126.できる嫁
獣人国ネログーマへ行くことになった。
「ベルさん、ちょっといいかい?」
「マテオ? どうした?」
マテオが神妙な顔つきで、俺に言う。
「アタシも今回、同行していいかい?」
マテオがついてきたい?
「別にかまわないが……どうしてだ?」
「ベルさん……獣人たちが発情しちゃうの、もう忘れたのかい?」
あ……。
そうだった。みんな俺にメロメロになってしまうんだった。
「興奮抑制剤もってってもいいけど、ベルさんは自分の仕事に集中しなきゃだろ? だから、アタシが手伝うよ。獣人どものお世話は、アタシに任せな」
「マテオ……!」
なんていい女房なんだろうか。
俺のために、裏方仕事を進んでやってくれるなんて!
「ありがとう。すごいうれしいよ。マテオはいい嫁だな」
マテオが顔を真っ赤にした。
そして、興奮抑制剤をがぶ飲みした!?
「え、それ……獣人用の抑制剤じゃ……?」
「はあはあ……あっぶなかった……ベルさん。理性を失って、襲いかかるところだったよ……」
「そんなに!?」
「ああ……ベルさん雄としての魅力やばすぎるから……。そこにくわえて、こんなかっこいい台詞なんて吐かれたら、もう辛抱たまらなくなるよ」
「まじっすか……」
発言にまでも気をつけないとな……。
「ミネルヴァのあほじゃ、そういう細かいサポートはできないだろう? だからついてくよ」
「アホとはなんですか。ワタシは全知全能ですよ?」
「だからなんだい? ベルさんの役に立ってるのかいあんた。結構ベルさんから苦情来てるよ? 肝心なこと教えてくれないって」
「ふぐうううううううううううううう」
不満そうなミネルヴァ。
マテオがいれば、ミネルヴァもやるきだしてくれるだろうし。
「じゃあ、マテオ。よろしく頼む」
「おう。あと、護衛に一人くらいはほしいかね。嫁んなかから適当なやつ選んどくよ」
「頼みます……」
ほんと、マテオは出来る嫁だ。
「マスター。全知全能は? ミネルヴァも出来る嫁ですよね?」
「…………」
「マスターぁ!」




