131.改心
獣人国ネログーマへとやってきた俺たち。
雨が横殴りに吹いてる。俺は神の力で、ぬれても平気だ。
しかしマテオたちは雨に濡れて困っていた。
目の前に居る彼女たちだけでなく、この国の住民たち全員が困ってるだろう。
俺は、呪いで長く苦しめられ、誰にも助けてもらえなかったことがあった。
だから、困った状況下で、誰かに助けて欲しいと思う気持ちは理解できる。
……よし。
俺は両手を広げる。
「結界!」
俺は俺を中心とした、結界を構築する。
ドーム状の結界が俺たちを包む……予定だったのだが。
「あ、え? ちょ、結界が円柱状に!?」
空をつらぬ巨大な光の柱が、目の前に完成した。
その結果どうなったかというと……。
「あ、雨が降ってない!?」
「どうなってるんだ!? 雨雲が消えたぞ!?」
……状況を整理しよう。
ドーム状結界を作って、雨を防ぐはずだった。
が、なんか円柱状に変形し、空に向かって伸びていった。
結果、結界内部にあった雨雲は消え、太陽がのぞいている。
「おお! 素晴らしいです、大魔導士どの! さすがです!」
バーミーズがこちらにやってきて、目を輝かせながら言う。
「雨雲がきえてしまいました! どうやったのですか!?」
「ど、どうやったんでしょう……?」
正直、俺がイメージした以上の結界が構築されて、戸惑いを隠せないでいる俺である。
「…………」
もじもじしながら、ミネルヴァが近づいてきた。
これは……。
「何か言いたいのか?」
「は、はいぱ……マスター」
ぱ……?
するとマテオが苦笑しながら言う。
「ミネルヴァ。いいんだよ、ベルさんのこと、パパって呼んでもさ」
「! そ、そんな……創造主に、そんな……パパだなんて……恐れ多い」
ああ、なるほど。
マスター呼びは背伸びして言ってたんだな。今まで。
でも俺が神だから、遠慮していたと。
「いいよ、遠慮しなくて。呼びたいように呼べよ」
「! い、いいのですか……?」
「おう」
「…………ぱ、パパ」
「おう、なんだ?」
ふにゃ、とミネルヴァが笑うと、俺にくっついてくる。
前よりずっと接しやすくなったな。
「ま、ベルさんそこの娘相手に、普通に寝てたけどね」
「うぐ……」
「まさかベルさんにそんな性癖が? アタシも言ったほうがいいかい、パパって? んんぅ?」
するとミネルヴァがマテオに言う。
「マテオ……さん。パパを……いじめないでくださいっ」
み、ミネルヴァ!
おまえ……そんなこと言えるようになるなんて。
ごめんな、ちょっと嫌なやつかと思ってたよ、おまえのこと。
見直したよ。
「そうだね。悪かったねベルさん」
ぱちん、とマテオがウインクする。
ああ、なるほど、自ら悪者になって、娘と父との交流をうながしてくれてるのか。
ほんとできる嫁だよ……。
「かばってくれてありがとな、ミネルヴァ」
よしよし、と頭をなでる。
ふにゃ……とミネルヴァが笑って言う。
「パパ。これからは、ワタシもマテオさんのように、パパの役に立つこと、頑張って……してみます」
「おう。ありがとな」
わしわし、と俺はミネルヴァの頭をなでてやった。
「で、この結界の形が変わったのってどういうことなんだ?」
「解:精霊がパパのために、結界の形を進んで変えたのだと思われます」
「? どういうことだ?」
「はい。魔法とは精霊に魔力を渡して、発動するものです。ご存じでしたか?」
「まあ、なんとなく」
そんな感覚ではあった。
「通常、精霊は人間と最低限の交流しか行いません。が、マスターの場合は精霊に愛されてるため、精霊の方から、マスターに最適な魔法を自ら喜んでつくり、アウトプットしてくれているのです」
うーん……。
「わかるような、わからないような」
「わかりにくくてごめんなさい、パパ……」
「ああ、良いって。まあなんだ、精霊が俺の思い描くものより良い物を作ってくれたみたいな」
「そういうことです!」
うーん、コミュニケーション取りやすい……。
ミネルヴァの変な部分が無くなってすごくスムーズにやりとりできるようになったな。
マテオ様々だ。
もっと早く、教育を任せておけば良かったな……。
いや、そういう指示を最初に出さなかった、俺がだめだな。
いちおう、いや、もう俺は家長なんだし。
いつまでもマテオにケツをたたいてもらうばかりじゃ、駄目だな……うん。
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