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01.大魔導士、追放される

こちら(https://ncode.syosetu.com/n0797ip/)の連載版、スタートです!

「アベルのおっさん、悪いけど、おれのパーティから出ていってくんない?」


 村を襲っていた魔王軍残党を倒し、王都へと戻ってきたその日の夜。

 俺はパーティーメンバーである勇者ジャークに、呼び出されて、そう言われた。


 場所は王都にある、ジャークの部屋。

 目の前には赤い髪の、やんちゃそうな見た目の少年がいる。ジャーク・モンド。

 年齢は18歳。天から与えられた職業ジョブは、勇者。


「出ていってくれって、どういう意味だ……?」


「おれは勇者の職業ジョブを持つ、最強の冒険者。その仲間に、今のアベルのおっさんはふさわしくない。そう言ってんだよ」


 職業ジョブ

 この世界を作った天の神が、我々人間に与える、特別な力。


 剣士の職業ジョブを与えられると、訓練せずとも剣を自在に操れる。

 魔法使いの職業ジョブなら魔法を生まれて直ぐ使えるようになる。


 ジャーク・モンドの職業ジョブは勇者。

 勇者能力の最大の特徴は、世界最強の武器、聖剣を使えること。


 魔族、魔物などの魔なるものたちに対して特効を持ち、万物を切り裂く最強の武器。

 聖剣を高難易度ダンジョンで手に入れてから、ジャークは最強となった。


 人々、そして国はジャークという少年に、多大なる期待を寄せている。


「確かに、昔のあんたは凄かったよ。魔神を倒した最強冒険者、アベル・キャスターの名前を知らないやつがいないほどにな」

「……昔は、か」


 俺、アベル・キャスター。現在33歳。

 孤児として生まれる。生きるため、食っていくために冒険者となった。


 俺の職業ジョブは大賢者。

 その能力は、あらゆる魔法を、詠唱無しで行使出来るというもの。


 この力を使い、俺は様々な魔なるものたちを葬り去っていった。

 生きるため、食べるため。


 両親から捨てられ、スラムで育った俺は、他に頼れる人も、コネもなかった。

 だから大賢者の力を使い、魔物、魔族を倒し続けた。


 そして……今から10年前。

 いにしえの勇者によって討伐された、魔王の怨念が形をなした最悪の存在、【魔神】が出現。


 魔王が生きていた時と同等の被害が世界中に及ぶ。

 その魔神を討伐したのが……俺、アベル・キャスター。


 世界中から賞賛を受けた。

 やがて皆が俺を偉大なる魔法使い、【大魔導士】と呼ぶようになったのだ。


「昔のあんたと比べて……今はどうだ。33歳のくせに、髪の毛は老人みたいに真っ白。体にもガタがきて、まともに走ることもできない。それに、体内の魔力量も年々減ってきて、今はもうまともに魔法が使えないんだろ?」


 ……俺は現在33歳。

 だというのに、俺の体はボロボロになっていた。


 原因は、不明。

 魔神の呪いか……? と思って、【ジャーク】の紹介で高名な呪術師に診てもらった。


 だが、そのような呪いは受けていないとのことだった。

 治療師にも相談したが、体の衰えの原因はわからないという。


「おっさん……もうあんたの居場所は、最前線ここにはねえんだよ」

「…………」


 魔法の使えない大魔導士なんて、世間の誰も認めても、求めてはくれないだろう。

 でも……。


「俺は……ここにいたい」

「はぁ~~~~~~~~~~~~~………………。あのさぁ……おっさん。あんたの伝説はもう終わったんだ。過去の栄光にすがって、いつまでもみっともなく最前線で戦おうとすんなよ」

「…………」


 ジャークは、わかってくれてないのか……。

 俺がどうして、このパーティにいるのかって。


「アベルのおっさん。あんたには一応感謝してるよ。孤児上がりで、右も左もわからねえおれと【あいつ】に、戦いのイロハを教えてくれた。この聖剣も、あいつの【杖】も、あんたが居なきゃ手に入らなかった」


 ……そう、あれは10年前、魔神を倒したあと。

 俺は一組の少年少女を、拾ったのだ。ひとりは勇者の職業を持つジャーク。


 もう一人は、ジャークと並ぶ才能を持つ少女。

 ティア・セラージュ。聖女の職業ジョブを持つ少女だ。


 ジャーク、そしてティア。

 二人とで会ったのも10年前。彼らもまた、俺と同じスラム上がりの冒険者だった。


 彼らに、在りし日の自分を重ねた俺は、二人を育てることにした。

 ……二人が立派になるのを、見届けるのだと。……家族の居ない俺にとって、二人は……家族のような存在だった。


 だから、家族が独り立ちできるまで、側で支え続けようとしたのだ。

 体が衰えても。


「おっさんには感謝してるけどさ。いつまでも足をひっぱらないでほしいんだ。おれもそうだし、ティアのもさ。あんた……ティアに毎晩治癒魔法かけてもらってんだろ?」


 聖女であるティアの能力は、【超回復術】。

 あらゆるケガ病気をなおす、癒やしの光を使うことが出来る。


 俺の指導によってティアは自在にその能力を使えるようになった。

 苦しんでいる人たちのため……無償で治癒術を使ってあげる、優しい子だ。


「あんたもわかってんだろ? 毎晩あんたのとこにいって、あんたの体を治そうと力を使ってる。でも……それがティアに負担かけてんだよ」

「……っ」


 ……薄々、わかっていたことだ。

 ティアは、一日の活動が終わったその日の夜、疲れてるだろうに、俺に治癒を施してくれていた。


 日増しに体調が悪くなる、俺のために……。

 彼女は『これくらい平気です!』といってくれた。


 でも……やっぱりそれは強がりだったのだろう。


「あいつ愚痴ってたぜ? 『毎日辛い』ってよ」

「! ほんとか……?」

「ああ。ホントだよ。アベルのおっさんには恩義があるから、治癒してやってるけど、ホントはもうやりたくないってさ」

「…………」


 ……やっぱり、そうだったのか。

 なんてことだ。俺は……ティアに負担をかけていただなんて。


 ティアとジャークは姉弟のようなものだ。

 俺には言えない、秘密を、弟であるジャークに漏らしたんだろう。


「……けけ、バーカ。あっさり信じてやがる……」

「ジャーク?」


「ああ、なんでもねえ。とにかく、おれらにとってあんたは必要ない存在なんだよ。おれはあんたなしでも戦えるし、ティアを守ることもできる」


 ……そうだな。

 ジャークは確かに強くなった。


 ティアも凄い治癒の使い手となった。二人は、もう立派になった。俺の役目は……ここで終わりだ。


「でも、俺が抜けたら、あとはどうするんだ?」

「腕の立つエルフをもう既にスカウトしてある。あんたが抜けても大丈夫さ」


 なんて周到さ。

 ……これは、多分前々から決めていたのだろう。ジャークとティアの二人で……。


 かぞく、抜きで……。


「…………」


 ぽた……と涙がこぼれ落ちた。

 二人に拒絶されて、俺は悲しかった。


 孤児で、孤独を抱えた俺にとって、二人は家族だと思っていた。

 でも……それは俺の一方通行な思いだったのだろう。


 大魔導士となったあと、俺は家族ふたりのために頑張った。

 でもそれは無駄な頑張りだったようだ。

 ……なんだか、どっと疲れた。


「……わかったよ。俺は、パーティを抜ける」

「ん。そーしてくれ」


 ……俺は最後に、持っているものを、全部、ジャークたちに託すことにした。

 家族への、餞別だ。……まあ向こうは家族じゃないって思っていたようだが。


 高い装備品を魔法袋につめて、ジャークに渡す。

 そして、右手に収まってる【指輪】も……外そうとする。


「そんなきったねえ指輪なんて、要らねえよ」

「!」


 ……この指輪は、ジャークとティアが俺にくれたものだ。

 初めて二人だけで倒した魔物。


 それで得た金で、買ってくれた……思い出の指輪だ。

 少しでも金の足しになればと思っていれようとしたのだが……。


 それすら、要らないといわれてしまった。

 俺にとっては思い出の品なのに……。


「じゃあなアベルのおっさん。ティアにはおれから、出て行ったって言っておくからさ。別れのあいさつなんて要らねえよ」

「……でも」


「あーもう! 察しが悪いなぁ。ティアはあんたの顔も見たくないってよ!」

「…………」


 そんなに、ティアは俺のことを嫌っていたのか……。

 ……なんだか、さらに気持ちが落ち込んできた。


 俺はとぼとぼとその場をあとにする。

 街の出口でちら、と一度だけ背後を振り返った。


 ティアは、ジャークの肩によりかかっていた。

 ……ああ、なんだ。


「そういうことか……二人は、恋人同士だったんだな……」


 そんなことも知らなかっただなんて、なんて間抜けなんだ……俺は。

 こうして、かつて大魔導士と呼ばれた俺は、大事だと思っていた家族たちから拒絶され、パーティを追い出されたのだった。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 追放系あるあるの追放される側が悪いの典型的なパターンだな 入りすらしっくりこされられない作品に未来はない
[気になる点] 隠し事はあるみたいだけど追放の判断自体は妥当に見えるな。 思い出の指輪を売らせようとするのはどうなん? よほど高価なものなら分かるけど。
[一言] >「……けけ、バーカ。あっさり信じてやがる……」 短編版でもこのセリフだけで大体い察してしまえたという。 >「そんなきったねえ指輪なんて、要らねえよ」 だろうな。 >ティアは、ジャークの…
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