38.倍速農業
魔力を測ったつもりが、なぜか温泉を作ってしまった……。
その後、キムズカジーに公衆浴場として、建物を作ってもらうことになった。
ほんと、彼がいてたすかったよ……。
現状、スキル地方創生では、建物は作れないからな。
「で、次は奈落の森に来たわけだけど、何するんだい……?」
弟子少女たちは、櫛形山へ魔物を狩りに行ってる。
街の連中にも、危ないから付いてくるなと厳命。
俺、マテオ、そしてワイズマンの三人は、奈落の森の入り口へとやってきていた。
「力の検証だ。まだ作ってないのが、あと二つあるからな」
果樹園、そして畑。
どちらもスキルで作れるものではないと思うんだが……。
とりあえずやってみよう。
「【畑】、創生」
しーん……。
「あれ?」
「畑が作られませんわね」
さっき井戸を作ったのと、同じ要領で、スキルを使用したはずなんだが……
「魔力切れ……ってことはなさそうさね。あんな人外じみた魔力量もってるんだし」
さっき井戸のところで調べたところ、異次元レベルの魔力があると判明したばかりだ。
「もう一度やってみる。畑……創生」
しーん……。
やはり発動しない。スキルの不発でもない……そうなると……。
「もしかして、木が邪魔なのかもね」
と、マテオが言う。
邪魔……そうか。
「畑を作るには、なにもないスペースがいるわけか」
「でも、どうしますの、アベル様。この辺木がたくさん生えて……」
俺が右手を前に出す。
ぼこ……ぼこ……と木々が地面から引き抜かれて、宙に浮かぶ。
「! これは……アベル様の重力魔法!」
「いやぁ、ベルさんがいるとたすかるよ。土地を広げるのも、あんたがいれば楽勝だね」
魔法の力が、こんなふうに人のためになるのは、嬉しいばかりだ。
俺は今までずっと、魔法は魔物を倒すための力だとばかり思っていたからな。
ややあって。
木を引き抜いて広いスペースを作った。
「畑、創生!」
するとぼんっ、という煙とともに、耕された土地が出現した。
「すごいねこりゃ! こんな肥沃な畑をつくっちまうなんて……!」
マテオは畑の中に入り、土をいじりながら言う。
後ろから、ワイズマンが尋ねる。
「マテオさん、わかるんですか、土の質なんて」
「ああ、わかるさ。なにせ、ベルさんからスキルを貸してもらってるからね」
「!? す、スキルの……貸与!? なんですのそれは!?」
俺には技能貸与という、スキルがあることを説明する。
ふるふる……とワイズマンが体を震わせる。
「すごいですわ……鑑定スキルは、だれもがうらやむ超レアスキル。アベル様がいれば、そんなすごいスキルを、大勢に使えるようになるなんて!」
「まあでも、制限がないわけじゃないんだ」
「どういうことですの?」
後で調べてわかったことだが……。
「スキルを借りるためには、魔力を支払い続けないといけないみたいなんだ」
技能貸与はチートスキルなのだが、何の制限もないわけではない。
借りている期間ずっと、魔力を持っていかれる。
しかも、借りるスキルがレアであるほど、使用にかかる魔力量が多くなるのだ。
「マテオは結構魔力量多いから、俺から借りててもそんなに苦じゃなさそうだが。一般人が俺から鑑定を借りるのはむずそうだな」
「そう……残念ですわ。鑑定があれば執務に使えるかと……」
するとマテオがにまりと笑って言う。
「裏技、あるよ」
「「裏技?」」
「ああ。従者契約するのさ」
そうか。従者となれば、俺と魔力経路でつながる。
魔力を俺から供給することになるから、貸与にかかる魔力量を無視できるわけか。
「キス! ぜ、ぜ、ぜひぜひっ! アベル様の従者になりたいですわ!」
「お、おう……そうか……」
まあ鑑定スキルなんて、みんなほしいからな。
キス一つで鑑定スキル、そして職業を進化させることまでできるんだ。
安いもんだな、おっさんとキスするくらい。
マテオはさくっと、儀式の準備をした。
そしてワイズマンは照れながら俺の前に立ち、目を閉じて、顔を近づけてくる。
……改めて、こいつも美人だなって思った。
ちゅっ、と唇が重なる。
するとワイズマンの体に、大量の魔力が流れ込んでいく。
「ああ! アベル様の……熱いのが……たくさんそそがれていきますわ!」
「妙な言い方するなよ……」
このうえで、技能貸与で、俺はワイズマンに鑑定を貸す。
「どうだ?」
「はい! 最高でした! アベル様とのキス!」
「そっちじゃあない……!」
なぜキスの感想を語るのかこいつは……。
ワイズマンは鑑定スキルを試す。
畑に対して使うと、こくんとうなずいた。
「立派なトマト畑ができあがっておりますわ」
「トマト……って、え? いや、何も植えてない……」
って思っていたのだが、畑には均等に、草が生えていた。
縦にのびた茎から生えているのは、赤い実。これは……まさか……!
俺たちが近づき、実の一つを手に取る。
「と、トマトだ……」
「信じられないよ! だって種も植えてなかったじゃないかい!?」
種を蒔く作業もしてないし、仮にそれしても、野菜がすぐに生えてくることはない。
「おそらくですが、アベル様のおかげではないでしょうか?」
「どういうことだ?」
「鑑定なさってみてください」
~~~~~~
トマト畑(小)
■状態
魔力供給
成長促進(+++)
~~~~~~~
畑を鑑定したところ、俺から魔力の供給を受けていることがわかった。
「どうやら地方創生で作ったスキルは、ベルさんの魔力供給を受けるようになってるみたいだね。その影響で、成長が促進されていると」
「すごすぎますわ! 地方創生スキル! さすがアベル様ですわ!」
まさかこんなことができるとは……。
さすが神のスキル、恐ろしい。
「地方創生スキルもすごいけど、やっぱりベルさんが規格外なんだと思うよ」
「どういうことだ、マテオ?」
はぁ……とマテオがため息をつく。
「あのね、ベルさん今従者、何人いるの?」
「えっと……ティアとヒトミ、ゼーレン、そんで……ワイズマン」
描写されてなかったが、ゼーレンも俺の弟子となる際に、キスして弟子にしてるのだ。
「あのね、ベルさん。普通、従者は一人くらいが限界なんだよ」
「そうなのか?」
「そう。魔力経路をつなぐってことは、結構な量の魔力を持ってかれることになる。魔法使いからすれば、一人契約するので精一杯なのさ。でもベルさんは四人とやってもまだ平然としてる。そのうえ、スキルで作ったものにまで魔力を注ぎ込んでもまだ平気。ハッキリ言って……異常。規格外と言わざるを得ないね」
そんなにすごいことだったのか……。
「ベルさん、一度学校で魔法の常識習った方がいいかもね」
「そうだな……落ち着いたらな」
するとワイズマンが「なるほど……」と何か思いついたような表情になる。
「ここに……を……作れば……うふふふ♡」
「どうした?」
「なんでもありませんわ♡ うふふふ♡ 良いことをちょっと♡」
なんだろうか……俺からすれば、嫌な予感しかしないんだが……。
「まあ、とにかく地方創生スキルだけじゃ、このすごい畑が作れなかった。神のスキルに、はんぱない魔力量を持つベルさんが組み合わさることで、実現できたってわけさ」
「アベル様にしかできないってことですわね! さすがですわー!」
まあ、なにはともあれ、このスキルがすごいことはわかった。
これを使って、街を豊かにしていこう。
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