ無いか?」
「そりゃもちろんそうじゃ。しかし加工はミダガハラ火山でしか……」
俺はさっきの話を聞いて、一つのインスピレーションを抱いていた。
「別にミダガハラ火山まで行かなくていいんだろ? ようは、そことおなじ程度の、炎があれば加工できるんだろ?」
「そ、そうじゃが……」
やはり、財源は多い方がいい。
金はあって困ることはないからな。
せっかくうちには、超凄腕職人がいるのだ。
加工して売れば大きなもうけとなるなら、そうしたいじゃないか。
「いやしかしな大魔導士殿……ミダガハラ火山は特殊な火山で、その炎は数千度も……」
マテオが諦めきった表情で、ぽん……とキムズカジーの肩を叩く。
「ま、見てなって……。ベルさん、ほらやってごらんよ」
どうやらマテオは俺がこれからしようとしてることに、気づいたようだ。
俺は右手を前に出す。
そして魔力を集中させる。
すると、俺の手のひらに……。
「な、な、なんじゃ!? 青い火の玉……じゃとぉお!?」
俺が魔法で作った火の玉をみて、キムズカジーが驚愕してる。
「ミネルヴァ。これくらいの温度で、いいか?」
「是:この火の玉は、ミダガハラ火山の炎と同程度の温度をしております。加工は可能です」
よし。
「これ使ってくれ」
「い、いや……いやいやいや! だ、大魔導士殿!? ミダガハラ火山とおなじ温度の炎って……作れるはずないじゃろ!?」
「? 作れるよ。魔法でならな」
俺は火の玉をぽいっと投げる。
「うぉおおおお! 死ぬぅうううう! ……って、あれ? 熱くない?」
「そりゃそうだろ。魔法で作ったんだから」
「???????????」
キムズカジーの頭の上に、無数の?が浮かんでいる。
あら、わからないのか?
まあ、魔法使いじゃないからな。
「キムズカジー。魔法って効果範囲って概念があるんだよ」
「効果範囲? なんじゃ?」
「読んで字のごとく、効果を発揮する範囲のことさ。その範囲内にいる敵はダメージを負う。裏を返すと、その範囲外にいると……」
「ダメージは、ない?」
「そのとおり。ベルさんの作った火の玉は、効果範囲が……球体の内部だけなのさ」
「は? な、内部……だけ?」
つまり、ぶつかってもダメージがおわない。
また、熱波で火傷することはない。
「そんなことが……可能なのかの?」
「ううん、不可能さね。効果範囲は決まっていて、イジることは不可能……と一般にはされてるさね」
ミネルヴァがこくんこくん、とうなずく。
え……つまり……?
「どの魔法にも、効果範囲は決まっていて変えることができない。けど、ベルさんは、変えることができるみたいだね……」
「え? これってまさか……」
なんか、前にもあったような……。
「さすがですマスター。またしても、世界の法則を、かえてしまいました」
……そうだった。
前も、全知全能には【不可能】って書いてあった概念を、書き換えてしまったことがあった!
今回のだって、効果範囲を変えられるって世界の常識を変えてしまった……。
「本当にベルさん、神だね……」
「世界の理をかえ、新たなる理を作り出す。まさしく、神の所業です」
またも……常識を変えてしまったようだ……
「ま、まあこれで、神威鉄加工できるだろ? 役立てて……って、キムズカジー!?」
キムズカジーは泣きながら、その場で何度も頭を下げる。
「ありがとうじゃ! あなた様のおかげで、神威鉄が簡単に加工できるようになった! これで職人として、より上の高みにいけまするぅ!」
「い、いや……ただ神威鉄を加工できるようにしただけじゃん……おおげさな……」
「大抵の職人は、神威鉄を加工する機会にも恵まれませんのじゃ」
ああ、加工所が世界に1個しかないからか……。
「職人として悔しかったですじゃ。ですが! この炎を使えば、神威鉄を扱える! 加工することでさらなる経験が手に入る! ありがとうじゃ! 神さま!」
神さまじゃないんだが……。
ま、まあ喜んでもらえてなによりだ。
「ちなみにベルさん。この超凄い、高温の火の玉……。どんな魔法を使ったんだい? まさか、極大魔法の煉獄業火球?」
煉獄業火球。
世界最高火力の魔法、極大魔法のひとつだ。
いやいや……。
「ただの、火球だよ」
その温度をあげただけだ……。
って、あれ?
「マテオ? どうした? 頭を抱えて……?」
「もうなんというか……頭痛い……」
「どうした!? 病気か!? ケガか!?」
「あんたのせいだよぉおおおおおおおおおおお!」
えええ!?
「俺何か傷つけるようなことした!?」
「ああもぉおお! ちがうよおぉお! ベルさんが凄すぎるせいだよぉお!」
「わけわからんぞ!」
「ああもおぉお!」
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