205.
首都へと戻った俺たちは、俺たちの拠点兼自宅である茶屋へと帰ってきた。
暖簾をくぐると、香ばしい茶の香りが漂ってくる。
その奥の席で、帳簿を片手に優雅に茶を啜る女性が一人。
マテオだ。
俺の恋人の一人であり、姉御肌で面倒見の良い、頼れるパートナーである。
「おかえり、ベルさん」
マテオは俺の顔を見るなり、ヒラリと手を振った。
だが、その視線が俺の背後――恭しく付き従うキキョウへとスライドした瞬間、ふっと細められる。
そして、深いため息を一つ。
「……はぁ。ベルさん、またかい?」
「えっと、マテオ? まだ俺、何も説明してないんだけど」
「言わなくても分かるよ。どうせ、行き場のない訳ありな子を拾ってきたんだろ? それも、ベルさんのことが大好きで仕方がないような子をさ」
ギクリ。
図星だ。
何も言えねえ。
マテオは察しが良い。良すぎる。
「まったく……あんたは本当に、放っておけない人だねぇ」
「いや、今回はちょっと事情が複雑でさ」
「いいよいいよ、細かいことは。どうせベルさんのことだから、成り行きで助けちゃったんだろ」
マテオは苦笑しながら、キキョウに向かって手招きをした。
「あんた、こっち来な。悪いようにはしないからさ」
「はっ! 神の御使い様!」
キキョウがマテオに向かって深々と頭を下げる。
御使いって。まあ、当たらずとも遠からずか。
マテオはキキョウの様子を見て、やれやれと肩をすくめる。
「この子の面倒はアタシが見るよ。他の子たちへの説明や、生活の基盤の手配も、アタシがやっておくから」
「うう、すまんマテオ。いつも頼りにしてる」
俺が頭を下げると、マテオは「ふふん」と得意げに胸を張った。
そして、少しだけ意地悪な瞳で俺を見上げる。
「当然さ。困ったことがあれば、アタシを頼りな。ベルさんは、戦うこと以外はてんで役に立たないんだからさ」
「ひ、ひどい! 俺だって、これでも一応は領主だし、神様なんだけど!?」
俺が抗議すると、マテオは心底意外そうな顔をした。
「あら? 違ったかい? 書類仕事はからっきし、女心には疎い、おまけに拾い癖がある。アタシのサポートなしで、ベルさんがまともに生活できるとでも?」
「うぐっ……」
「ほら、図星だろ?」
マテオがテーブルの下で、俺の脛をコツンと小突く。
その顔は「しょうがない人ね」と呆れつつも、どこか慈愛に満ちていた。
完全に尻に敷かれている。
悔しいが、言い返せないのが俺の弱いところだ。
「分かったよ。全部任せるよ、マテオ」
「はい、よろしい。素直なのが、ベルさんの一番の長所だよ」
マテオは満足げに頷くと、俺の茶碗に新しい茶を注いでくれた。
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※1/30(金)
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