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15.古竜を余裕で倒す


 俺は開拓者の村からだいぶ離れた場所へとやってきた。

 ……そこで俺は気づく。


 ずしぃい………………ん。

 ずしぃい………………ん。


 何か重いものがこちらに近づいてくるのがわかった。

 地面の揺れが徐々に大きくなっている。


 どこまでも広がる荒野。敵の姿は見えない。

 1つ山があるくらいで……。


「いや……山じゃ、ない……」


 なぜなら、それがこちらに向かってくるからだ。


 四足歩行するタイプのドラゴンだ。

 翼はなく、地を這う姿は、どちらかというとトカゲに見えなくもない。


 体全体を黒鉄の鱗で覆われている。

 特に、背中から無数の鉱石が生えており、まるで鉱山を背負ってるかのようだ。

 見上げるほどの馬鹿でかい竜を前に……鑑定スキルを使用してみる。


~~~~~~

名前:黒鎧竜ファフニール(SS)

種族:古竜種

スキル:不動要塞(S)、鉄山靠(S)、熔岩熱線(S+)、驚天動地(S+)

~~~~~~


「…………」


 モンスターへ鑑定スキルを初めて使ったが……ランクもわかるし、相手が所有するスキルまでわかるのか。

 便利すぎるだろ。


「しかし、古竜種……か」


■古竜種

→長い年月を生きる竜の総称。こぞって能力値が高い。知性がある。


■SSランク魔物

→人間では倒せない強さの魔物。後の歴史に名前を残す英雄のみが倒せるとされる。


 現役時代、俺も古竜種と戦ったことがある。

 あのときは周りのサポートもあり、三日三晩かけて、ようやく……討伐することができた。


 引退した今、果たして俺に倒せるだろうか……という、不安はあまりない。


 現役時代の古竜との戦いの前は、震えが止まらなかった。

 でも今心の中はとても静かだ。

 早く倒して帰りたい、そんなことを考える余裕すらあった。


『グラグラグラ……! なんだぁ……やけに大きな気配がすると思ってやってきてみたら、人間かぁ……?』


 古竜がしゃべるだけで地面が揺れる。

 日常の動作がそのまま天変地異に繋がる。これが古竜種。


「勝手におまえのテリトリーに入ってきてすまなかった。怒らせてしまったのなら謝罪する。だから、おとなしく帰ってもらえないだろうか?」


 ……俺は別にファフニールに親を殺された等と言って恨みがあるわけではない。

 ただ、俺のせいで、村の連中に迷惑がかかるのを避けたい。それだけだ。


 今までと違い会話が成立する相手だ。

 話し合いで解決するなら(帰ってくれるのなら)、それで事足りる。


『グララララ! 面白い冗談を言う! なぜ、悠久の時を生きる誇り高き古竜が、人間ごとき虫ケラの言うことに耳を貸さねばならぬのだ……!』


 ……ああ、駄目だこいつ、話が通じそうにないな。


「聞くまでもないが……おまえ、俺を殺しに来たのか?」

『そのとおり! もっとも、高い魔力量をしてるものだから、魔族が来たと思ってきてみれば……カス以下の人間とはな。がっかりだ』


「それはすまなかったな」

『……気に食わん。実に不愉快だ。この我を見て、恐れおののかないなんて』


 現役時代の俺ならば……こんな化け物を前にして、恐怖に怯えそうになるも、勇気を出して立ち向かっていただろう。


 でも今は違う。


「最後通告だ。おとなしく帰れ。でなければ実力を行使する」

『………………舐めるなよ、人間むしけらがぁ……!』


 ぐんっ、とファフニールが体を縮める。 背中を向け、そして、思い切り突進してきた。


 スキル、鉄山靠てつざんこう

 馬鹿でかい体から繰り出される、強烈な一撃だ。


 背中には硬そうな鉱石がいくつも生えている。

 まるで鉱山がものすごい勢いで突っ込んでくるようだ。


 グシャァアアア……!!!!!!


『ギィアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!』


 何かが潰れた音、そして、悲鳴。

 そのどちらもが俺……ではなく、古竜ファフニールから聞こえてきたものだ。


『な、なんだ!? 体が重いぃい!』


 ファフニールの巨体が地面に沈んでいる。

 バキバキ……と背中の鉱石が折れていく。


『な、何をした貴様ぁ……!?』

「【反魔法アンチ・マジック】をおまえに対して使っただけだ」


『あ……反魔法アンチ・マジック!? なんだそれは!?』

「魔法をキャンセルする魔法、とでも言えば良いかな」


 魔力(魔法)には固有の波が存在する。

 波は、逆位相の波とぶつかると、打ち消しあうという性質を有する。


 その性質を応用し、相手の魔法の波とは、真逆の魔力の波を当てることで、相手の魔法を打ち消す。

 

 それが、反魔法アンチ・マジックの仕組みだ。


「おまえ、デカすぎるんだよ。そんな巨体がこの世界で生きていこうとしたら、自重でぺしゃんこになっちまう。そうならないっていうことは、自分自身を軽くする魔法を使ってるってことだ」


 しかしファフニールに自身が魔法を使ってる感じは無かった。

 体を軽くするスキルも持っていないとなれば答えは一つ。


「おまえの体を構成する、その黒い鉱石。それがおまえの体を軽くする魔法を発生させてるのだ」


■飛行石(SSS)

→自然界に存在する稀少な鉱石のひとつ。魔法で周囲に力場を発生させ、体を宙に浮かす。


 あとは簡単。

 飛行石の魔法を、反魔法アンチ・マジックで打ち消してやるだけ。


 それでやつは自分の体を支えることができず、ぺしゃんこになる。


『う、ぐ、く、そぉおおお! その妙な魔法を使うの、やめろぉおおお!』


 ファフニールが口を開く。

 何かするつもりだな。【鑑定】


■熔岩熱線

→口から発射される高温のレーザー。直線に飛んでいき、レーザーが当たった場所はどんなものでも溶ける。


「……鑑定スキル、便利すぎる」


 相手がどんな攻撃をしてくるのか、こちらが何も苦労せずともわかる。

 ……勇者って、こんな便利なものを持っていたのか。ジャークも……いや、もうやつのことは忘れよう。


 熔岩熱線がファフニールの口から発射される。

 

 ビゴオォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!


 これは魔法では、体内で生成されたエネルギーを圧縮して打ち出したもの。

 反魔法アンチ・マジックで打ち消すことは出来ない。


 超速のレーザー。

 敵が何をしてくるのかわからなかったら、避けることは不可能だったろう。


 俺は結界魔法を発動させる。


『ドーム状の結界!? なんだこれは!?』


 ファフニールを中心に、半球状の結界が展開する。

 やつの放ったレーザーが、球面にぶつかる。


 するとレーザーは向きを変え、そのままファフニールの背中を直撃した。


『うぎゃぁああああああああああああああああああああああああ!!!!!』


 熱線によってファフニールの背に、大穴が空いてしまった。

 自分の攻撃でやられるとは、間抜けなやつだ。


『な、なんだ……!? 攻撃が……反射してきた、だと!? どうなってる!? 結界は攻撃を防ぐ盾ではないのか!?』


「おまえの言うとおり。だが結界魔法は、攻撃を防ぐ盾の役割だけでなく、相手を捕まえたり、球面にして攻撃を反射する……鏡のような使い方もできるんだ」


 ティアのように、純粋に敵の攻撃を防ぐ盾を展開する使い方もある。

 が、結界は形を変えることが出来るので、色々と応用が利くのだ。


『なんだ……なんなのだ貴様! そんな魔法の使いかたをする魔法使いなんて、今まで見たことがないぞぉ!』


 自重で押しつぶされ、背中に穴を開けられ、瀕死のファフニールが言う。

 その声が、恐怖で震えていた。


 俺が誰かって?

 魔神を殺した大魔導士だ……と、かつてならそう答えただろう。


「田舎暮らしの、ただのおっさんだよ」

『う、ぎ、く、そぉおおおお! こうなったらぁ……! 貴様も道連れだぁああああ!』


■驚天動地

→己の生命力を対価に、大爆発を起こす自爆スキル。周囲一帯を灰燼に帰す。


 さすがにこのスキル使われたら、俺の張った結界ごと、周囲は吹き飛んでいただろう。


 鑑定スキルのおかげで、俺は初見殺しの技でさえも、難なく対応できるようになっていた。

 ……ああ、そうか。俺が冷静なのは、この鑑定スキルがあるからなのか。


 どんな敵が、どんな技を使ってこようと、後手に回ることがなくなる。

 ……反則チートスキルじゃねえか、こんなの。


『ひゃははあ! 死ねぇええ……!』

「おまえひとりで死んでろ。【岩山隆起ロック・ブレイク】」


 上級土魔法、【岩山隆起ロック・ブレイク】。

 地中から巨大な岩山を勢いよく出現させ、相手を下から上へ打ち上げる魔法だ。

 ファフニールは自力で動けなくなっている状態だ。

 簡単に魔法が決まる。


 ファフニールは上空へと打ち上げられ……。


 ドガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!


 ファフニールの肉片が落下してくる。

 それを見上げながら俺はつぶやく。 


「……汚ねえ花火だ」


 こうして、SSランクの強敵、古竜を俺は楽勝で倒すことができたのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 「……汚ねえ花火だ」は古い寒気が(笑)
[良い点] さすが大勇者様やねえw [一言] せっかくの素材が・・・もったいない
[一言] >『グラグラグラ……! なんだぁ……やけに大きな気配がすると思ってやってきてみたら、人間かぁ……?』 あ、やってきた理由はあってたのね。 >スキル、鉄山靠てつざんこう。 をい >飛行石の…
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