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10.街を守った英雄として賞賛&感謝される



 ヒドラを撃破し、なぜか弟子を取ることになった。

 翌日の出来事だ。


 俺は、久しぶりにミョーコゥの繁華街へと向かっていた。

 普段俺は、街の外れ、奈落の森(アビス・ウッド)近くの小屋に住んでいる。

 人と関わりたくない俺は、滅多に、繁華街へ近づかないのだが……。


『アベル殿! ご奉公に参りました!』


 ……Sランク冒険者、ヒトミ・ランが今朝うちにやってきたのだ。


 さすがにうちに、3人(俺、ピュア、ヒトミ)は泊まれない。

 ヒトミはマテオの薬屋で寝泊まりすることになっていた。


『朝食を作りに参りました……! って、食料が何もないでござる!?』


 ……ちょうど食料が尽きていたため、街へ買い出しに向かった次第。


「すみませぬ、アベル殿。買い物に付き合わせてしまい」

「……仕方ないだろ。他に案内できるやつがいないからな」


 本音を言うとマテオに丸投げしたい(街に行きたくない)気持ちが大きい。

 だがマテオには薬師としての仕事があるからな。


 ピュアに任せるわけにもいかないし、気が進まないが、俺が行くしかないのである。


 しばらく歩いて行くと、ミョーコゥの繁華街が見えてきた。

 と言っても、田舎町の繁華街だ。


 歩道は土丸出し、どこの家も木でできてる。

 マーケットがでるわけでもないし、商人や冒険者が激しく行き来してるわけでもない。


「結構人がおりますな!」

「……そうか?」

「こんなに人が居ては、アベル殿毎日買い物が大変でござろうな! なにせ魔人を倒した大魔導士として有名でござるから」


 ……こいつ、俺がこの街の有名人だと思ってるのか。


「有名人なんかじゃない。それと……おまえ、街では名前を出すな」

「? どうしてでござる?」


 声がデカいので、手招きし、耳元で言う。


「……アベル・キャスターであることは隠してるんだよ」

「ひゃぅう……♡ か、顔が近いですぅう……♡ か、顔がいい……素敵……♡」


 妙な声を出しやがって……

 俺はヒトミから離れていう。


「……とにかく、大魔導士アベル・キャスターであることは秘密だ。わかったな?」

「わ、わかったでござる……でも、あの有名な大魔導士殿でござるよ? 皆さん知ってるのでは?」


 何を馬鹿なことを……。


「こんな田舎町に、俺のこと知ってるやつはいない」


 マテオは王都に居たことがあるから例外な。


 さて。

 さっさと帰りたかったので、近くの八百屋に顔を出した。


「あんれまぁ……! 英雄さんじゃないかい!」

「………………………………は?」


 八百屋のオバさんが、俺の顔を見て、喜色満面となった。


「おおい! あんた! ちょっと来てごらん! 英雄さんが来たよぉ!」


 オバさんが店の奥へ引っ込んでいく。

 ……はて? とヒトミが首をかしげた。


「この街の人たちは、師匠の素性については、知らないのでは……?」

「そのはずなんだが……」

「ではどうして、英雄さんなんて呼ばれてるのでござるか?」


 ミョーコゥに来て半月ほどが経過している。

 その間、何度かこの店を利用したことがある。


 だが、そのときには、『英雄さん』などと呼ばれたことはない。

 オバさんをはじめ、街の連中は俺=大魔導士アベル・キャスターとは知らないはず……


「おおほんとだ! 英雄さん! いらっしゃい!」


 オバさんの連れらしき、オジさんが俺に笑顔をむけてくる。


「英雄さん、【こないだ】はありがとうねえ! なに、買い物かい? よしきた!」


 オバさん、オジさんが協力して、八百屋にあった野菜やら果物やらを、紙袋がパンパンになるまで詰めてくる。


 そして、袋を俺に突き出してきた。


「はいこれ! どうぞ!」

「……は? なんだこれは?」

「持ってっておくれよ! これは【こないだの】お礼さ!」


 ……意味がわからなかった。

 突然お礼とか言われても、なにがなにやらだ。


 俺が受け取らないでいると、オバさんはヒトミに紙袋を押しつける。


「ありがとうでござる!」

「おや、かわいらしい嬢ちゃんだね。あんたは?」


「拙者ヒトミと申す! 師匠の、弟子でござる!」

「まあまあそうかい! 英雄さんのお弟子さんかい! ならいつでも大歓迎さ! たんとサービスするよぉ!」


 ……なんで歓迎する?

 サービス? なんで……?


「英雄さんだって!?」

「ほんとだ!」

「街を救った英雄さんが来てくれたぞぉ!」


 オバさんの声がでかかったせいか、周りに居た街の連中が、どっ……と俺に押し寄せてきた。

 な、なんなんだ……?


「英雄さんおはよー!」

「こないだはありがとうね!」

「ありがとう英雄さん!」


 ……全員が笑顔だ。そして英雄と呼ぶ。

 もう、訳がわからんぞ……。


「あの! 拙者昨日来たばかりでござる! 師匠が英雄とは、どういうことでござろうか? 何故皆そんなに、師匠に感謝してるのでござる?」


 ヒトミが俺の心を代弁してくれた。

 八百屋のオバさんが代表して言う。


「そこの兄ちゃんは、ヒドラっていう化け物からこの街を守ってくれたのさ」


 ヒドラを討伐したことが、街の連中に知られてる……だと?

 馬鹿な。

 そのことを知ってるやつは限られているはず。


 ピュア、ヒトミ、そしてマテオ。

 全員にヒドラの件は、他言無用だとキツく言いつけておいたのだが。


 では、一体誰が、俺がヒドラを倒したことを、街の連中に言いふらしたのだ……?


「よぉ、ブラザー!」

「おまえは……昨日の……」


 一人の、猿顔の青年が近づいてきた。

 昨日、ヒトミを担いで俺の(というかマテオの)ところに来た男だ


「おれっちはモンバ。モンバ・シューエイ。この街の門番をやってる。よろしくなブラザー」


 モンバは馴れ馴れしく俺のクビの後に腕を回してくる。


「ってことでみんな! 彼がヒドラを倒した英雄さんだ!」


 な、なぜこいつがそのことを知ってる……?


「おれっちは見たのさ、神獣にまたがって、櫛形山のほうへ飛んでいく、ブラザーの姿を!」

 

 神獣……。

 まさか、ピュアのことか。


 しまった。

 成獣となった神聖輝光竜ピュアホワイト・ドラゴンは、デカいし光ってるしで、かなり目立つ見た目をしてる。


 誰かに見られてもおかしくはない……。


「神獣にまたがって櫛形山へ消えてったブラザー。そしてそのあとをおれっちは追いかけたのさ」


 ……モンバは興奮気味に言う。


「そしたら、山が木っ端みじんに消えちまった! と思ったらすぐに戻った! あとには夜空をかける、ブラザーを見た……!」


 ……そしてヒドラが綺麗さっぱり消えていることから、俺がやったと結論づけた訳か……。


「すげえ!」

「山を消し飛ばすだって!?」


「それを直すなんて、すごい! 神さまみたい!」

「ヒドラなんて化け物を一撃で倒しちまうなんて! すごすぎる!」


 ……まずい。 

 街の連中に、俺が大魔導士アベル・キャスターだとバレてしまう……。


「すげえだろぉ! まるで噂で聞く、魔神を倒した大魔導士さまみたいだぜ!」

「………………」


 ……あれ。

 これ、英雄おれ=大魔導士アベル・キャスターだと、街の連中……気づいてない?


 どういうことだ……。

 ふと、一つの可能性が浮かび上がった。


「おいモンバ」

「なんだいブラザー」

「俺の名前を言ってみろ」


 きょとんとしか顔で、モンバはこういった。


「【ベル】さん、だろ……?」


 ……ああ、やっぱりか。

 ベルさん。


 マテオが俺をそう呼んでいた。

 そこから……街の連中は、俺の名前がベルさんだと勘違いしてる訳か……。


「……ど、どういうことでござるか、師匠?」


 困惑顔で、ヒトミが尋ねてくる。


「……この街の人間は、全員田舎から出たことがないようなやつらばっかりだ。大魔導士の顔なんてみたことないだろ。名前は知っててもな」


 ……というか、マテオのおかげで、大魔導士=俺とバレずに済んだ訳か。

 ナイスアシストだ。


「街を救った英雄、ベルさん! おれっちたちはあんたを歓迎するぜえ!」


 ばしばし、とモンバが俺の肩を叩く。


「最初は、愛想の悪いおっさんが来たって思ってたけど、謝るよ! 見直した! 危険を顧みず街のためにヒドラを倒すなんて! あんたすげえいい人だな!」


 ……別に俺はいい人でもなんでもない。 

 ヒドラを倒したのだって、知人のためだ。

 街の連中がどうなろうが知ったこっちゃなかった。


「ほんとにありがとぉ!」

「英雄さんこれからよろしくねえ!」

「もっと買い物きてくれよぉ! 全品10割引にしちゃうからさぁ!」


 ……こうして俺は、期せずして、この街の英雄となってしまったのだった。

 もう誰とも関わらずひっそり生きていくのは……無理そうだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] モンバ・シューエイ 門番・守衛…
[一言] まあ、素性はどうあれ、魔物から助けてもらえたとなったらそら感謝感激雨あらあられだわなw そしてどちらにしろひっそり生きるとか不可能になったとw
[良い点] 可愛いおじ様勇者! これからの展開が楽しみです
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