43.希少な魔除けアイテムを大量生産する
新しいスキル、地方移住により、王都とミョーコゥをつなぐ転移門ができた。
転移門をくぐり、姫騎士ワイズマンと、国王が、街へとやってきていた。
俺たちは街中を歩く。
「まってまって~」「きゃはは! はやくこいよぅ~」
子供たちが街の中で追いかけっこしてる。
その様子を見て、国王が感心したように言う。
「すごいな、大魔導士よ」
「急にどうしたんですか、陛下?」
「この街のなかは、実に平和だ。奈落の森、櫛形山、二つの危険地帯に挟まれている土地とは、とても思えない。街の人たちが生活できるのは、おぬしがいるからであろう?」
「いや、俺は別に何も……」
「ワイズマンから聞いておるぞ。あの立派な外壁は、おぬしのすごいスキルで作られたと」
どうやら娘経由で、あの外壁が作られたときのエピソードは語られてるようだ。
「それだけでない、おぬしのような世界最高の魔法使いが、この街にいるのだ。みなの精神的な支柱となっているのは、容易に想像できる。さすがじゃ」
「そうそう、ベルさんのおかげでみんな幸せに暮らせてるんだよ♡」
マテオが笑顔で言う。
俺はそれを聞いて、ちょっと訂正しておきたかった。
「いえ、陛下。ここが平和なのは、俺だけのおかげじゃありません。マテオの功績も大きいです」
「ほぅ、彼女の?」
「はい。彼女は魔物が避ける特別な匂い袋を作れるのです。それを街の外に設置してあるおかげで、この街の安全は今までずっと保たれていたのですよ」
「なんと!? それは……すごい」
するとマテオが俺の肩をたたく。
「ちょ、ちょいとベルさん。別に言う必要ないでしょ……この街が平和なのは、あんたのおかげだし……」
どうやら褒められて、照れているようだ。
可愛いところもあるんだな
しかし俺だけのおかげでは、決してない。
彼女の手柄を取るわけにはいかなかった。俺は知っているから。彼女たち一族が、この街をずっと守ってきたことを。
「おまえらの努力は、ちゃんと評価されるべきだよ」
「ベルさん……」
彼女はうつむいて、「ありがと……」と小さくつぶやく。
国王はマテオに尋ねる。
「よければ、その匂い袋を見せてもらえないだろうか?」
ということで、俺たちは街の外に出て、櫛形山の入口までやってきた。
近くの木の枝には、青い布の袋がくくりつけられてる。
マテオは匂い袋を手に取って、国王に見せる。
「この近辺、魔物の気配がまるでせん。なるほど、この魔除けのおかげなのだな。薬師よ。この魔除けの匂い袋、量産することはできぬだろうか? これがあれば、民たちはより安全な生活を送ることができる」
王都の周りにも魔物がうろついてる。(ミョーコゥほどじゃないがな)
匂い袋があれば確かに、王都の守りはより強固なものになるだろう。
また、これを首からぶらさげておけば、森や山の中を安全に進むことができる。
量産したい、という国王の考えは理解できた。
「陛下、それは無理でございます」
マテオが申し訳なさそうに言う。
「製法は一族の秘伝だからか? だとしたら、すまなかったな。なに、無理強いはせぬよ」
無理やり製法を聞き出すみたいなことをしない。
ほんと、良い人だよな、この人。
「いえ、陛下。製法は秘伝ではございません。そんなに作るのは難しくありませんゆえ」
「ふむ……どういうことじゃ?」
作るのは難しくないのに、量産はできないという。
「材料が希少なのか?」
「そのとおり、さすがベルさん。勘がいいね」
マテオが匂い袋から、1本の乾燥させた、青い花を取り出した。
「これは【青月草】って言う」
「青月草……」
枯れているが、青く、美しい花弁が特徴的だ。
かすかに、魔力を帯びている。
「青月草はとても希少な花なのさ。なにせ、櫛形山の山頂にしか咲かないうえ、一年間で数日だけ、しかも、夜の間にしか咲かないのさ」
「なんだそりゃ……条件厳しすぎるだろ」
「だから言っただろう? 希少だって」
……というか、こいつ、夜の櫛形山まで、一人でずっと取りに行っていたのか。
みんなのために。ほんと……大した女だよ。
「平地で栽培はできないのかの?」
「ケミスト一族が何度も挑戦しました。ですが、人工栽培は100%無理、という結論が出ております」
どうやら櫛形山の山頂、という特殊な場所でしか咲かない花であるらしい。
「大変だな取りに行くの」
「まあね。でももう慣れたさ」
……とはいえ、か弱い女の子をひとりで、山の中、しかも、夜中歩かせるわけにはいかない。
「俺が転移で、おまえを連れてくよ。そうすれば」
「残念だけど、青月草はとても繊細な花でね、近くで魔法を使うと、枯れてしまうんだ」
となると転移魔法も無理だし、飛行魔法で飛んで行っても無理か。
近くまで転移して、そこから徒歩で……。
いや、それも手間か。
なんとかできないだろうか。
「アベル様なら、人工栽培できるのではないでしょうかっ? なにせ、神のごとき力をお持ちなのですから!」
転移門を作ってから、ワイズマンのなかで、俺=神みたいな扱いになってるらしい。
いやまあ、確かにすごい力はあるが……。
「さすがにベルさんにもできることとできないことくらいあるよ。神さまじゃないんだしさ。だからあんま頼りすぎちゃだめさね」
……ああ、ったく。
こいつはまた、俺に負担をかけまいとしてくれている。
本当にいい女だ。
……口には出さないが、多分青月草をとりにいくのは、かなり労力がいる作業なのだろう。
その苦労を表に出さないどころか、俺への気遣いまでしてくれる。
良いやつだ。
だからこそ……なんとかしてやりたい。彼女の負担を、少なくしてやれないだろうか……。
神の力、か。
第二の職業
辺境領主。
固有スキル、地方創生。
これは、領民が増えれば、作れるものも増えると書いてあった。
……! そうか。辺境伯となって、土地を与えられた今なら……!
スキル、地方創生を発動。
作れるもの一覧が、案の定、増えていた。
一覧を見ていくと、そこには……目当てのものがあった。
「ベルさん? なにするんだい?」
「地方創生スキルを使う」
「何を作るんさね?」
俺はスキルを発動。
すると、目の前に……青い花が突如として出現した。
「なっ!? な、こ、これは……! そ、青月草!?」
一面に、青月草が咲き誇っている。
「し、信じられないさね! 櫛形山山頂にしか生えないし、夜の間しか咲かない花が! こんな、山のふもとの、昼間っから咲くなんて! ありえないよ!」
「ふむ……大魔導士よ。どういうことだこれは?」
国王に、俺が説明する。
「地方創生で、【花壇】を作ったのです」
「ふむ……花壇……?」
「はい。このスキルは領民が増えると、作れるモノが増えます。作成一覧のなかに花壇がありました」
「なるほど……しかし、青月草がピンポイントで生えてきてる理由は?」
「畑を作ったとき、イメージした果実ができたことを思い出したんです」
スキルで作れるものは、イメージすることで変えられると気づいたのだ。
だから、青月草の咲く花壇をイメージしてみた。
結果はご覧の通りだ。
「しかも……ベルさん。これ……すごいよ! 普通の青月草よりも、品質が何倍も上さね!」
■最高品質の青月草(SSS)
→魔除けの花と呼ばれる青月草なかでも、特に多くの魔力を吸って育った花。
魔除けの効果持続時間が通常の1000倍となる。
ただし、採取できる時間は1000分の1となる。
夜の間しか生えない青月草。
採取できる時間が1000分の1ってことは、夜のほんの一瞬でしか取れないってことか。
「信じられないよ……あたいは夢でも見てるようだ。人工栽培は無理とあたいらが判断した花を、平地で栽培し、しかも最高級品質の花をこんなに量産しちまうなんて……」
「さすが、アベル様ですわ!」
マテオが戸惑いながら俺に尋ねる。
「ねえ、ベルさん。青月草、人工栽培してくれたのって……もしかして……」
「ああ、いつも頑張ってる、おまえのためだよ」
「ベルさん……!」
彼女は子供のように、わんわんと大泣きし出した。
やっぱり辛かったんだな、取りに行くの。
「もう大丈夫だ。これからはそんな苦労しなくていいんだよ」
「ありがとう……ベルさん……大好き♡」
一方、国王は感服したようにうなずいて言う。
「見事だ、大魔導士よ。そして、薬師よ。この魔除けを定期的に王都へ届けて欲しい。報酬ははずもう」
国王が提示したのは、耳を疑いたくなるほどの、莫大な金額だった。
「い、いいんですかい……?」
「ああ。この魔除けは、すごいものだ。そしてその量産を実現させた大魔導士は、もっと凄い。この代金は、大魔導士への報酬込みじゃ。礼を言うぞ」
マテオの匂い袋がすごいんだが、なぜか俺まで評価されてしまった。
「ありがたき幸せ。ですが……一番凄いのはこれを開発し、街を守ってきた、マテオたちケミスト一族ですよ」
「べ、ベルさん……♡ 好き! もう抱いて! めちゃくちゃにして!」
人前でそんなふうに抱きつかれて、さすがの俺も照れてしまうのだった。
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