49.高難度技術を簡単に習得させてしまう
モンバたち、街の自警団を鍛えることになった俺。
場所は、奈落の森。
どうやら俺の使っていた、魔力操作というのは、とても高等な技術、なのか?
【解:魔力操作の習得難易度は、A。上級魔法を習得するのと同じ難易度となります。魔力操作を身に着けることが、一流冒険者、英雄と呼ばれるようになるための最低条件となります】
……ってことらしい。
「これ、そんな高等テクだったのか……」
一流や英雄になるための必須条件とはな……。
「俺、呼吸するように使えてたんだが。ティアも結構簡単に会得したし、てっきり魔法職の必須テクかと」
「ベルさんもティアも、この世界では上澄みだってこと、ちゃんと理解してほしいね!」
マテオがぷりぷりと怒っている。
「でも、じゃあおれらは身に着けるのむずいっすかね。兄貴レベルじゃないと使えないなんて」
モンバが悔しそうに言う。
自分にはできない、と思って落ち込んでいるんだろう。ちょっとかわいそうだ、やる前からお前にはできない、なんていわれるなんてな。
「俺が考えた、訓練方法があるんだ。よければ、試してみないか?」
それでティアがすぐに魔力撃覚えられたしな。
まあティアが凄いやつなのは否定しないけど、でも、他のやつでもできると俺は思う。
「ぜひ!」
「よし。じゃあ、モンバ。手を出してくれ」
「はいっす!」
モンバの手を取る。
「何するんだい? ベルさん」
「今から、モンバの体に魔力を流す」
「魔力を流す?」
「魔力操作で一番つまづくのは、魔力を流すって感覚が理解できない、ってことだと思うんだ。だから、外部から魔力を流す。そうすることで、感覚をまずは把握させるんだ」
「な、なるほど……。なんとなく理屈はわかったよ。でも、そんなことで、簡単に習得……」
「できたっすぅ!」
「えええええええ!?」
ごうごう! とモンバの体から魔力があふれ出ている。
「兄貴に魔力を流してもらったら、おれも自分で魔力を流せるようになったっす!」
「なんだって!?」
やっぱり俺の訓練方法は間違いじゃなかったようだ。
ほかの自警団の子らにも、魔力を流す。
「できたぁ!」「うぉお! これが魔力を流す感覚ぅ!」「あんだ案外簡単じゃーん!」
俺の訓練法を試した結果、全員が、魔力操作を習得した。
「す、すごすぎるよ……! ベルさん。習得難易度Aの高等テクを、一発で習得させるなんて! しかも、こんな訓練方法、魔法教本にも書いてなかったよ!」
魔力を流す。ただそれだけで、魔力操作を覚えられるなんて。
「でもさ、マテオ。誰でもこれくらいは、考えつくと思うんだがな?」
「そう……さね」
「どう思う?」
「うう……わからないよ! 教えなよ、全知全能!」
【解;女房(笑)】
「ベルさん! 燃やそう! この全知全能の書! 燃やそう!」
「お、落ち着けって……」
それに燃やしても多分、また出てくると思うんだよな。
これスキルが具現化したものだし。
【解:魔力を流す訓練法は、アベル・キャスターにしかできない】
「どうしてだ?」
【解:一定以上の高い出力で、魔力を流さないと、魔力を操作する感覚を身に付けることができない】
つまり……このやり方で魔力操作を覚えさせるためには、ただ魔力を流せばいってわけじゃない。
ある程度、強めに魔力を他人に流せるやつがならないと、修得不可能ってことか。
【是:今の世界で、高い魔力出力を持つのは、アベル・キャスターただひとり】
だから俺にしかできないってわけなんだな。
「やっぱベルさん……凄いね。ベルさんとキスすれば女は強くなるし、このやりかたで簡単に超高等テクが身につくなんてさ。こんな凄い師匠、他にいないよ」
「さすがっす兄貴ぃ!」
ううん、まさか俺にこんないろんなことができるとはな。知らなかったな。
【問:誰のおかげ?】
……問いかけてきやがった。
【問:誰のおかげ?】
「ベルさん、この女ムカつくわ……」
「いや、女って。スキルに性別ないだろ?」
【是:願望を強いて言えば雌性体】
願望!?
「自我のあるスキルなんて聞いたことないよ……。これもベルさんの影響によるものなのかね?」
【是:全知全能は賢神アベル・キャスターが生み出した固有エクストラスキル。彼の資質、思いが、スキル発現に関わっている】
なんか難しいが、俺が全知全能を生み出したってことらしい。
【是:ダーリン♡】
ダーリン!?
「ベルさんに女が増えるのはいいけど、アタシ、こいつだけは嫌だわ……」
「なんでだよ?」
【解:今までデカいツラして知識をひけらかしていたけど、全知全能がいるとそれができなくなるから】
「こういうのが嫌なんだよ!!!!」
俺はマテオを鎮める。
「く、訓練の途中だったな。魔力操作ができれば、あとは簡単に魔力撃が使えるようになるよ」
「ほんとっすか!?」
俺はうなずいて右手を前に突き出す。
「ベルさん、また森を消し飛ばしたいのかい?」
「そ、そうだな……」
「ふふん。やっぱりベルさんには、しっかりした女房がいないとねえ。質問に答えることしかできない、欠陥品じゃ役不足だね」
【否:アベル・キャスターの役に立っている。また、その役不足は誤用】
またマテオが全知全能とバチバチしだした……。
ていうか、全知全能って言いにくいな。
別の呼び名とか着けるかな……。
【是非】
是非!?
やっぱり自我がおありのようだ……。
「その前に……っと。魔力撃で森を破壊しないように……。【錬成】」
俺は地面に手を置いて、土魔法【錬成】を使用する。
■錬成
→初級土魔法。周辺の鉱物の形を変えたり、加工したりできる。
ずずずずずず……!
「兄貴の目の前に、でっけえ壁が出現したっす!」
「錬成の魔法だ。地面の形を変形したり、硬くしたりできる。この壁に向かって魔力撃を撃てば、森に被害がでないだろ?」
俺は錬成で作った壁に向かって、魔力撃を放つ。
ドがぁんっ……!
大きな音がするも、しかし壁はびくともしない。
ひび割れすらしていなかった。
「よし訓練を……」
「ちょ、ちょっと! ベルさんストップすとぉおおおっぷ!」
マテオが待ったをかけてきた。
「どうした?」
「いやどうしたじゃないよ! 何この壁!? ベルさんのヤバい威力の魔力撃を受けて、ひび割れ一つ起きてないじゃないかい! 変だよ、変!」
変って言われても……。
「ただの錬成で作った壁だけど? これでよく、敵の攻撃を防いでた」
結界の構築(ゼロから作り出す)より、周辺の鉱物(土)から、壁を作る錬成のほうが、使い勝手がいいんだよな。
素早く作れるし。
「ベルさん……今これ、鑑定してみたんだけど……。神威鉄だよ!」
「神威鉄……?」
【解:神威鉄。この世で最も硬い鉱物です。古竜の全力の体当たりや、ドラゴンブレスを受けてもびくともしません】
鑑定の文章よりも、わかりやすいな。
時折鑑定の文章って、何言ってるのかわからないときがあるからな。
【解:全知全能は、鑑定と違って、使い手の知能にあわせた解説が可能です】
す、すごいな全知全能……。
【(@^▽^@)】
なんだこれ!? ついに変な文字まで、本に出てくるようになったぞ!?
「と、とにかくこの壁に向かってみんな、魔力撃を撃つように。目標は、魔力がからになって倒れるまで!」
「「「はい!」」」
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