173.中へ
俺は闇の中に入った。
竜王国の領土。
本来ならたくさんの竜達が平和に暮らしていたはず。
だが周囲には竜は見当たらない。
風も聞こえない。時間が停止してしまったかのような空間に、俺だけの息づかいが聞こえてくる。
「【浄化】」
俺は浄化の魔法を使って、闇をかき消そうとする。
だが……ばしゅうぅううううう! と消した側からまた闇に覆われていく。
「これは……核があるタイプかな」
魔法を発動させる核がどこかに設置してあるのだろう。
だから、浄化魔法で闇をはらおうとしても、無駄なのだ。
「全知全能がいれば、そういうタイプの魔法だってわかったんだがな」
いかんせん俺はあまり頭が良いタイプじゃあない。
サポート役がいないと、こんなもんだ。
「ミネルヴァ……待ってろよ」
俺は闇の中の探索を続けることにする。
魔力を探知しようとする、が。
闇魔法が探知を妨害してるのか、上手くいかない。
すぐ側にいるようにも、遠くに居るようにも思えるのだ。
まあでも、俺の侵入を阻もうとしてるってことは、俺がここに来るとヤバいと敵も理解してるのだろう。
なら、まあ、敵はたいしたことなさそうだな。
……と、油断しない。
なぜなら相手には全知全能がいるのだ。
敵がミネルヴァを使って攻撃してくる可能性がある。
あらゆる疑問への回答を導き出せる彼女がいるなら、話は別だ。
何か仕掛けてくるかもしれない……気を引き締めないと。




