125.頼りになる嫁
獣人国ネログーマが、水神とやらのせいで、大変らしい。
どうにかしてほしいと、王女直々に頼まれた俺は、解決に乗り出すことにしたのだった。
まあ、困ったときはお互い様っていうかな。
俺ものろいのせいで困っていた時期があった。誰かに助けてほしいって思っても、助けてもらえないつらさは理解してる。
だから……俺は手が届く範囲の困ってるやつは、助けようって思う。
で……だ。
「ネログーマってこっからどんくらいだ?」
マテオの茶屋にて。
全知全能に尋ねる。
……王女に聞けばいいのだが……。
「きゃぅうん♡ 大魔道士様ぁん♡ あけてくださぁい♡ 私に子供を産ませてくださぁい♡」
……とまあ、あんな調子なのである。
どうやら獣人は強い雄に惹かれる習性があるそうだ。
そこに加えて、俺は神格を持っている。
強すぎるゆえに、獣人たちをあんな風に、発情させてしまう……らしい。
「ネログーマは馬車で3日ほどですね
「そうか。結構離れてるな。まあ、飛んでけばもっと早く着くか」
すると全知全能さん、こんなことを言う。
「龍脈移動を利用したほうが、もっともっと早く到着できると思います」
「龍脈……ああ、なんかこの星を巡るエネルギーの流れだっけか」
「是:高位神であるマスターは龍脈に乗って移動できます。ネログーマへもひとっ飛びです」
「お、おう……いつから高位神に……?」
「天導を味方につけ、信徒が増えてからですね」
「そすか……」
まあ、何にせよやることは定まった。
「で……どうしよう。外の連中……」
みんな発情してて、まともに相手できそうにないんだが。
すると……。
「アタシがなんとかしてみるよ」
「マテオ!」
店の奥から、薬瓶を持ったマテオが現れた。
「動物の興奮を抑える、抑制剤を作ってみた。これで多少ましになると思う」
「おお! さんきゅー! やっぱり頼りになるなぁマテオは!」
「ふふ……よしてくれよベルさん……♡ むらむらしちゃうじゃないか♡」
ぺろ……とマテオが妖艶に、自分の唇をなめる。
や、やばいやばい……俺のそういう小さな所作でさえ、女を魅了しちゃうんだった……。
マテオが外の連中を、沈めにいってる間、ミネルヴァが俺の足を蹴ってきた。
「なんだよ?」
「全知全能は頼りになるなぁ、SAY?」
「はぁ……?」
なんだこいつ……?
ぷくっとおもちみたいに、全知全能が頬を膨らませる。
「治療終えたよ~」
とマテオが帰ってくる。
後ろから、バーミーズたちが入ってきた。
「とんだご無礼を……」
「いやいや」
しかしすっかり発情が直ってる。
うーん、やっぱりマテオの薬すげえ。
「全知全能のほうが、すごいのに……」
なんだ、こいつ……?




