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11.勇者Side その3



《ジャークSide》


 アベルが街の英雄となった、一方そのころ。

 ゲータ・ニィガ国王都にある、冒険者ギルドにて。


 ギルドに併設された酒場には、現在、大勢の人が押し寄せていた。

 全員の関心は、一人の美しいエルフに注がれている。


「あれか、脅威の新人って女は?」

「そう、初日にSランク冒険者になったって言うすごい新人」

「なんでも、エルフ国の次期女王候補らしいぜ」

「女王候補!? まじで!? すげえ!」


 周りから注目を浴びていても、そのエルフが気にしてる様子はない。


「初めまして、【ゼーレン】様」


 勇者ジャーク、そして聖女ティアは、エルフ……ゼーレンにあいさつをする。


「私はティアと申します。こっちはリーダーで勇者のジャーク」


 ジャークは改めて、目の前の超絶美人エルフを見やる。

 外見年齢は10代前半くらい。身長は160センチくらいだ。


 顔が小さく、しかも恐ろしいほど整っている。

 ボディラインに起伏は乏しいものの、手足は長く、その外見だけで食っていけそうなレベルの見た目をしていた。


 髪はエメラルドのように美しく、室内だというのにキラキラと輝いてる。

 魔法使いのローブ、ではなくきらびやかなドレスを身に着けている。


 そして、背後には従者らしき女が控えていた。


「ジャークだ、よろしくなぁ、ゼーレンさんよぉ」


 彼がゼーレンに手を伸ばす。

 ばちん!!


「いってぇええええええええええ!」


 ジャークはその場で倒れる。

 何をされたのかわからないが、すさまじい痛みが右手に襲っているのは確かである。


「ジャーク! 大丈夫!?」

「いてえよお! ティアぁ! 早くなおしてくれよぉお!」


 ティアはジャークに治癒魔法をかけるが、痛みが引かない。


「……おかしい、ただの小さな火傷なのに、小回復ヒールが効かない……?」


 ティアは首をかしげながら、中級の回復魔法をかけると、やっとジャークの火傷が治った。


「痴れ者が。このお方をどなたと心得る」


 ゼーレンの従者がジャークをにらみつける。

 どうやら、この従者がジャークに雷の魔法を使ったようだ。


「ゼーレン様は次期アネモスギーヴ女王。人間ごときが触れていいお方ではないのだ!」

「んだとぉ!?」


 ティアがジャークの頭を押さえて、謝罪する。


「ゼーレン様、仲間が分をわきまえない言動をしてしまい、本当に申し訳ありませんでした」

「うむ、そちの殊勝な態度に免じて許してやろう」


 ジャークはゼーレンの偉そうな態度が気に食わなかった。

 やはり勇者である自分のほうが偉い、という意識がぬぐえないのである。


「ゼーレン様、恐れながらお尋ねしたいことがございます。……どうして、次期女王となるお方が、冒険者なんてやっているのでしょうか?」

「人を探しておる。そやつはこの国で冒険者をしてるらしくてな。それゆえ、わらわも冒険者となることにしたのじゃ」


「なぜその人を探してるのですか?」

「そやつに勝つためじゃ」


 従者はゼーレンの回答に補足説明する。


「我らアネモスギーヴの王は、世界最高の魔法使いでなければいけません。ゼーレン様は国内随一の魔法の使い手でございます。しかし……」

「この国にはわらわをしのぐという魔法の使い手がおるという。そんなのは許せん。王位を継ぐ前に、そやつを倒し、わらわが一番であることを証明するのじゃ」


 ジャークは自分が有名になることしか考えていないので、仲間の事情なんて全く興味なかった。

 一方、ティアは今の話を聞いて、何かに気づいたようだ。


「ゼーレン様。もしもその人を見つけたら、どうするんです?」

「問答無用で魔法での決闘を申し込み、完膚なきまでにたたきつぶす」


「……その決闘で、相手が死んでしまったら?」

「わらわが女王になる。それだけだ」


 ティアはそれを聞いて、「……そうですか、わかりました」とつぶやく。


「そちら、そやつの居場所を知らんか?」


「知りまっせーん、興味もねーっすわ」

「私も、その人の【居場所は】知りません」


 二人の答えを聞いても、ゼーレンは特に気にした様子もなかった。

 一方、ティアは「……あの人は、私が守る」と何やら悲壮な決意のこもった表情をしていた。


「ともあれ、しばしの間貴様らに力を貸してやろう。して、これからどうするのじゃ?」

「とりあえず依頼。ランクの高いやつを、ばーん! とこなそうぜ!」


 ジャークの提案を、しかしティアが真っ先に却下する。


「ダメです。何を言ってるのですか? まずは依頼を受ける前に、きちんと三人でのフォーメーションの確認をするべきです」

「はぁ? フォーメーションだぁ? んなのどうだっていいだろ。そんなことより依頼だよ依頼!」


「どうでもよくない! 初めての相手とパーティを組む時は、きちんとお互い、何ができて何ができないのか、確認しておかないと、依頼中のミスにつながるってアベルさんが言ってたじゃないですか!」


 アベル、という名前を聞いただけで、イライラする。

 彼の教えにティアが従ってることが許せず、つい反発してしまう。


「うるせえ! リーダーはおれだ! おれの方針に従ってもらうぜ!」

「そこな男と同意見じゃ。フォーメーション確認なんぞ必要ない。わらわの魔法があれば、どんな依頼もこなせる」

「へへ! ほら女王さんもこーいってるしよぉ、さっさと依頼いこうぜ!」


 と、そのときである。


「失礼! 緊急で依頼したいことがある!」


 ばん! とギルドの扉が開く。

 そこへやってきたのは、赤い髪をした、とても美しい女性だった。


「あ、あれは【豪商メアリー・クゥ】じゃないか?」

「え!? あの、世界最大規模の商業ギルド、【銀鳳ぎんおう商会】のギルマス!?」


 赤い髪の女……メアリーは受付へと駆けつける。

 銀鳳商会といえば、この世界の人間ならだれもが名前を知ってる、大商業ギルドではないか。

 

「緊急でクエストを発注したい! 報酬は望む金額を用意しよう! だから腕のいい冒険者を用意してくれ!」


 どうやら相当急ぎかつ、重要な依頼のようだ。

 ジャークは「大金ゲットのちゃーんす!」としか思っていなかった。


「かしこまりました。どのような依頼でしょうか?」

人外魔境スタンピードまで、馬車を護衛してほしい」

「す、人外魔境スタンピードですって!?」


 冒険者たちがざわつきだす。

 ゼーレンは事情を知らないのか、首をかしげながら、ティアに尋ねる。


「なんじゃ、人外魔境スタンピードとは?」

「王国西部に広がる荒野のことです。強力な魔物がうろつく、大変危険な土地で、世界四大秘境のひとつです」


 周りの冒険者たちは、依頼内容を聞いて、難色を示していた。


人外魔境スタンピードか……無理だな……」

「あそこってSランクの砂蟲サンドワームがうじゃうじゃ出るんだろ?」

「Sランクパーティがあそこに行って二度と帰ってこなかったって聞いたことあるぜ」


 みんな、命が惜しいらしく、誰も行こうと言い出さなかった。


「その依頼、おれたちが受けるぜ!」


 ジャークが手を挙げて、メアリーの前まで行く。

 ティアはその手を引っ張って止める。


「何を馬鹿なこと言ってるんですか!? 無理に決まってます!」

「はぁん? 無理なわけないだろ。おれはそこらの腰抜け冒険者どもとちがって、勇者なんだぜ?」


 ジャークが冒険者たちを見渡して、馬鹿にするように、鼻を鳴らす。


 冒険者たちは怒りの表情を浮かべるも、反論してこなかった。

 目の前で救いを求めている相手がいるのに、ビビッて何もできないのは、事実だからだ。


「大商業ギルドのギルマスさんよ、その依頼、おれらが受けるぜ」

「本当か! 助かる!」


 メアリーが涙を流しながら、ぺこぺこと頭を下げる。


(きもちぃいい! えらいやつに頭を下げさせるの、ちょーきもちぃい!)


 ……一方、ティアは冷静な調子で言う。


「メアリー様。すみません、依頼はキャンセルさせてください。今うちはメンバーが変わったばかりで、とてもこんな難易度の高い依頼をこなせる状態ではありません」

「おい女。リーダーの男がやるというのじゃ。口をはさむな」


「ゼーレン様……しかし……」

「このわらわがいるのじゃ。ミスなど絶対に起きさせん」


 女王の言葉に、ジャークがのっかって言う。


「そこらの凡人冒険者どもとちがって、この天才! 勇者ジャークさまがいるんだ。絶対失敗なんかしない!」


 ジャークの頭の中には、パーティの状況なんてまるでなかった。

 これを達成すれば、莫大な報酬と、そして名誉が手に入るだろう。


「ありがとう、恩に着る」

「へへ! ってことで雑魚ども! この依頼は勇者ジャークのパーティが請け負った! 誰も邪魔すんじゃねえぞ? てめえらはおれが成功するさまを、指をくわえてみてるがいい! かーっかっか!」


 結局、ジャーク勇者パーティだけで、緊急依頼を受けるハメとなったのである。

 

 呪われてる自覚のない勇者。

 自尊心の高い新人。

 危険な場所への護衛依頼。


 ……結果は、もう火を見るよりも明らかだった。


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[気になる点] お姫様とはいえ仲間になる相手に握手するだけで怒られるのは…
[良い点] ジャークなザマアすぎて笑った!あと大勇者強すぎ&無自覚最強だ! [気になる点] なしっ!最高! [一言] 星5つけといた!
[一言] このエルフ駄目だwww
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