プロローグ
「......」
確かに違和感はあったのだ。
朝の日差しを感じながら目を開けると、見慣れない天井が見えた。
「.....?」
たまに誰かの家に泊まりに行って、朝起きた時におきる、「あれ、ここどこ?」という感覚。
それを感じながら上体を起きあげた。
「.....ん?」
あれ、ほんとにここはどこだ?
あまりに広すぎる部屋には、明らかに高価な家具。
貧乏人の私が見たら目が潰れる。
先程見た天井は天蓋付きベッドの天蓋と言われる部分のようだ。
結構高かったが。
これはおかしい。明らかに緊急事態だ。緊急事態である。
前の記憶が酒に酔っていたことしか思い出せない為、もしかしてもしかすると人様の家に上がり込んだ可能性が無きにしも非ず。
私は慌てて柔らかすぎて溺れそうになりながらベッドから降りる。
「ん、あれ。」
今頃気づいたが、やけに己の身長が低い。
しゃがんだ時くらいの目線の高さだ。
驚いて身体を見下ろす。
私は全く身に覚えのないパジャマを着せられていた。
多少色褪せてはいるものの、肌触りがとても良い。
さらに驚いたことに私の身体はしっかりと縮んでいた。
幼子の体だ。
「え、えぇ?」
これには学生時代のあだ名が鉄面だった私も困惑の声をあげる。
あれか?〇ナンの夢でも見ているのか?朝起きたら体が縮んでしまっていた!って?笑えんわ。
髪も長く、流れるように肩から滑り落ちた。
めっちゃ綺麗だけど、本当に私の体に何が起こっている?
気になって私はすぐ近くの姿見に飛びついた。
そこには。
烏の濡れ羽色をしたストレートな髪。
小さな顔に等身のあったまさに黄金比と言える綺麗な手足。
少し挑発的につり上がった目は赤い光を宿して。
私と同じように鏡に手を添えながらこちらを覗き込んでいた。
「はあ?!」
さすがに声をあげた。
__________
私の名前は赤井 遥と言う。
いや、と言われていた。の方が正しいか。
あの後いくら自分のほっぺをつねっても痛く、もう一度寝ても現実の世界へ帰れなかった。
これは恐らく、流行りの転移モノだろう。
と、自分の中で結論付けた。
しかし転移か。
こんな可愛らしい子に転生させて頂けたのはありがたいのだが、いや、私にとってはよろしくないのだ。
鏡を見て私は呟いた。
「どうせならもっとかっこいい顔が良かった....」
なぜなら私は、
中性キャラがド性癖だったから。
私はいわゆる二次オタと言われる人種で、常に推しを考えるような生活を送っていた。
そんな私が好きになるキャラは男性のような女性。女性のような男性。いやどちらだって子も。
どれだけ周りに白い目で見られても好きな物を貫き、芯が通っている彼ら彼女らを、私は心の底からかっこいいと思い、憧れていたのだ。
そして私も、真似してみたこともあった。
圧倒的に似合わなかった。
「.....」
これ以上思い出すと悲しくなるのでここまでにしよう。
改めて鏡の中の人物を見る。
私の中の勝手な解釈だと、
気が強くてわがままなツンデレお嬢様感。
中性なんて遠い。
「はああああぁぁぁ....」
俯いて、盛大なため息をついた。
まあね?ゆるふわ系じゃなかっただけましだろう。
美人だし。
将来有望。
私はもう一度見上げて至近距離から顔を見つめる。
赤い瞳。
ルビーのような赤ではなく、まるで血が凝り固まったような暗めで、妙に惹き付けられる目だった。
前の世界では赤い瞳は色素が薄い為に透けて見える血管の色だと言う。だからアルビノなどに多いと。
でも私は黒髪だし。そこはご都合なのだろう。
現実の理論に則していないということはやはり小説の世界なのだろうか。
しかし全く知らない小説に飛ばすか神よ。
こういうのは今後来る困難を知っていて、乗り越えるのが面白いのだろうが。
私は鏡を睨んで立ち上がった。
はてさて。
窓をちらっと見ると太陽が高い位置にある。
「.....お昼か?」
なぜ使用人が来ない?
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初投稿です。夏花と申します。
10分くらいで考えた設定で小説を書いています。いぇい。
計画性がありません。
この小説は、趣味で書いているので投稿頻度がまばらだと思われます。予めご了承ください。