103.島作った神
海を割った。
「さて、じゃあ大聖堂を持ち上げるかぁ」
海中暮らしだと不便ってことで、このサラディアス大聖堂を、外にもっていこうとしている最中だ。
「お、恐れながら神さま」
レンがかしこまった様子で言う。
「どうした、レン?」
「この大聖堂は、地脈と接続しておりますゆえ、この土地から動かすことはできませぬ」
「ちみゃく?」
なんじゃそりゃ……。
「困ったとき、そんなとき、役に立つ妻こと、ミネルヴァです」
誰に説明してるんだこいつは……
あと妻ってなんだよ……。
「解:地脈とは、星に張り巡らされた、エネルギーの経路です」
「そんなもんあるの?」
「是:この地脈と接続することで、一部の人間や建物は、強大な力を発揮できるのです」
「はえー……そうなんだ」
「是:この大聖堂が、長い間海の中にいながら、崩壊しなかったのは地脈接続してるからです」
あ、なるほど。
たしかに海底にある、こんな脆そうな建物が、形をなしてるほうがおかしいもんな。
地脈の効果ってことか。……ん?
「でも、結構ボロボロだったぞ、建物。それに神の力が宿ってんじゃなかった、ここ?」
「是:長い年月の経過により、地脈との接続が弱くなっていたため、徐々に建物が劣化していたのです。また、この建物を維持するのに、神の力は使われておりません」
ふーん……。
じゃあ神ってやつは、なんでここに力を残してたんだろうか。何のために……? わからん……。
「が、要するに地脈ってやつとくっついてるせいで、この大聖堂は持ち上げられないの?」
「是:一度地脈の接続を切り、再度接続する方法はありますが……」
ありますが?
「それは人間にはできぬ、神の所業です」
「なるほど……」
「つまりマスターにはできるってことです」
「あ、そ、そうでしたね……」
俺も神でしたねいちおう。
まあできるなら、やっちゃうか。
「その前に、地脈の接続を切る必要が……」
「万象引斥力」
俺は、重力魔法を使用する。
ずずずずずずずず……!!!!!!
「み、見ろ! 大聖堂が……飛んだぞぉ!」
俺は重力を操り、大聖堂を浮かせる。
ちょっと抵抗力があったけど……。
ぐんっ!
びゅぉおん!
直ぐに、持ち上げることができた。
俺は飛行魔法で空を飛び、大聖堂を見下ろす。
「まず海を戻して……」
海を固めていた、氷の魔法を解除。
一気に水が押し寄せる。
海底の連中には、結界を張っていたので、まあ大丈夫だろう。
海が戻ったあと、俺は大聖堂を下ろす。
おっと、そのままだと沈んじゃうから……。
地属性魔法で、大きめの島を作り、その上に聖堂を載せる。
ずずぅうん……。
「よっしゃ、あとは地脈接続……って、どうした?」
ミネルヴァが黙りこくっている。
『いえ……さすがです。まさか、魔法で島一つ作ってしまうとは……』
「え? なんで?」
『いえ……もうマスターは、感覚が麻痺してるのですね』
「?????」
別に麻痺の魔法はくらってないが……。
え、土で島作っただけだろ? できるよな?
『では、地脈との接続を行います。マスター、私が申した手順通りに、魔力を操作してください』
「お、おう……」