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05.美人薬師から感謝されホレられる

ここからが、短編の続きとなってます!



 俺の名前はアベル・キャスター。

 33歳。職業ジョブは大賢者。


 ジャーク勇者パーティに所属していたのだが、役に立たないからとパーティを追放されてしまう。


 かつては魔神を倒した伝説の大魔導士ともてはやされた俺だ。

 しかし今では年老いてしまい、魔法もまともに扱えない体になってしまったのだ。


 追放後は辺境の街ミョーコゥで、誰とも関わらずひっそりと生きていた。

 しかしある日、街の子供が行方不明になってしまう。


 森に探しに行くと、そこには迷子の少女と、そして呪われた竜の子を発見。

 生命魔力オドを消費することで、無事竜の呪いを解いたのだった……。


    ☆


 竜の子の呪いを解いた翌日。

 俺の家に、来客があった。


「マテオ。どうしたんだ……?」


【マテオ・ケミスト】。

 この街で唯一の薬師だ。年齢は19。


 俺はここにきて薬草を拾ってそれで生計を立てていたので顔見知りである。

 

 背が高く、すらっとした手足、そして整ったプロポーション。

 緑かかった艶やかな黒髪に翡翠の瞳……。


 都会にいればさぞモテただろう、そんな女が……。

 俺の前で、土下座したのだ。


「ベルさん。このたびは、本当にすまなかった……!」

「! あ、頭をあげてくれ」


「それはできない。あたいは、昨日あんたを危険な目に遭わせちまった……謝って済む問題じゃあない」


 昨日……。

 マテオの依頼で、森に入った少女を助けに行った。


 俺は彼女を助けたあとは、マテオに少女を届け、そのまま帰宅した。

 竜の子は……ほっとくわけにはいかないので、奥の方で寝かしつけてる。


「リンリンから話は聞いたよ」

「リンリン……?」

「昨日ベルさんが助けた子さ。あたいの姪なんだ」


 どうやら姪であるリンリンから、マテオは昨晩の顛末を聞いたらしい。

 森で俺に保護されたこと。


 呪われた竜の解呪を行ったこと。


「ほんっとに……うちの姪が、めいわくかけて……。あんた、生命魔力オド使ったんだろ?」

「! どうしてそれを……?」


「ベルさんの体内の魔力量はほぼなかった。でも解呪ディスペルしてみせた。ってことは、生命魔力オドを使ったってことじゃないか……」


 魔法の知識が多少あるものなら、相手の魔力をボンヤリとだが感知できる(俺レベルの魔力感知でないにしろ)

 マテオは俺に魔力がないことを知っていたのだ。


 でも魔法を使った。

 魔力がないものが魔法を使うなら、生命魔力オドを使うしかない。


 つまり、俺が命を削って魔法を使った、ということを、マテオは察したようだ。

 ……しかし生命魔力オドについては、魔法についてかなり知識が無いと知らないはず。


 どうやらマテオは、結構な魔法の知識があるようだ。

 なんでこんな、辺境の街で薬師なんてやってるんだろうか……?


「本当にごめんなさい、ベルさん。体の弱ってるあんたが生命魔力オドを使えば、死ぬ可能性だってあった。リンリンのわがままで、あんたを殺すところだった。本当にごめんなさい……これは、そのお詫びです」


 すっ、とマテオが懐から革袋を取り出す。

 そして、羊皮紙も。


「これは……?」

「うちの全財産。それと薬屋の店と土地の権利書」


「は……?」

「これだけで足りないだろうから、今からうちは奴隷商館へ行って身売りする。その金でなんとか、許してくれ」

「待て……待ってくれ。何を言ってるんだおまえ……?」


 いきなり過ぎて話しについて行けないんだが……?

 

「そもそも何の金だ……?」

「慰謝料に決まってるだろう?」

「慰謝料っておまえ……」


 確かに迷惑をかけられた。

 だが、マテオが持ってきた金(身売り分も遭わせて)は、明らかにもらいすぎだ。


 これだけで人が働かず10……いや、20年は暮らせるレベルの大金だった。


 迷惑料にしてはもらいすぎだ。


「伝説の大魔導士アベル・キャスターを殺すところだったんだ。これくらいの大金じゃないと……許してもらえないでしょ」

「!? おまえ……知ってたのか……? 俺のこと……?」


 俺は名字を伏せ、前職を隠し、ただの【ベル】として、ミョーコゥで暮らしていた。

 この女に対しても、俺が大魔導士であることは言っていなかった……。


「王都でベルさんを見掛けたことがあるんだよ」


 ……そういえば、マテオは一度外に出て、再び故郷へ出戻ったって言っていた。

 そうか……。王都で暮らしていたのなら、俺の素性を知っててもおかしくはない。


「でも……マテオ。おまえ俺の正体を知ってたのに、どうして言わなかったんだ? 周りの連中とかに……」

「ここに来る連中は、訳ありが多いのさ。ベルさんもそのひとりかなって。だから、ナニも聞かなかったし、他人にも言いふらしたりしなかったんだ」


 ここミョーコゥは辺境も辺境。

 訪れるのは、よっぽどの変わり者でないかぎり、お尋ね者など、後ろ暗い過去を持つものばかり。


 ……そうか。

 マテオは知らない振りをしててくれたんだな。


「ありがとう」

「お礼を言うのはこっちだよ。大事な姪の命を救ってくれたんだ。感謝してもしきれない」


 ……マテオは思ったより良いやつなのかもしれない。

 俺のことを周りに言いふらさなかったし、今も、自分の姪のために自分の全てを捧げようとしてる。


「マテオ。顔を上げてくれ」


 彼女がゆっくりとこちらを見やる。

 俺はしゃがみ込み、持っていた金や権利書を、全て彼女の手に握らせた。


「これは受け取れない」

「そんな……! どうして? 額が少ないから……?」


「そうじゃない。これは……おまえの大事な物なんだろ?」


 姪も、そして……自分の店も。


「あんたが身売りしたら、リンリンはどうする? あの子の親は、もうこの世に居ないんだろ?」

「!? ど、どうしてそれを……?」


「姪のために、身売りまでしようとしたのが、気になってね」


 それに謝罪に来るなら当事者リンリンの親も来るだろうからな。

 

「……さすが大魔導士。何でもお見通しってことか。……あんたの言うとおり、リンリンは亡くなった姉さんの宝物なんだ」

「そっか……」


「店も、姉さんの店さ。だから……ほんとは、手放したくなくて……だから……」


 泣いてるマテオの頭に、俺は手を置く。

「やっぱり金は受け取れないよ」

「でも……それじゃ申し訳なさすぎて……」


「リンリンを助けたのは、確かにマテオの依頼があったからだけど、でも実行したのは俺の意思だ。それでケガしようがしにかけようが、俺の責任だよ」


 俺がやりたくてやったことなんだから、それでどうなろうと、俺に責任がある。


「それに……今の俺は大魔導士アベル・キャスターじゃない。【ただの】ベルだ。そんな馬鹿でかい慰謝料を払わないといけない相手じゃないよ」


 マテオが涙を浮かべて、何度も頭を下げる。


「ありがとう……ベルさん……ありがとう……」


 マテオは自分の店、そして愛する姪のもとを去らなくてもよくなって、うれしくて涙を流してるのだろう。


「感謝したいのはこっちのほうさ。おまえの依頼があったおかげで、俺は……」


 するとマテオは俺に抱きついて、そして……キスしてきた。

 ……………………は?


「ベルさん……あんた今独身だろ?」

「あ、ああ……そうだけど……」


 今このタイミングで聞くことなんだろうか……?

 するとマテオは頬を赤らめたあと、こんなことを言ってきた。


「うち……ベルさんのこと、好きになったみたい……」


 ……何を急に言い出すかと思ったら……。


「おっさんをからかうなよ」

「冗談じゃないよ! 本気さ! うちは……あんたのこと、いっとう好きになったんだ……! あんたのためなら、人生全て捧げてもいい!」


「落ち着けって……」

「うちじゃ駄目かい? おっぱいもほら、結構おっきいし! こうみえて王立魔法学園を首席で卒業してるんだよ!」


 ……どうやらこの子、結構凄いやつなのかもしれない。

 いや、だとしても……だ。


「とりあえず、落ち着けって。な? 俺もさ、昨日色々あって、ただでさえ混乱してるんだ」


 突然からだが軽くなった原因とか。

 魔法を使っても死ななかった理由とか。


「じゃあうちが話し相手になるよ! 人と話すことで、情報が整理されるだろう?」


 確かにそうかもしれない……。

 知らない相手に秘密をうち開けることはできないが……。


 この子は口が硬いし、信頼が置ける。

 

「じゃあ……ちょっとお願いしてもいいかな?」

「うん! 喜んで! ダーリン♡」

「……とりあえず、ダーリンはやめてくれ」

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ハートマークとかつけられていると途端に読むのが苦しくなるのでそういうものを必要としない表現の方がよかった
[気になる点] なぜ全財産。オドを使ったのはベルの勝手。姪を助けるためでもないし、だいたい「オドを使った」ことを気づかないことにすれば(普通は気づかないようだし)。「姪を助けるために魔術師として死んだ…
[一言] 展開早!!www
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