203.不気味なコート
鬱蒼とした森の中。木漏れ日が差し込む小さな空き地で、俺たちは邪教徒キキョウを問い詰めていた。
俺たちが捕らえた下手人――邪教徒は、黒衣という奇妙なコートを身に纏っていた。
一見するとただの黒い外套だが、どこか生き物のような、ぬらりとした光沢がある。
全知全能の化身であり、俺の娘、ミネルヴァが、そのコートにそっと触れる。
彼女の指先から、青白い魔力の光がコートへと流れ込んでいく。検索が始まったのだ。
しばらくして、ミネルヴァがゆっくりと顔を上げた。
「パパ……これは、魔物でできています」
「? ……ミネルヴァ、それがどうした?」
俺は眉をひそめる。
きょうび、魔物の素材で作られた物なんて、珍しくともなんともない。
例えば、白狼の毛皮は、なめすと耐火の衣になる。
魔物の素材は、優秀な武器、防具になる。
そんな風にして、俺たち人間は、魔物を利用して生きてきた。
「違います。魔物なんです、このコート」
「は……? 魔物?」
「はい。ブラックウーズという、スライムでできてるのです」
「まじかよ……!」
俺は驚いてコートに手を伸ばす。
触ってみると、どう見ても布の触り心地がする。
これが……スライムだって……?
「一体どうやって作ってるんだ……?」
俺が尋ねると、ミネルヴァはコートから手を離し、説明を始めた。
「このブラックウーズには、質感を変える力があります。こいつに命令を下すことで、自在に形や質感を変えるようですね」
「いや、そういうこと聞きたいんじゃなくてさ……魔物にそんな、コートのふりをしたままでいろ、なんて命令……言い聞かせるのむずくね……?」
「そうですね。調教師でも難しいでしょう」
「じゃあどうやってんの……?」
「……わかりません」
わからない!?
「全知全能でもか?」
俺が詰め寄ると、ミネルヴァは困ったように首を横に振った。
「はい。何らかの、超強力なスキル、あるいは魔法が……いいえ、スキルですね。魔法は体系化されてるので、検索が可能ですから」
「スキル……ねえ……そのスキルによる効果で、こいつは人間の言うとおり、コート形状を保ってるってことか」
「はい。驚くべきことですが……」
そりゃそうだ。
魔物を完全に支配下に置くスキルなんて、聞いたことねえ。
「なあ、あんた」
俺は視線を、捕縛されて地面に座り込んでいるキキョウに向ける。
彼女は怯えた様子で、何度も頷いた。
「このコート、邪神教から支給されたんだよな」
「ですですっ」
「邪神教には、そんな風に、他者に言うことを聞かせるスキル持ちがいるのか?」
「いいえ。そのコートは、遺物を研究、改良し、量産されたものだといいます」
「???? いまいち何が言いたいのかわからないんだが……」
俺が眉を寄せると、キキョウは慌てて言葉を付け足した。
「邪神様が、その遺物であるコートを拾い、ブラックウーズを培養、量産したそうです」
「ほぉん……」
つまり、邪神教はこれを生み出したわけでなく、どっかからパクって、それが使い勝手いいから、量産してるってわけね。
「てか詳しいね君」
「幹部でしたので!」
キキョウが、なぜか少し自慢げに胸を張った。
そうですか幹部でしたかそうですか……。
俺はため息をつきながら、改めてその不気味なコートを見つめた。
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