52.オリハルコンを採取してしまう
ある日のこと。
マテオの家にて。
「マスター」
「うぉ……! み、ミネルヴァ……」
寝室で寝ているところに、全知全能あらため、ミネルヴァがやってきた。
「お、おま……時と場所を考えてくれよ……」
俺の隣には、全裸のマテオが眠っている。
「んぅ~……べるさん……ろーしたの……?」
寝ぼけたマテオが俺を見て……。
そして、隣にいるミネルヴァを見て、目を剥く。
「ちょ! おま……ミネルヴァ!? なにやってんだい! TPO弁えなよ!!!!!!!」
マテオがシーツで自分の体を隠す。
一方、ミネルヴァが冷めた目を向けながら言う。
「昨晩はマスターからたくさん可愛がってもらってたからって、第一夫人面しないでくださいね。ムカつくので」
「面、じゃなくてアタシは第一夫人だから……! と、というか見てたのかい!?」
「猫みたいに可愛い声であえぐ女に、凄まれても全然怖くないです」
「この出歯亀ぇえええええええええええええええええええ!」
ややあって。
俺たちは櫛形山へと向かっていた。
「採取業を営んでいるミョーコゥの住民から、相談がありました」
ミネルヴァにはたくさんの分身がいて、ミョーコゥをはじめとした、デッドエンド領のあちこちに配備してもらっている
領民たちの意見を、彼女を通して、俺へと伝える……いわば、メッセンジャーの役割も兼ねている。
「櫛形山には数年前から封鎖されてしまってる、鉱山があります。そこを、どうにかしてもらえないか……という相談です」
「鉱山……?」
「是:櫛形山には魔鉱石が採取できるポイントがあるのです」
「ちなみに……ベルさん。魔鉱石っていのは……」
「解:魔力を通しやすい鉱石のことで、武器や魔道具によく使われます」
「アタシの役目……! 取るんじゃないわよ!」
ふっ……とミネルヴァが勝ち誇った笑みを浮かべる。
「あなたの役割はマスターの性欲解消人形でしょ?」
「ベルさん! アタシこいつ嫌い! やっぱり燃やそう!」
まあまあ、と俺はマテオをなだめる。
確かにちょっと口の悪いとこあるけど、使えるやつでもあるからな。
ほどなくして、俺たちはポイントへと到着した。
元は鉱山みいたいだが……。
「入口が封鎖されているな?」
「ああ。数年前に嵐があってね。そのとき、大岩が入口を塞いじまったんだ」
なるほど……。
崖に空いた横穴。ここが鉱山の入口になってる。
「魔力撃でぶっ壊すのは……危ないな」
「そうさね。中の天井が崩れるかもしれないからね」
となると……。
「一番良いのは【重力魔法】使う方法さね」
「重力魔法な。オッケー。【暗黒孔】」
「ちょ……!?」
俺の指先から、小さな黒い物質が発生。
超重力の球体は、周囲にある物全てを吸い込む。
ゴオォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!
「んぎゃぁああああああああ! 吸い込まれぇええええええ………………ない?」
俺とマテオ、そしてミネルヴァの三人は無事だ。
それ以外のものが、大岩も含めて吸い込まれていく。
「い、一体何が起きてるんだい!?」
「解:マスターは重力系古代魔法【暗黒孔】を発動。周囲にある物を無差別に吸い込み、超次元へと追放する特殊な魔法を使っています」
「こだ……はぁ~…………。もう、息するように、凄い魔法使うんだから、ベルさんは……」
凄い?
ああ、古代魔法は取得が難しいんだったか。
「どうにもどんな魔法も苦労せず習得できるから、魔法ってそんなムズカシものだと思えないんだよな」
「全魔法使い、魔法学者が泣くよ、そんな発言聞いたらね……」
んで、とマテオが気を取り直したように言う。
「アタシらだけ無事なのは?」
「解:マスターは吸い込む対象から我々を除外してるのです」
「そ、そんな……! す、すごい……!」
え?
「これも凄いのかよ……?」
「そうだよ! 暗黒孔は、周囲の物を無差別に吸い込む魔法じゃないかい! 特定のものだけを吸い込まないようにするなんて、超絶技巧的魔力操作があってこそ!」
「超絶技巧……」
「そうだよ!」
「ってどういう意味だ? ちょっと凄いみたいな?」
「学力ぅううううううううううう!」
マテオが頭を抱えてしまっている。
お、俺何かやってしまっただろうか……。
「解:マスターはめちゃくちゃ凄いってことです」
「ああそうなんだ……。じゃそう言えばいいじゃないか」
わざわざ難しい言葉を使わなくてもいいのに。
「解:バカほど難しい言葉を使いたがるものです」
「ケンカ売ってんのかてめえ!? ああ!?」
まあ、何はともあれ、この暗黒孔すら難しい魔法だったらしい。
そして対象を選択して、魔法を使用することも難しいんだと。
「もう逆に、難しくないことのほうが、多い気がするんだが……」
「ベルさん無意識だと思うけど、あんまり他の魔法使いに対して、今の発言しないほうがいいよ」
「え? ああ、そうだな……」
俺だけが変なんだっけか。
うん。気をつけよう。
「ありがとな。マテオはいつも俺の間違いを正してくれる」
ほんとに、役に立ついい女だ。
「むぅ……マスター。ワタシも褒めて欲しい」
「そうだな。ありがとな」
むふー、とミネルヴァが鼻息をつく。
「これで魔石がまた採取できるようになったかな?」
「そうさね……って、ん?」
ふと、マテオが地面に転がっている【それ】を手に取る。
「! こ、これはぁ!?」
なんだ?
マテオがまた驚いてる。
「どうした?」
「お、神威鉄だよ!」
「神威鉄……? って……あれか、凄い硬いっていう」
こないだ俺が錬成したやつだ。
「俺まだ錬成してないぞ、神威鉄」
なのに、マテオの手には神威鉄が握られている。
「解:マスターが、暗黒孔を使用したことで、鉱山道内に隠れてた神威鉄が、地面の中から出土しました」
「ええええええええ!? お、神威鉄が出土ぉおおお!? ここ……そんなもんまで埋まってたのかい!?」
マテオが仰天してるなか、ミネルヴァが淡々と答える。
「かなり深い層に、神威鉄が埋まっているようです。人力ではとても採掘不可能。マスターの魔法で無ければ、取れません」
「なるほど……ベルさん、やっぱあんたすごいわ……」
なんか知らないが、岩をどけただけなのに、他の凄いものまで出てきてしまったようだ。
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