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51.世界のルールを書き換えてしまう



 全知全能スキルが、肉体を得て、美女ミネルヴァとなった。


 奈落の森(アビス・ウッド)にて。

 自警団の皆は、ミネルヴァの指導により、魔力撃ができるようになった。


 壁に魔法を撃っている姿を、俺とマテオ、そしてミネルヴァが見ている。


「ぜえ……はあ……もーだめっすぅ~……」


 ばたんっ、とモンバが倒れる。

 魔力を使い尽くしたのだろう。


 初日から頑張るな。えらい。


「よし、魔力注ぐぞ」


 そもそも目的は、魔力量を伸ばすことだった。

 そのためには、魔力を使い切り、魔力出力の高い、俺が魔力を流す必要がある。

「でも面倒だね。いちいち魔力を補給しないといけないんだろ、ベルさんが。複数人いるんだし」

「まあ、別にそれくらいは手間じゃ……って、ミネルヴァ?」


 ミネルヴァ(マテオのお古の服を着させている)が、モンバの元へ向かう。


「手を」

「え、は、はいっすミネルヴァ姐さん……」


 ぎゅっ、とミネルヴァがモンバの手を握る。

 ぎゅうん! と魔力がモンバに注がれた。


 その瞬間、モンバの総魔力量が増えているのがわかった。


「うぉお! 元気でたー! まだまだやれるっすよぉ!」


 モンバがまた魔力撃を打ち出す。

 ……今のは?


「解:ワタシがマスターの代わりに魔力を注ぎました。結果、モンバ・シューエイの魔力量が増えました」

「でも、ベルさんにしかできないんじゃなかったんかい?」


「是:しかしこの肉体は、元はといえばマスターの肉体。それゆえマスターと似たようなことができるのです」


 ミネルヴァのスペックは……。

・俺とスキルを共有してる

・ある程度の魔法が使える

・ただし、魔力感知、魔力出力は俺より数段劣る(とはいえ一般人と比べて高い)



 らしい。


「ベルさんのコピーみたいなもんさね」

「是;しかし、マスターの持つ戦闘経験、さらに魔力出力がないため、強い敵とは、戦うことはできますが勝ち越すことは難しいかと」


 ミネルヴァは、ある程度俺のマネはできるが、しかし、完全な俺の力の再現はできない……ってことか。


「いやでも、助かるよ。俺、領主としてもいろいろやらないといけないし。でも、訓練もつけないとだからさ。おまえに手伝ってもらえると助かるよ」


 少し無表情に近い、ミネルヴァの表情が明るくなる。

 そして、ぴったり、と俺の側に寄りそう。


「どこぞの女房(笑)と違って、ワタシはあなた様のお役に立てますか?」

「あ゛? 誰のこと言ってんだい?」


「草いじりしかできない、知識でもワタシに劣る、女房(笑)」

「ケンカ売ってんのかい!? ああ!?」


「あなたはマスターのタメに何ができるんですかね?」

「ふん! ベルさんを今まで精神的にサポートしてきたのアタシだよ! スキルに男を慰めることができるんかい? ああん?」


 俺は二人の肩をぽんっ、と叩く。


「ケンカすんな。仲良くな」

「「ちっ! ベルさん(マスター)に免じて許してやる!」」


 やれやれだ……。


「しかしまあ、ミネルヴァがいると便利なのは確かだ。これからも頼むよ」

「是:ただ、やはり人手が足りていないと進言します」


 スキルだった頃の全知全能ミネルヴァは、ただ俺の問いに答えるだけだった。

 しかし、今は自分から発言できるようになってる。改めてだけど、すげえな。



「そうさね。モンバの噂を聞いたら、自分も強くして欲しいって言ってくるやからも増えてくるだろうし。それに、ベルさん、忘れてるようだけど、デッドエンド領って、ミョーコゥ以外にも街があるんだよ?」


 あ、そうだった……。

 俺は辺境伯となって、元ヴォツラーク領全域をもらったんだ。


 ミョーコゥ、奈落のアビス・ウッド櫛形山くしがたやま、その周囲の街も管理する必要ができたのである。


「移動は転移の魔法を使えば一発だろうけど、その街でのトラブルや、相談事の解決に……とやることはいっぱいさ。ミネルヴァがひとり増えただけじゃ、辺境伯の仕事は回らないんじゃないかい?」


 マテオの指摘はもっともだな。

 人材を増やさないと。


 かといって、俺やミネルヴァレベルのことができる人材が、そう簡単に集まるとは思えない……。


「提案:【遍在へんざい】の魔法を修得するのはどうでしょうか?」

「へんざい……?」


 聞いたことない魔法だな。

 なるほど、とマテオがうなずく。


「遍在……。確か古代魔法だったね。超高度な自分の分身を作成し、広い範囲で活動させられるっていう魔法」


 そんな古代魔法があるのか。


「遍在でマスターの分身を作り、街ごとにマスターをおけばよいかと」

「なるほどね。じゃやってみようか。ミネルヴァ、ベルさんに魔法の使い方を教えて……」


 え?


「こんな感じだろ?」


 俺の隣に、もうひとりの【ミネルヴァ】が立っている。


「「は……?」」


 ミネルヴァとまったくおなじ分身を作り出した。

 分身ミネルヴァ、ミネルヴァ本体、そして、マテオが……なんか驚いてる。


「え? なんで驚いてるんだよ」

「い、いや……ベルさん……あ、あ、あんた……魔法の仕組み、聞いてないのにどうやって……?」


「ん? どんな魔法か教えてくれたじゃないか。それでまあ、だいたいわかったし、再現できるってインスピレーションあったし」


 で、やったらできた。


「概要聞いただけで再現するとか……どんだけ天才なんだよ……やっぱりすごいね」

「否:す、すごいって物じゃありません……」


 ミネルヴァが珍しく動揺していた。

 凄いって物じゃない?


「どういうことだ?」

「マスターは、世界のルールを変えたのです」


 マテオが困惑しながら尋ねる。


「どういうことだい?」

「遍在は……自分の分身を作る魔法です。ですがマスターは、ミネルヴァ、【他者】の分身を作ったのです」


「それが?」

「全知全能には、【遍在は自己のコピーを作る魔法】と定義されています。全知全能に記されてるのは、この世界のルール」


「!? そ、そうか……その定義を、ベルさんが変えちまったんだ!」


 え?

 え? なんだ……?


「全知全能を凌駕する発想、そしてそれを再現できるだけの卓越した魔法の才覚。お見事です、さすが、賢神けんじんと呼ばれるだけありますね」


「やっぱ……ベルさん規格外だわ」


 ……どうやら、俺が無意識にやったことは、トンデモないことらしかった。


「遍在は自己のコピー。それをアウトプットすることで、他者をコピーできる。なるほど、これならミネルヴァを増やし、管理させられ、ベルさんの負担が減るね」


 いやしかし……。


「なんかミネルヴァに全部任せるのは、申し訳ないんだが」


「遍在は意識と記憶を共有します。人間の脳ではその処理は不可能。人外スキルであるワタシに業務委託するべきです」

「そ、そっか……じゃ申し訳ないけど頼むよ、他の街の管理」

「承知です。では、もう少しコピーを増やしてもらっても」


 ミョーコゥ以外にも街はあるんだもんな。

 遍在のアウトプット……っと。


 ズォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!


「なんじゃこりゃ!?」

「み、ミネルヴァ姉さんが、10……いや、100人はいるっすぅ!?」


 ちょっとのつもりが、だいぶコピーを作ってしまった。


「ベルさん! 多すぎる! 100も街ないよ!」

「え、そうなのか?」


 ミネルヴァが驚愕しながら言う。


「信じられません。古代魔法は魔力をかなり消費します。また、アウトプットは、普通に遍在を使うよりも魔力を消費します。それでも……魔力量が微塵も減っていません」


 なに? 遍在のアウトプットって、そんなに魔力いるのか?

 というか、古代魔法がそもそも、そんな消費するものなのか……?


「ベルさん……疲れは?」

「全然」


 減った感覚すら起きない。


「べ、ベルさんの魔力って……今、いったいどんなもんなんだい……?」

「そ、測定不能……です……」


「はぁ!? 全知全能をもってしてもかい!?」

「はい……。測定しようとしたときには、増え続けております」

「なんだって!? どういう理屈なんだよ!?」


 確かに……。

 別に俺は魔力を増やすことなにもしてないのだが……。


「解:マスターは現在進行形で、魔力をかなり消費することをしています。従者、土地への魔力供給等」


 確かに、ティアや、この街(の設備等)に魔力を常に供給してる状態だ。


「魔力を消費し、それと同時進行で、消費した分の魔力量が増えていって居るのです」


 確かに魔力を使えば魔力を回復できるが……。

 それって、俺が他者へ魔力を供給しないと、無理なんじゃなかったか……?


「ベルさんは特別なのかもね。ただ使えば、その分増えていく。ベルさんは自動で魔力を使っているから、自動で増えていく……と」

「魔力がもの凄い勢いで減り増えています。プラマイで魔力が減ってないように見えるだけで」


 そ、そうなんだ……。

 俺、何もしてないのに、魔力がぐんぐん増えていたとは……。


「ベルさん、ただそこにいるだけで、奇跡みたいなことする……まさしく、神になってきてるね」

「さすがマスターです」


 マテオの言うとおり、肩書きじゃない、本物の神になってきてるように思えて……。

 ちょっと怖かった。自分が自分でないものへ、変わってるようで。


 まあでも……。

 皆のためになってるなら、いいか。


 

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