31.辺境の大魔導士
【★☆皆様へのお知らせ☆★】
今回のあとがきは、
今作の読者の皆様全員に、
読んでいただきたいです!
ぜひ最後まで目を通してくださると幸いです!
よろしくお願いします!
……キムズカジーの呪いを解いた、その日の夜。
俺は櫛形山の、小高い丘にいた。
「…………」
聖なる白炎。そして技能貸与。
新しい力が次々と取得できたのは、やっぱり、俺の職業の能力によるものだった。
■英雄譚
→英雄職固有のスキル。利他行動を行う際、潜在的に秘めている能力が覚醒し、新たなる力をスキルという形で発現する。
「英雄譚……。人のために力を使う、か」
英雄とは、自分のためで無く、他人のために行動するもの、と天が言ってるような気がした。
そしてそれは、合っている気がした。
「アベルさん……」
ふと気づくと、ティアが俺の前にやってきていた。
その後にマテオがいる。
どうやらマテオに、ここまで案内してもらったのだろう。
「アベルさんが居ないから、心配してみにきました」
「……そうか」
ティア。
俺が拾い、育てた弟子の一人。
……なぜ見ず知らずの彼女らを、拾って育てたのか。
俺は、ずっと、その答えを探していた。
でも、やっと言語にできるようになった。
俺は……ティアに頭を下げた。
「ごめん、ティア」
「!? ど、どうしたんですか……急に……?」
「俺……おまえに謝りたかったんだ。……聞いてくれるか?」
ティアは戸惑っていたものの、こくん、とうなずく。
「俺……ティア達を拾って育てただろ? でもおまえ、ずっと言ってたよな。どうして、そこまでしてくれるんだって?」
ずっと答えをはぐらかしてきた。
自分でもよくわかってなかったからだ。
でも……やっとわかった。はっきりと、わかった。
「俺さ……ずっと、さみしかったんだ」
俺は孤児の生まれだ。
気づいたときに親がいなかった。ずっと一人で生きてきた。
誰にも頼ることもできず、ひとりで、ずっと……。
「冒険者になったのも、なったあと、俺はずっと自分のためだけに生きてきた。魔物を倒したのも、封神の塔をクリアしたのも、魔神を倒したのも……自分のためだ」
金を稼ぎ、生きていく。
そのために色んな魔の物達を倒してきた。でも……。
「魔神を倒しても、俺は満たされなかった。たくさん金を稼いで、周りから賞賛されてもさ、全然満たされなかったんだ」
若い頃はどうして満たされないのかさっぱりわからなかった。
腹を満たしても、金を得ても、地位や名誉を得ても、全然満たされなかった。
魔神を倒したという最高の栄誉を得ても、だ。
「おまえたちを拾ったのは、結局、その満たされない、さみしい気持ちを満たしてもらおうとしたからだ。……ごめんな」
俺は彼女らのことを勝手に家族と思い込んで、勝手に、さみしさを満たそうとしていた。
でもそれは、俺の一方通行な思いでしかなかった。
だから、ジャークの邪念に気づくことが出来なかった。
「でもここに来て、誰かのために力を使って……俺は、やっと満たされたよ」
たとえば、マテオに鑑定スキルを貸したとき。
たとえば、キムズカジーの呪いを解いたとき。
どちらも、俺は誰かのために力を使った。
そして、彼らの笑顔を見て……俺は、やっと胸に空いた穴みたいなのが、埋まった気がした。
「俺、間違ってたよ。力は……自分のために使っちゃ駄目なんだって。それをやっても、むなしいだけだってさ」
そんな簡単なことにも気づけなかったなんてな。
「改めて、ごめんなティア。俺は……俺のさみしさを埋めるために、おまえたちを利用してた。ごめん」
するとティアは微笑んで、ふるふると首を振る。
「謝る必要なんてないですよ、アベルさん」
ティアは俺の側までやってきて、俺の手を取って見上げてくる。
「動機はどうあれ、あなたはわたしに、生きる力を与えてくれました。そのことにとても感謝してます」
「でも……俺は自分のために……」
「でも、私から見れば、あなたは人のために動く英雄です。昔も今も、それは変わらない。私の英雄はあなたですよ、アベルさん」
「ティア……」
ティアは俺のことを許してくれるようだ。
許してもらえたことが、嬉しかった。
「それに……さみしかったのでしたら、最初から言ってくださればいいのにっ」
「え?」
にこっ、とティアが笑うと、俺の唇にキスをした。
……従者契約のキス……ではない。
「私でしたら、いつでも、アベルさんの家族になりますので♡」
「「「ちょっと待ったぁあああああああああああああ!」」」
頭上から神聖輝光竜が下りてくる。
ヒトミとゼーレンが乗っていた。
そして、なぜかアシュローンも乗っている。
「それは聞き捨てなりませぬ! せ、拙者も家族になりたい!」
「ぴゅい! ぴゅあも!」
「大魔導士殿がさみしいのでしたら、わしも!」
「何言ってんだおめえら、アベルは我と番になるんだよぉ!」
ぎゃあぎゃあ、と女達が賑やかにそういう。
……俺のとなりにやってきたマテオが、ぽん、と肩を叩く。
「あんたの周りには今、たくさんの人たちが居る。良かったね、ベルさん。もう、さみしくないんだろ?」
……ああ。
マテオの言うとおりだ。
俺はもう気づいた。
この力の正しい使い方。
そして……俺の周りには、こんなにたくさんの人が集まってるってことに。
もう……さみしさは消えていることに。
「で、ベルさん? どうするんだい。これから。騒がしいのは嫌いなんだろ? また姿を消して、出て行くかい?」
マテオが俺を見上げながら尋ねてくる。
そこには、俺が出て行くなんてみじんも思ってなさそうな、信頼感のようなものが見て取れた。
「ここに残るよ。俺は……ここが好きになったからな」
俺の【孤独】を解いてくれた、この街を……俺は好きになっていた。
これからも、この先も、俺はこの辺境の地で、暮らしていこうと思う。
「じゃ、これからもよろしくね♡ 【辺境の大魔導士】さん♡」
かくして、呪いのせいでパーティを追放された大魔導士の俺は、辺境の地で呪いを解くも、ここで第二の人生を送る決意をするのだった。
【★☆大切なお願いがあひます☆★】
本話をもって、第1章 完結となります。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
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