27.伝説パーティのメンバー全員から惚れられてた
俺の元に、竜王国スカイ・フォシワの女王、アシュローンがやってきた。
場所は、マテオの薬屋。
「ひさしぶりだなぁおいおい♡ 元気してたかぁ!」
巨乳女が俺に抱きついてくる。
ぐにょりと大きな乳房が潰れ、心地よい感触が伝わってきた。
ティアが目を剝いた一方、アシュローンはぐりぐりと自分の胸をこすりつけてくる。
「大病を患っていたときいて、我は驚いたぞ! というかもっと早く相談しろ!」
アシュローンがズズ……と鼻をすすっていた。
……どうやら思った以上に、悲しませてしまっていたらしい。
「すまん……迷惑かけたくなかったんだ」
「おまえが死んでたらもっと悲しかったぞ!」
「そうだよな……すまんな」
「まあもういい! 元気になって良かったな!」
心から、俺の快復を喜んでくれてるようで、申し訳ない。
俺とアシュローンの間に、ティアが割って入る。
「やめてください! アベルさんは病み上がりなんですよっ!」
「なんだ小娘、やきもちか?」
「だ、だったらどうだっていうんですかっ!」
「はっはっは! なんだアベル、こんな若い女を番にしたのか?」
「つが……ち、ちちち、違います!」
ややあって。
「しかし! まさかアベルがこんなド田舎にいるとはなぁ!」
アシュローンは人間の姿で豪快に笑う。
燃えるような赤い髪の、ものすごい美女だ。
ボディラインの起伏が激しく、局部を鱗で隠してる、という非常に目のやり場に困る格好。
一見すると人間に見えるが、側頭部から生えている角、そして尾てい骨のあたりから生えてる尻尾が、彼女を人外だと証明してる。
「……で? アベルさん、誰なんですか、この人?」
じろり、とティアが俺をにらみつけてくる。
……何故にらむ。
「昔のツレだ」
「恋人ですか!?」
「違う。元・パーティメンバーだ」
ぽかん……とティアが口を大きく開く。
一方、マテオが訳知り顔でうなずく。
「ああ、じゃあこの人が、【七剣星】の一人なんだね?」
「え、ま、マテオさん? なんですか、七剣星……って?」
「若い子らは知らないかい。伝説の冒険者パーティ、【七剣星】を」
……マテオも若い部類だと思うのだが……まあいい。
「七剣星?」
「おう! アベルをリーダーとした、7名の冒険者からなるパーティさ!」
アシュローンが誇らしげに胸を張る。
「アベルさん、パーティ組んでたんですか!?」
なんだ、ティアは知らなかったか。
まあ、その頃まだ生まれてなかったかな。
「そうだよ。俺はアシュローンを含めた7人でパーティを組んで活動してたのさ」
「魔神討伐後に解散したがな!」
「目的は達成したしな」
はて、とティアが首をかしげる。
「七剣星の目的ってなんですか?」
「ん? 嬢ちゃんは【封神の塔】って知らないのかい?」
「ほうしんの……とう?」
アシュローンの言葉に、ティアがまたも首をかしげる。
まあ、知らない世代もいるだろう。
「ちょっと前まであった、世界最難関と呼ばれる、7つのダンジョンのことだよ」
おおよそ百年前に、この世界に突如として七つの巨大な塔が出現。
この塔を百年以内にクリアしないと、魔神が解放され、世界に破滅がもたらされるという。
博識なマテオが説明を引き継ぐ。
「ダンジョンに魔神が1体ずつ封印されてる。解放を阻止しようと大勢が挑み、誰もクリアできなかった。でも……それをクリアしてみせたのが、七剣星ってわけだ」
ティアが目を点にしてる。
「なんだいティア、アベルさんのすごさ知らなかったのかい?」
「え、えっと……魔神を倒した凄い人ってことは知ってましたが……。そもそも魔神って何とか、そこまでは……」
「ま、そんなわけでつい最近まで世界はヤバい状態が続いてたのさ」
「そんなヤバい状況を打破したのが、七剣星ってわけだな! というかほぼ手柄はアベルのものだがな!」
じっ……とティアが俺を見つめてくる。
「どういうことです?」
「……まあ、封神の塔、7つクリアしたんだ。魔神が復活する前にな。だが最後のダンジョンをクリアした瞬間、魔神が1体復活したんだ」
「ええ!? ダンジョンをクリアしたのにですか!?」
「ああ……なんか隠しボス的なもんだったみたいだ」
復活した魔神を俺たち七剣星で押さえ込み、俺が最後にとどめを刺した。
「我らじゃ魔神にとどめを刺せなかった。アベルがいたからこそ、魔神を倒し、世界を救うことができたのだ」
ティアの目が、より強く輝きだす。
「アベルさん……凄いかただと思ってましたけど、まさか、世界滅亡の危機を救っていただなんて! すごいです! 尊敬しちゃいます!」
「ありがとう」
まあ、もう大昔の話だ。
あの時代を知らないやつらもいる。
「しかし解せないね。たしか七剣星って全員が要職についたんだろう?」
国王となったアシュローンをはじめ、確かに七剣星たちは、みんなが国の重要なポジションについた。
「なんでベルさんは、どっかの凄い役職に就かず、冒険者続けたんだい?」
マテオの質問はもっともだと思う。
「……俺みたいな孤児に、王様だの偉い役職だの、荷が重いって思ったんだよ」
と、それらしい回答をしておく。
けど【本当のところ】は違う。
それを他人に打ち明けるのは、ちょっと、いやかなり抵抗があった。
「ま、そういうことにしておくよ」
マテオが訳知り顔で、ぽんぽんと俺の肩を叩く。
どうやらこれ以上突っ込まないでくれるようだ。……ありがたい。
気の使える女だな、こいつは。
「そういや、アシュローン。おまえ、なんでここに来たんだ?」
「【ワイズマン】から依頼があったのだ」
「あいつか……」
ティアが首をかしげる。
「ワイズマンって誰ですか?」
「七剣星の一人だ。今、王城で働いてる」
「……女性ですか?」
「おうよ!」
とアシュローンがうなずく。
ティアが「やはり!」となんだかキレて居た。何を怒ってるのだか……。
ワイズマンに、ジャークの回収を頼んだのだが、そこから、他の七剣星に連絡が行っていたのか。
で、一番スピードのあるドラゴンのアシュローンが、真っ先に俺の元へ来た、というわけか。
「ワイズマンから、呪いで死にかけていたことと、それが解呪されたことを聞いた。まったく、ほんとみずくさいぞ! それならそうと手紙なりで言ってくれればいいのに!」
アシュローンは俺にぎゅーっと抱きつく。
「だから、おまえたちに迷惑かけたくなかったんだよ。おまえは国王になったし、他の連中も要職について忙しそうだったし」
「しかし相談くらいしてくれても良かったのに! おまえのためなら、我は何でもしたぞ!」
……本気で、アシュローンは俺を心配していたようだ。
……まあ、今にして思えば、きちんと元仲間達に相談しておくべきだったかもな。
……当時、俺は仲間達のことを、もっとビジネスライクな関係だと思っていた。
魔神討伐という目的が一致したから、集まった。
それだけのグループだと思っていた。
……でもワイズマンも、アシュローンも、俺の状態を知って、凄く心配してくれていた。
俺が思うより、仲間達は、俺のことを思っていてくれたのかも知れない……。
「すまん」
「まあ、いい。それより今後の話をしようじゃあないか!」
アシュローンは俺の前にひざまづいて、俺の手を取って言う。
「我の婿に、なっておくれ!」
……は?
婿って……。
「結婚してくれってことか?」
「駄目ぇええええええええええええ!」
ティアが俺とアシュローンの間に割って入る。
またか……。
「アベルさんは、わ、私の大事な、か、家族なんです!」
「ティア……」
俺のこと、家族って思ってくれてるなんて……。うれしい……。
「悪いな小娘。我もその男を愛してる!」
「じゃ、じゃあなんで魔神討伐したあとに、すぐにプロポーズしなかったんですか!?」
「それはそういう【取り決め】が、パーティ内であったからな」
え、なに取り決めって……?
「我ら六人の間で、決めていたのだ。抜け駆けNGと」
「なっ、なっ、なぁ……! じゃ、じゃあ七剣星って、アベルさん以外全員……」
「雌だ! パーティ内で戦争を起こしかねなかったら、全員で抜け駆けはNGってことにしたのだ!」
「なんですってえええええええええ!」
……え?
そんな取り決めがあったのか……?
「七剣星は、アベル・キャスターとその信者の集まりだぞ?」
初めて聞いたぞ、そんなことっ。
「皆取り決めのために身を引いたが、今回アベルが死にかけたことで、七剣星の皆が、おまえを求めにやってくるだろうな」
「なんでだよ……」
「失いかけて、初めて気づくのだ。大切な物の大きさに。この我がそうであるようにな!」
しかし、まさか元・パーティメンバー(七剣星)全員が、俺に惚れていたなんて……。
ぽんっ、とマテオが俺の肩を叩いて言う。
「伝説の魔神討伐パーティのメンバー全員から惚れられてるなんて、やっぱベルさんすごいね」
「勘弁してくれよ……」
俺はただ静かに暮らしたいだけなんだ……。
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