53.オリハルコン簡単採取できるようにする
櫛形山の中にきてる俺たち。
鉱山入口を塞いでる大岩を、暗黒孔で吸い込んだ。
その際に、神威鉄がなぜか出土したのだった。
「神威鉄が取れる場所だったのか?」
「是;櫛形山は神威鉄の採掘ポイントとなっております」
ミネルヴァが俺の問いかけに答えてくれる。
さすが全知全能、何でも知ってるぜ……。
あれ?
「じゃあなんで今まで取れなかったんだ?」
「解:地中深くに埋まっていること、また、鑑定スキル持ちがいないと気づけないこと、そして……見つけたとしても採取できないこと等の問題があり、採掘されませんでした」
なるほど……たくさん問題があるわけか。
「ベルさんの暗黒孔で、地面をひっぺがえした結果、埋まっていた神威鉄が出土したわけだね。【鑑定】」
マテオが落ちてる石を手に取って、鑑定スキルを使う。
「んー……これじゃないね」
「こっちが神威鉄のかけらじゃないか?」
鈍色の、一見する石にしか見えないそれを手にとって、マテオに渡す。
「鑑定……。ほんとだ! 神威鉄だ。未加工だと石に近くて、区別がつかないのに……どうしてわかるんだい?」
ん?
どうして……?
「逆にどうしてわからないんだ? こんな、魔力が内側からめちゃくちゃ吹き出してるのに」
通常の石。そして神威鉄(の原石)。
その最大の違いは、どれくらい魔力をうちに秘めているかだ。
「なるほど。神威鉄の堅さの理由は、膨大な魔力量が関わってる。ゆえに、魔力感知を使えば、石か神威鉄か見分けがつくんだね? さすがベルさん……って言いたいけど」
ん?
「ああ、すまんすまん。マテオは魔力感知ができないんだったな」
「ワロス」
びきっ、とマテオの額に血管が浮く。
「アタシ【が】じゃなくて! 一般人【は】! 魔力を感知するなんてできないさね!」
「ああ、わかってるよ。高等テクなんだよな」
「ワロス」
「こんの……!」
マテオとミネルヴァが取っ組み合いをしそうだったので、仲裁に入る。
本当に仲悪いなこの二人……。
俺は神威鉄の破片を拾っていく。
「このあたりのは神威鉄の破片しかないようですね」
砕け散った一部しかないな、確かに。
「鉱床とかあるといいんだけどね」
「これじゃないか? 天井のこれ」
鍾乳石のように、上から生えている岩があった。
「でか! でも……さすがにこれ、採取できないね」
「どうしてだよ?」
「さっきミネルヴァが言っていただろ? 硬くて採取できないって」
見分けるのも難しいし、取るのも難しいってそういや言っていたな。
「硬いとなんで採取できないんだ?」
「百聞は一見にしかずさね。ベルさん、アイテムボックスのなかに、ツルハシ入ってるから、取り出してくれ」
勇者のスキルのひとつに、アイテムボックスが存在する。
大勇者へ覚醒したとき、鑑定だけでなく、アイテムボックス(無限)スキルを手に入れ居たのだ。
「って、いつの間に俺のアイテムボックスにツルハシ入れてたんだよ……?」
「従者となると、アイテムボックスも共用になるんだよ」
マテオは偉いな。
きちんと、自分の力の検証を行っている……。
「そういうこまかい作業は、下々のものに任せておけばよいのです。強い力を持つマスターは、どっしりと何もせず構えていれば良い。そう、ライオンのように」
ミネルヴァが俺のフォローを入れてくれる。
割と、感情豊かになってきたな。良いやつだなって思う。
まあ、俺以外のやつへのあたりはキツいが。
アイテムボックスから鉄のツルハシを取り出す。
マテオがそれを使って、鍾乳石に一撃入れる。
パキィイイン!
「鉄のツルハシが……粉々になったな」
「鉄より神威鉄のほうが固いからね。神威鉄を採取しようとするなら、同質の素材でないと」
神威鉄を取るためには、神威鉄のツルハシがいる……か。
でもそれを作るためには、神威鉄がなきゃいけないわけだ。
うーん……ジレンマ。
「マスターの魔法で破壊は可能です」
「こんな洞窟内で魔法なんて使ったら危ないさね」
それもそうだ。
天井が崩れてくるかもしれないしな。
「うーん……困ったね。せっかくこんな大きな、鉱床を見つけたのに」
「そんな難しい問題か?」
「え?」
「取れるだろ、こうすれば」
俺は魔力を右腕に集中。
拳を突くって、鉱床を殴りつける。
「てい」
ドガアァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!
神威鉄の鉱床が壊れ、破片が地面に散らばる。
「ほら壊れた……ってどうした?」
マテオがまた頭を抱えてる。
……ああ、これは、あれだ。
「俺またなにかやっちまった……?」
「うん、まあ……。ベルさん、神威鉄を壊すためには、神威鉄必要っていったでしょ? でも……あんた、素手で砕いたよね!?」
「あ、ああ……。でもほら、素手じゃないぞ。魔力で拳を覆ってほら」
ミネルヴァが俺の右腕を見て目を剥く。
「凄いです……。大量の魔力を、一点に集中することで、超硬度な魔力の鎧を纏っています」
「確かに魔力には、物の性能を強化する能力があるけど……人間の肉体を神威鉄にまでしちまうなんて……やっぱ桁外れだね、ベルさんの魔力」
ミネルヴァがしたり顔で、
「さすが、マスターの魔力は万能ですね」
と言った。
確かにほぼ魔力で解決してるもんな……。
魔力で成長速度あげたり、一般人を強化したりと……。
「でもこのやり方だと、ベルさんにしかできないね。鉱山で働く連中じゃ、採掘できないか」
「周囲に神威鉄の反応は多数あります。すべてマスターひとりでしかやらないのは、かなり時間と手間が掛かります」
ふむ……。
つまり、だ。
「俺以外の連中も、神威鉄を採掘できるようになれば良いんだな?」
「って、どうするんだい? 神威鉄を元に、ツルハシでも作るの?」
「そんな、もったいないじゃないか」
ツルハシを作ったら、その分、売る数が減るからな。
俺はさっきマテオが使ったのとおなじ、鉄のツルハシを、アイテムボックスから取り出す。
さすがマテオ、こういうときのために、スペアもボックスに入れておいたみたいだ。
「鉄のツルハシじゃ神威鉄を採掘できないよ」
「ああ。このままじゃな。でも……こうすれば……」
俺は体から魔力をひねり出し、ツルハシに付与する。
粘土でツルハシを包み込む感じだ。
そして、魔力をぎゅっと圧縮させる。
「ほら。これでツルハシが強化されたぞ。そい」
俺はツルハシで、さっき壊した鉱床の根元を軽くつつく。
ドガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!
今ので完全に、鉱床がぶっ壊れた。
ちょっと魔力込めすぎたか。
「思ったより神威鉄ってもろいな……ってどうした二人とも?」
マテオが、いつもの顔になる。
そしてミネルヴァは拍手していた。
「さすがです、マスター。またも常人ではできないことをやってのけてます」
「どれ……?」
もはや、どれが常人ではできないことなのかわからない……。
「ベルさん……あのね、魔力を物体に付与したでしょ? まずこれが、超高等テク」
「これすら!?」
物体の魔力強化なんて、冒険者成る前からできたぞこれ!?
「それより前、基本の魔力操作がランクAの高等テクだったろ? この技術は、魔力付与。物体に魔力を付与するのは習得難易度S」
魔力操作、魔力撃より難しい技術だったとは……。
「しかも、魔力付与は、付与した人間の手から離れると、付与が切れるのが常道です。しかし……」
ミネルヴァが俺のツルハシを持っている。
だが、魔力付与されたツルハシの魔力は、消えていない。
「持続時間ってどんなもんなんだい?」
「いやそんなのないけど……」
はぁ~~~~~~……とマテオが大きくため息をついて、しゃがみ込んだ。
ま、またやってしまったようだ……。
「ベルさん……もう、あんた……理解しようね」
「な、なにを……?」
「前代未聞、空前絶後の、存在だって。ベルさんのする一挙手一投足が、奇跡なんだって」
「そこまで!?」
なんか逆に怖い……!
そのうち、俺がタダ歩いてるだけで、凄いとか言われそうで怖い……。
「ま、まあ……これで誰でも神威鉄採取できるだろ?」
「そうさね……それはすごいことだと思うよ。ありがとね、ベルさん」
なんだかんだ文句たれつつも、マテオはしっかり、俺を認めてくれる。
やっぱりいい女だなってそう思った。
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