44.本契約して第三職業を得る
【☆★おしらせ★☆】
あとがきに、
とても大切なお知らせが書いてあります。
最後まで読んでくださると嬉しいです。
青月草を買い取った国王たちは、転移門を通って王都へ帰っていった。
その日の夜、俺はマテオの家にいた。
新しくなったマテオの家に、俺と弟子たちが暮らしてるのだ。
家にはいくつも部屋があり、そのうちの一つを使っている。
俺が自分の部屋で横になっていると……。
コンコン。
『ベルさん、ちょっといいかい?』
「マテオ? いいぞ」
こんな夜更けにどうしたんだろうか?
ドアが開いて、そこには、マテオがいた。
ただし、彼女はネグリジェ一枚姿で立っていた。
「おまえ……なんだよその恰好」
薄い、エメラルドの生地のネグリジェだ。
大きな胸、くびれた腰、そして足の間の三角地帯。
ほぼ全裸のような、扇情的な恰好をしてた。
「お前何してんだよ……」
「……ご奉仕」
「はぁ? なんだそりゃ……」
マテオが顔を真っ赤にしながら、俺のそばまでやってくる。
「今日、ベルさんに、たくさんよくしてもらっただろ?」
「なんのことだよ?」
「青月草の人工栽培関連……」
ああ、それか。
櫛形山の山頂でしか咲かない青月草。
それをわざわざ山頂へ行かずに、取りに行けるようにした。
その結果、国王と取引して、莫大な利益をマテオは得た。
そのお礼をしたいってことか。
「気にすんな。お礼されるほどのことじゃ……って、マテオ!?」
彼女がボロボロと、泣き出したのだ。
い、いったいどうしたことだろうか……?
「お、俺お前を泣かせるようなことしたか?」
「……あた、アタシのこと……嫌いなんだって思って……」
「はぁ? ちょ、ちょっと待て……落ち着けよ……な?」
女と付き合ったことないから、こういう時どうすりゃいいのかわからん……。
とりあえず気持ちが落ち着くのを待ってみた。その間、彼女の頭をなでる。
「……子ども扱いしないでよ」
「俺から見りゃ、おまえなんてまだガキだよ」
「成人とっくにしてるし」
「10も離れてりゃ子供だよ」
マテオが「そっか……」と残念そうにつぶやく。
「ねえ、ベルさん。どうすれば、ベルさんに報えるかな?」
「報えるっておまえ……」
「だって、あんたは、凄いことしてくれたんだ。一族がどれだけ頑張っても、なしえなかった人工栽培を成功させた。……ねえ、それってなんで? どうしてそこまでしてくれたの?」
……それは。
「おまえのため、だよ」
「だったら……」
「でも、別にこのことで何か返して欲しいわけじゃないよ」
マテオが不思議そうに俺を見てくる。
……こいつこそ、わかってないんだ。
俺が、彼女にどれだけ助けられてるかってことを。
「俺はここに来てからずっと、おまえに世話になりっぱなしだ。恩を感じてるのは俺のほうなんだよ」
メシの支度だけじゃない、精神的にも、彼女に支えてもらってるばかりだ。
「俺はおまえに、カリ(借り)がありすぎる。だから……」
マテオが、悲しそうな顔をした。
どうしてそんな顔をするんだろう。
……そんな顔を見ていると、胸がしめつけられる。
どうすれば笑ってくれるだろうか……。
「アタシ、さ。ベルさんのこと……なんか、思ってる以上に、好き……だ」
マテオが恥ずかしそうにつぶやく。
耳まで真っ赤で、声が震えている。
……緊張が伝わってくる。
それほど本気、ってことだろう。
「ベルさんが好き。ベルさんになら何されてもいいっていったの、本気だよ。アタシの全てを、あなたにあげたい。あなたのものになりたい」
「マテオ……」
俺のこと、本気で好きなのか……。
「ベルさんが青月草の人工栽培成功させたのも、アタシのこと……好きだからかなって……思い上がりかも知れないけど、そう思ってさ。すごく……すっごく……嬉しかったんだ」
「…………」
あんなことした動機。
それは、確実に、マテオのタメになるだろうと思ってやったことだ。
「ねえ……ベルさん。アタシ、あなたが好き。アタシの恋人になってくれない? ……それがイヤなら、奴隷にでも……」
「それは、イヤだ」
俺はマテオの体を抱きしめる。
……柔らかく、温かい。
それでいて、なんて、細い体をしているんだろう。
……こんな細い体ひとつで、この街を守ってきたのだと思うと、尊敬する。
「俺は……おまえに側に居て欲しいよ」
「ベルさん……」
やっと、俺は気づいた。
俺がなぜ、彼女のためにあれこれやっていたのか。
最初は、借りを返すとか、そういう気持ちだった。
でも、次第に自分の気持ちに変化が生じていた。
好きなんだってさ。
でも、あいては若い子だ。こんなおじさんなんか、好きになるわけない。
だから、自分の気持ちを偽った……拒まれたくないから。
「マテオ。おまえさえよければ、俺の……側にいてほしい」
「…………うれしい」
マテオがぽろぽろと涙をながす。
でもさっきより、見ていて嫌な気分にはならない。
なぜなら、凄く嬉しそうにしていたから。
「ベルさん……好き……。あなたを愛してます」
「俺もだよ……マテオ」
俺はマテオと唇を重ねる。
そして……そのまま、体を重ねたのだった。
★
その日の深夜。
ふと、俺は自分のステータスに変化が生じてることに気づいた。
「なんだこりゃ……」
「どうしたんだい?」
全裸の美女が俺の隣で横になっている。
こんな、極上の美女が俺のものだなんてな……って、今はそれどころじゃ無くて。
「俺の職業が、増えてる……」
「なんだって!?」
■職業一覧
・大勇者
・辺境領主
・薬師
「第三職業!? う、う、嘘だろ!?」
マテオが本気でびっくりしていた。起き上がって、俺の窓をまじまじとみやる。
目のやり場に困るな……。その、胸が揺れて。
まあさっきさんざんブルブルさせたあとだが……。
「信じられないよ……第三職業なんて、前代未聞さね」
「たしか、マックスで第二までなんだっけか?」
「ああ。三つも持ってるやつなんて、聞いたことないよ……歴史上類を見ないほどの、すごいことさね」
マジか……。
しかし、なんで三つ目ができたんだ……?
「もしかして、本契約したからかもね」
「本契約……?」
「ほら、魔法使いの従者契約だよ。キスで仮契約。セックスで、本契約になるんだ。常識だろ?」
知らない……。
って、そうか。
マテオとは従者契約結んでなかったな。
「なるほど……。キスによる仮契約は、相手を進化させる。セックスによる本契約は、ベルさん自体を進化させるわけか。で、アタシの職業を得たと」
つまり、セックスすると、女性の職業を手に入れられる……ってことか。
「すごいね。じゃあ第四、第五もすぐさねこれ」
「ちょっと待て、まだ増えるのか?」
「そりゃほら、ベルさん大好きな人いっぱいいるし」
思い当たるやつらは何人かいるが……。
「おまえはいいのかよ?」
「もちろん♡ 多い方がうれしいよ♡」
「そうか……」
まあ、何はともあれ、俺に恋人ができた。
と、同時に第三の職業を得るという、前代未聞なことをしてしまったのだった。
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