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第14話 クーリングオフ

 "ブラックラバー"

 と言う、主に砂漠に生息する虫がいる。

 かつて、ラバーという伝説の剣士がいた。

 ラバーは一人でドラゴンをも蹴散らす力を持った屈強な戦士であった。

 そんなラバーが砂漠を旅していた時、チクリと何かに刺される。

 次の瞬間から、ラバーは体の自由が効かなくなった。

 そのまま身動きが取れずに時間だけが過ぎて行った。

 数日後、砂漠を渡っていた数名の商人がラバーを発見する。

 ラバーは身動きが取れないまま、砂漠の灼熱の太陽に焼かれ全身が炭のように焦げていた。

 よく見ると数百匹の黒い虫がラバーに群がっていた。

 虫たちはラバーに群がり食べていたのである。

 振り払おうとした商人の一人がその虫に刺されてしまう。

 その商人はラバーと同じように全身の自由を奪われ動けなくなった。

 周りにいた商人たちは確信した。

 "ラバーもこの虫に刺されたのだ"と・・・。

 焼け焦げたラバーと、覆い尽くすようにかぶさった黒い虫。

 その見た目の印象はあまりにも凄惨で残酷だった。

 以後、その虫は"ブラックラバー"と呼ばれるようになった。


 そんなブラックラバーの毒がニニには全然効かないのである。

 ムットマは空いた口が塞がらなかった。


「はぁ・・・、色々ドラキュラさまに言っていたけれど、結局、僕自身も久しぶりの外での戦いにワクワクしちゃってるんですよね」

 ブラックラバーの毒が塗られた矢をまともにくらったニニが、元気いっぱいに剣を素振りしながら言う。


「ありえん!!絶対にありえん!!」


「ごめんなさいね!!僕、仕事柄たくさんの毒に耐性をつけていなくてはいけなくてですね。日頃から訓練をしているんですよ。この痺れ方だとそうだな・・・、ブラックラバーの毒ですかね??」


 "こいつ効きポイズンしてるやん!!"

 ムットマは頭の中で突っ込んだ。


「その表情を見るに当たっているようですね!!ちなみに、その毒なら結構前に耐性をつけました!!だから僕には効きません。すみません」

 尚も剣を振り回しながら言う。

 

「ふっ、ふふっ、そうか。毒が効かないか。ま、まぁ、そんなこともあるだろう・・・。想定内だ!!」

 想定外であった。


「毒が効かないのなら真正面からダメージを与えれば良いだけのこと。毒への耐性があるのなら、直接、頭や心臓を射抜けば良いだけのこと・・・。そうだ、まだ俺が有利であることに変わりはないんだ!!」

 ムットマは息を吹き替えしてきた。


「落ち着け俺!!そもそも相手は剣だ。これだけの距離を保ってて、剣が矢に対抗出来るわけがない。そんな見え見えの結果も想像できないなんて、やっぱりヤツはお子ちゃまだ」


「何を一人でブツブツ言ってるんですか??もう限界来ているんで攻撃しちゃいますよ」


「ハハハハ!!生きがっていられるのも今のうちだけだ!!良いか親切に教えてやるよ。今のお前のように動かない相手が的なら、俺は百発百中当てる自信がある!!いいよ、そこまで言うなら見せてやるよ。大人を舐めるとどうなるか見せてやる」


 "ミラーアロー"


 バシュン!!バシュン!!バシュン!!

 ムットマはニニの頭、喉、心臓を目掛けて矢を射った。


「その矢は特殊な鏡で出来ていてなぁ、周りの景色を映すんだ!!要するに景色に溶け込むということだ。最早、認識不可能!!希少価値が高く、高額で取引されていて、3番隊副隊長の俺でも中々手の出せない代物だが、もしもの時を思って奮発しておいた代物だ!!いいよ、お前を倒すために使ってやるよ!!あの世で感謝しろ!!ハハハハ、もう後悔しても遅いからなぁぁぁぁ!!」


 ズガン!!ズガン!!ズガン!!

 ムットマの矢が当たった。


「ハハハハ、良い音がしたなぁ!!痛ぶれなかったのは残念だが、まぁ、勝っちまえば次につながる!!またどこかで良い格下を見つけて、憂さ晴らしでもするか」

 そう言いながらムットマは、少し遠くにいるニニの最後を確認しようと目を凝らしていた。


 シュウウウウウウウ・・・

 矢はしっかりと当たっていた。

 ニニの剣の刃に。

 ニニは剣を横にして面積を広くし矢を当てたのではない。

 矢を切るようにして当てたのである。

 しかし矢を切ってはいない。

 3本ともキレイに受け止めたのである。

 ムットマには、矢が剣に対して直角に吸い付いているように見えた。


「ば・・・、バカな・・・、何だそれは??」

 ムットマは今日何度目になるかわからない信じられない光景を見て語彙力を失っていた。


「また"何だそれは"ですか??見ての通り、矢を受け止めたんですよ!!」


「ふざけるな!!そんな芸当見たことも聞いたこともないぞ!!」


「それはあなたの経験の問題でしょ??僕に言われても困り・・・」


 バシュン!!バシュン!!バシュン!!

 荒唐無稽な現実に納得が行かないムットマは、ニニの話を最後まで聞かずにさらに矢を射った。


 ズガン!!ズガン!!ズガン!!

 またもや力強い音を立てて矢は止まった。

 ニニの剣に吸い付くように・・・。


「ありえない!!剣で矢を打ち払うならまだしも、受け止めるだと・・・??それにこれはただの矢ではない、周りの景色に溶け込んで相手をかく乱する特別な矢なんだぞ!!」


 バシュン!!バシュン!!バシュン!!

 バシュン!!バシュン!!バシュン!!

 ムットマは、まだまだ信じられず矢を行った田。

 そして、結局持っているミラーアローを全て打ち尽くしたのだった。


 ズガン!!ズガン!!ズガン!!

 ズガン!!ズガン!!ズガン!!

 それでも結果は変わらなかった。

 気がつくと、ニニの剣に12本の矢が縦に整列するように並んでいた。


「まぁ、特別な矢と言っても所詮は矢!!この程度のスピードなら、音を聞けばどんな軌道でこっちに飛んでくるのかわかりますよ」

 ニニは汗ひとつかかずに言い退けた。


「あわ・・・、あわわわわわわ・・・・」

 ムットマは自分が対峙している相手が次元の違う強さを持っていることに、やっと気付いた。

 そのまま全身が震えて動けなくなってしまった。


「あれ??もしかしてブラックラバーの毒でもくらったのですか??」

 ニニは動けなくなったムットマに意地悪を言った。


「あ・・・、あ・・・、ああああ・・・・」

 最早、戦意はなかった。


「この矢、とても貴重なヤツなんですよね??返しますよ!!」

 そう言ってニニは剣に吸い付いた12本のミラーアローを片手で握りしめた。


「エイっ!!」

 そして、そのまま矢をムットマ目掛けて投げたのである。


 バババババババババババシュン!!

 仁王立ちになったムットマの体の周りを12本の矢がかすめた。

 ムットマを通り過ぎた矢は、後ろの木にムットマのフォルムを型どるようにして突き刺さった。


 ヘナヘナヘナヘナ・・・・・ポスン。

 目で追えぬ程のスピードで自分をかすめて行った12本の矢に恐怖し、ムットマは気絶した。

 そして、そのまま膝から崩れた。

 ニニはムットマに勝利した。


「やれやれ急がないと、こうしている間にもドラキュラさまが勝手な行動をして、ポロ・アチチと出会って戦闘なんてことになってるかもしれない!!そうなっていたら大変だぞ・・・。急げ!!だって、僕だってポロ・アチチと戦いたいんだから。ドラキュラさまに先を越されるわけにはいきませんよ!!」

 ニニがドラキュラを心配していたのは、ドラキュラの安否を気遣っていたのではない。

 ドラキュラに美味しいところを持っていかれるのが嫌だったのである。


 ドヒュン!!!!

 ニニは兵士たちから逃げる時よりも速いスピードで、ドラキュラを探し始めた。

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