40.二体目の魔族もワンパン「魔族弱くね?」
ミョーコゥのはずれ、奈落の森にて。
ソニックとか言う魔族が攻めてきた。
「さ、ベルさん……帰って魔族のお勉強を……」
俺はトンッ……! とマテオを突き飛ばす。
「ベルさん!?」
マテオの代わりに、俺が【被弾する】。
ごぉお! と俺の左腕が突如として燃えだしたのだ。
左腕を包むのは、黒い炎だ。
じゅうじゅうと、俺の腕が炎で焼かれている。
「アベルさん! か、回復します!」
ティアが慌てて回復の魔法を、そしてマテオが俺の腕に薬をかける。
だが、二人の治癒を受けても、炎は消えることは無かった。
「うひゅひゅ! 無駄ですよぉ……その黒い炎は、決して消すことが出来ないのですからぁ」
「誰だ?」
俺は、後ろを振り返る。
そこには、さっきのソニック同様、頭に角を生やした男が立っていた。
黒いぼろ布を纏ったそいつは、顔にやっぱり1本の痣が走っている。
だがソニックとは痣の形が違った。
「魔族だな?」
「そんな! 二体も魔族がいるなんて!?」
ティアが驚いている。
「おや、あなたは驚かないのですか?」
「まあな」
ソニックと同様の気配(魔力が感じられないというやつ)を、近くに感知していたからな。
「うひゅひゅ! たいした感知能力と魔力量……だが所詮はサル。その莫大な量の魔力を持ちながらも、魔法に関する知識、そして技量は未成熟。恐るるに足らず!」
青い顔をしたティアが「す、すぐに応援を……」と言う。
だが、マテオがその肩をとめた。
……どうやら彼女は、俺の【意図】に気づいたようだな。
「おまえたち……魔族ってなんなんだ? こんな【凄い魔法】使うなんて」
「うひゅ! 冥土の土産におしえてやろう!」
多分俺に魔法を当てて、気が大きくなっているのだろう。
魔族は饒舌に語り出す。
「まず、このおれは男爵級魔族がひとり、【黒炎のフレイム】! 魔族とは、魔神復活より遥か昔存在した、高い魔法の力を持つ一族だ!」
「そんなの聞いたことなかったぞ?」
「さもありなん。大昔、世界征服を企む魔王様と、その配下である大勢の魔族は、いにしえの大賢者によって死においやられたからな」
なるほど。
昔は凄い魔法の使い手(魔王と魔族)たちがいたが、いにしえの大賢者とやらに破れて絶滅に瀕していたのか。
でも、生き残りがいたわけか。
「長く辛い屈辱の日々ももうお仕舞い……新たなる魔王様のもと! 魔族はよみがえるのだ!」
「新しい魔王……か」
「そうだ!」
「俺を狙ったのはどういうことなんだ?」
「我ら魔族の野望の妨げになる唯一の存在、それが、【大賢者】だからな。今代の大賢者がどの程度の実力があるのか、我らが見極めに来た、というわけだ」
ソニックとフレイムは、先遣部隊だったってわけか。
じゅうぅうう……。
「くっ……駄目です……どれだけ治癒を施しても、炎によるダメージを軽減すらできません……」
ティアが頑張って俺のことを治癒しようとしてくれている。
……なんか【申し訳ない】な。
「うひゅひゅー! 無駄無駄ぁ! おれの固有魔法【黒炎】! 黒い炎は絶対に消せないし、それによっておったダメージは決して癒やせない!」
「そ、そんな……じゃあ……アベルさんは……」
「うひゅひゅ! いずれその黒い炎が全身にまわり、痛みにのたうち回りながら死ぬがいい! うひゅーーーーーー!」
なるほどな……。
「魔族ってやつのこと、よくわかったよ。姑息で、最低な、馬鹿野郎の集団ってことはな」
「バカ……だとぉ?」
「ああ、なんだ。気づいていないのか」
「!? お、おまえ」
ふるふる……と震えながら、フレイムが俺の左腕を指さす。
「どうして、炎が全身を回っていないのだ!?」
そう……。
やつの黒い炎は、俺の左腕だけを燃やしてる。
全身に広がること無く……だ。
「フレイムとやら。あんたはベルさんの嘘に、まんまとひっかかったんだよ」
俺の意図に気づいていたマテオが、ため息交じりに言う。
「嘘だとぉ!?」
「ベルさんはあんたから情報を引き出すため、あえて攻撃を受けたのさ」
こいつの気配はわかっていた。
でも、避けなかった。
攻撃を受けることで、相手に精神的な余裕をもたせ、敵から情報を引き出す。
冒険者時代に覚えた、かけひきの技術だ。
「人は、自分が勝ってるって思ってるときが、一番よくしゃべるからな」
「う、うぐぐう……だ、だが! おれの優位に代わりはない! 事実、おまえはおれの黒炎が広がるのを防ぐのに精一杯じゃないか!」
精一杯……?
何を言ってるんだろうか。
「解析はとっくに完了してる。反魔法」
パキィイイイイイイイイイイイイイイイン!
「なにぃいい!? 黒炎が、消えただとぉお!? 馬鹿な! 絶対に消えぬ炎が、何故消えるぅうううう!?」
すぐさまティアが俺の腕を治癒してくれる。
さすがティアの治癒術だ、火傷の跡一つ残っていない。
「絶対に消えない炎とはいえ、それは魔法だろう? なら、反魔法で打ち消すことができる」
魔法には固有の魔力の波形が存在する。
それと逆位相の魔力をぶち当てることで、魔法を打ち消す技術。
それが……反魔法。
「イキがってたわりに、魔族もたいしたことないな。ソニックもおまえも、所詮、自信の源は魔力量と魔法だけだ」
魔神のように、未知なる技術、力で襲いかかってくるのではない相手。
恐るるに足りない。
「きっとそのいにしえの大賢者とかいうやつも、おまえらのこと、たいした脅威と思ってなかったんじゃないか?」
「うぐぐうぐううぅうう! こ、こうなったらぁ……!」
ボッ……! と黒炎を目の前に放つ。
激しく炎が立ち上る。
「目くらましか! くそ! 逃げられる!」
「逃がすと思うか?」
ばきぃん!
「うひゅ!? な、なんだぁ!?」
逃げようとしていたフレイムの行く手が、何かに阻まれている。
周囲に、巨大な結界が形成されていた。
「こ、これは結界!? いつの間に!?」
「おまえがぺちゃくちゃと調子に乗って喋ってるときにだよ」
俺がフレイムの元へ向かう。
「ソニックと戦っているとき、おまえは姿を消していた。俺に黒炎をあてて、ようやく姿を現した。そこから、おまえが卑怯者であることは容易に想像できた。だから、先に逃げ道を塞いでおいたのさ」
「さすがアベルさん! 未知の攻撃を受けながら、こんなに冷静に、策を講じてるだなんて!」
ティアには悪いことをしてしまった。
彼女までだましてしまったのだから。
「く、くそ! だが、まだおれが! 魔族の魔法が負けたわけではない! 戦闘経験に差があるだけだ!」
「魔族の魔法……ね」
「そうだ! 黒い炎など、人間ではだすことができないだろ!」
「できるけど。ほら」
ボッ……!
「なにぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!」
俺の左手から、黒い炎が出ている。
「馬鹿な馬鹿な馬鹿な!? 魔族の魔法だぞ!? 人間が使えるわけがない!」
「だから、魔族のだろうがなんだろうが、所詮魔法だろ?」
そうか! とティアが何かに気づいたように言う。
「アベルさんは、一度見た魔法なら全てコピーできるんでしたね!」
「ああ。どんな魔法も一度見ればだいたいコピーできる。二度見れば盤石。一度魔法を受ければ、その一度で自分のものにできる」
愕然とした表情のフレイム……。
と、マテオ。
「あいかわらず、ベルさんの魔法のセンス半端ないね……。人間レベル超えてるよ」
「そうか。これくらいなら……魔族でも出来ると思ったんだが」
フレイムもまた驚いてるところから、これも普通のことではないらしいな。
「魔族って、たいしたことないな」
そもそも大昔に、人間(大賢者)に破れているもんな。
「あ、あははははぁ!! は、はったりだぁ! その炎! 見せかけだけの炎だろぉお! おれの黒炎は、誰にもマネできないんだぁ!」
フレイムが俺に飛びかかってくる。
……というか、自分から、俺の炎にあたりに来やがった。
「うぎゃぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
フレイムの全身を黒い炎が包み込む。
「あつぅぃいいいいい! これはまさしくおれの黒炎ぅううううううう! いや、それ以上の出力ぅうううう!」
「あーあー、動くな。今消してやるから。おまえからは情報を引き出さないといけないんだから……」
「なんという強さ……ばけもの……めぇえ……」
「え?」
モノの数秒で、フレイムは消し炭になってしまった。
あ、ありゃ……?
「おまえ……弱すぎだろ……。俺だっておまえの炎、1分くらいは耐えて見せたぞ?」
それが秒で死ぬって……。
「すごいね、ベルさん。魔族を立て続けに倒しちまうなんて!」
「すごいか……?」
なんか勝手に自滅しただけのようなきがするんだが、こいつ……?
一体目もたいしたことなかったし。
「しかし魔王の復活……か。かなり危ない状況さね」
「そうかなぁ?」
「……ま、人類の宝であるベルさんがいれば問題ないか」
「さすがです、アベルさんっ!」
こうして魔族コンビを、俺は瞬殺して見せたのだった。
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