37.魔力測定したら測定不能をたたき出した
俺は第二職業を手に入れ、新しいスキル、【地方創生】を獲得した。
創生スキル(無から有を創り出すスキル)のひとつらしく、領地の中に施設や設備を創り出せるというもの。
領民の数で作れるものが変わるらしい。
現在作れるのは、
【創生可能なモノ一覧】
・井戸
・外壁(木製)
・外壁レンガ
・トイレ(簡易)
・畑(小)
・果樹園(小)
・牧場(小)
どれもさっきみたいに、スキル発動一発で作れるとしたら、とんでもないことだ。
「試してみるか……って、なんでついてくるんだおまえら?」
マテオをはじめとした、ミョーコゥの連中(領民)が、俺の後ろについてくる。
ちょっとした行列になっていた。見世物じゃないんだが……。
「ベルさんの起こす奇跡を、みんな見たいんじゃないかい?」
と、マテオが言うと、領民たちがうなずく。
まあ、ここの連中に隠す必要はないか、この力。
街の中央へ向かう傍ら、俺はマテオに尋ねる。
「井戸ってあるのか、この街?」
「ないよ。だから、みんな森近くの小川まで水を汲みに行くのさ」
なるほど……俺のように魔法で水を出せない連中は、毎日そんな遠くから、水を汲んできているんだな。
となると、まずは井戸を作ってみるか。力の検証もしたいことだしな。
街の中央部へとやってきた。
ここならみんな使いやすいだろう。
「さっきと同じ感じで……【井戸】、創生!」
ぱぁ! と俺の目の前に屋根付きの井戸が出現。
しかも滑車までついていた。
「何もないところから井戸が!」「す、すげええ!」「まるで神様みたい!」
おおお! とみんなが歓声を上げる。
だが、まだだ。ちゃんと井戸として使えるかどうか確かめないとな。
「木製のバケツにロープまで。至れり尽くせりさね」
マテオがバケツを、井戸の中に放り込む。
じゃぼんっ、という音がした。
マテオがロープを引くと、バケツの中には、たっぷりの水が入っていた。
どうやらちゃんと機能するようだ。
「いやいやいや……」
水どうなってんだよ? ここは街のど真ん中だぞ? この真下に水源があるのか?
首をかしげている間、領民たちが水を汲みまくっていた。
「う、うまい!」
「冷たくておいしいぃ!」
「これで危険な森までわざわざいかなくてすむのじゃ!」
わあわあ! と領民たちが歓声を上げる。
……まあ、いいか。原理は。
地方創生……創生スキルは神のスキルと言っていた。
人間に神の力を理解できるわけがない。
便利な力を授かった、そう考えよう。
「ベルさん大丈夫かい? だけどすごい力なんだ、使うのにはリスクみたいなものがあるんじゃないかい?」
言われてみれば確かに。
そう思って鑑定スキルを使用し、創生スキルを調べてみた。
「どうやら、創生スキル使用には魔力が必要のようだ」
「体内の魔力かい……? ゼロから物体を作るとなると、そうとう魔力がいる気がするね。体はだるくないかい?」
「いや、まったく」
呪いが解けてから今日まで、体はずっと健康そのものだ。
しかも、呪いに掛る前より、体調がいい気がする。ずっと体の奥から、エネルギーが湧き続けているような気がするんだ。
「職業を二つ得た恩恵か、呪いを受けていた反動か、その両方って線が妥当だろうね。だから、常人よりも魔力量が多くなったのかもね」
「そもそもアベル様は、もともと魔力量が凄いほうですわ。なにせ、封神の塔でのダンジョン攻略で、一度も魔力切れを起こしたことないんですもの」
「んなぁ!? なんだってぇ!?」
ワイズマンに言われて、マテオがものすごい驚いていた。
え?
「魔力切れなんて起こすのか?」
今までそんなこと一度も起こしたことないんだが。
「信じられないよ……。生まれつき魔力量がすごいってことかね」
「そのうえで、呪いの反動と第二職業の恩恵を得たことで、とんでもない魔力量になってる気がしますわ」
「ううん……そういやベルさん。魔力量って測ったことあるかい?」
魔力量を測る……?
そんなことするのか?
「その顔は計ったことないようだね。ちょうどいい、ちょっと調べてみようか」
マテオはバケツで水を汲んで、地面に置く。
腰のポーチから薬瓶を取り出して、中身を一滴、バケツの中に入れた。
特に水に変化は見られなかった。
「ベルさん、このバケツに魔力を注ぎ込んでみておくれ」
「いいけど、それで魔力量がわかるのか? どうやって?」
「この水には特別な試薬をまぜた。吹き込まれた魔力量に応じて水の色が変わるのさ」
マテオが右手をかかげる。
魔力を込めると、水の色が緑色になった。
おお、すごい。ただの水だったはずなのに。
「魔力量が多いと色は赤に近づくのさ」
「わかった。やってみる」
改めて自分がどれくらいの魔力を持ってるのか、気になったので、確かめることにした。
ぐっ、と魔力を手から放出する……。
しーん……。
「あ、あれ? バケツの水……変化ないぞ?」
ごごご……。
「おかしいですわ……アベル様の魔力量は常人レベルをはるかに凌駕してる。赤色に変化してもおかしくないのに」
ゴゴゴゴゴゴ……。
「待った。なんだい、この音……?」
音?
すると地面がぐらぐらと揺れだした。
「え? え? なんだい!?」
「なんだか井戸が揺れてませんこと……?」
井戸が揺れてる……?
確かに井戸全体がぐらぐらと揺れていた。地面も。え、これって一体……。
ブシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!
井戸が、ぶっ壊れ、そして……。
「「井戸から水が噴き出したぁ!?!?!?!?!?」」
なんてことだ!
井戸からものすごい勢いで、水の柱が天へ向かって伸びていく。
しかも……ただの水じゃない。
「な、なんか色が変じゃないか? 金色……みたいな」
「! 信じられない……ベルさんの魔力が凄すぎて、試薬をたらしてないのに、ただの水の色を変えちまったんだ!」
どういうことだよ……?
「通常、水に魔力を込めるのはものすごく難しいのさ。でもあの試薬を使えば、魔力を込めやすくなる」
「裏を返せば、試薬がなくても、魔力を込めることはできるってことですのね?」
「ああ。でも普通そんなことはできない。しかも、金色に変った魔力水なんて前代未聞だよ」
魔力を込めた水を魔力水って言うみたいだ。
「いやこれ、水じゃない……」
降り注ぐそれは、温かった。
しかも暑すぎずぬるすぎずの、ちょうどいい温度をしてる。まさかこれ……。
「信じられない……魔力水で作られた温泉だ! ベルさん、温泉を作ってしまったようだよ!」
ただ魔力を込めただけで、井戸の水を全部魔力水に変えただけでなく、温泉にまでしてしまった……。
って、なんだそりゃ!
「さすがに荒唐無稽すぎやしないか……?」
「超高純度の魔力水の色が黄金色で、しかも人肌くらいに熱を帯びるってことなんだろうね。いずれにしろ、新発見だよこれは……」
「やっぱりアベル様、すごいです!」
吹き出し続ける魔力水温泉。
それを浴びた街の老人たちは……。
「うぉおお! なんじゃあ!?」「体に力がみなぎるわい!」「節々の痛みがぱっと消えたよ!」
じーさんがたが声を張り上げていた。
え、体に力がみなぎるって……?
こういうときには、鑑定だな。
か、鑑定。
■超神魔力水(SSS)
→すさまじい純度の、大量の魔力を内包する水。摂取することで魔力・疲労回復、関節痛、頭痛などに効く。
「温泉かよ……」
というか超神魔力水ってなんだよ……。
俺はただ、井戸の水に魔力を込めただけだぞ……?
「ベルさんってほんとすごいね。魔力をちょっと注いだだけで健康温泉まで作っちまうなんて」
今ので魔力を使ったはずだが、それでも体のだるさは全く感じなかった。
ということは、魔力量、ものすごいってことか。
「まさか魔力測定の結果が、測定不能なレベルですごいってだけでなく、健康温泉まで作ってしまわれるなんて。さすがですわ、アベル様!」
別に作ろうと思って作ったわけじゃないが……。
まあ、老人たちが喜んでくれたからいいか。
【★☆大切なお願いがあります☆★】
少しでも、
「面白そう!」
「続きが気になる!」
「温泉でたぁ!」
と思っていただけましたら、
広告の下↓にある【☆☆☆☆☆】から、
ポイントを入れてくださると嬉しいです!
★の数は皆さんの判断ですが、
★5をつけてもらえるとモチベがめちゃくちゃあがって、
最高の応援になります!
なにとぞ、ご協力お願いします!