154.全自動魔法おじさん
竜王国へと向かう俺たち。
空の上はなんか寒いらしかった。
海の底でやったように、結界を張ってやろう。そう思ったのだが。
「あ、なんだか温かくなってきたね」
「ほんとです! わ、すごい。なんて高度な結界魔法! さすがアベルさんっ!」
え?
何言ってるんだろう二人とも……。
「ベルさん、なんだいそのきょとんとした顔?」
「いや、その……俺まだ何もしてないんだけど」
「え? じゃあこの結界は?」
「さ、さあ……?」
なんかシラン間に、結界が展開していたようだ。
結界魔法が得意なティアが感嘆の声を上げる。
「凄いです、この結界。寒さだけをガードしてます」
「それってすごいことなん?」
「はい。たとえば冷気をガードしたら、空気が入って来れず、中に居る人は酸欠になってしまいます。ですが、アベルさんの結界は、【寒さ】という概念だけを防いでおり、空気はきちんと入るようになってます。なんと高度な結界術……」
ティアが何を言ってるかさっぱりだ。
が、それ以上にわからないことがある。
「そんな凄い結界、俺、いつの間に張ったんだよ。俺別になにもしてないんだけど」
するとマテオがため息をつく。
「また精霊が勝手にやったんだろ」
どうやら俺は精霊達にとても好かれているらしい。
んで、俺がこうしたい、と思うだけで、精霊が適切な魔法を使ってくれるんだそうだ……。
「それってさ……俺、いるのかな……」
何もせず、ただ付いてきてるだけだし。結界張ったの精霊だし……。
ほんと俺何もしてない……。
「そりゃいるでしょ。ベルさんがいるおかげで、こんな凄い結界の恩恵を享受できるんだし」
「そうですよっ。アベルさんは必要です!」
そ、そうかなぁ?




